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第十六話 ダンゴムシ現る

 麓の森での訓練はひとまず終わりにしてギルドに行ってプレートを発行して貰おう、満場一致で決定したので撤収準備をしているとゴロゴロと何かが転がり込んできた。


「げっタンククローラー…!?なんでこんな所に!」


 タンククローラーとは全長4m程の巨大なダンゴムシである。レニーによれば本来ジメジメとした湿原を好み分布している種らしいのだが、どうやら何かに追われるように転がっているうち迷い込んできたらしい。


 そのまま転がって行ってくれれば良かったのだが、こちらを敵と認識、交戦状態になってしまった。


 レニーは直ぐさま俺に乗り込みナイフを抜いて構える。


『対象の装備、見当たりません。体当たりによる攻撃が主力と推測』


「名前からして射撃武器でも隠し持ってると思ったが、ではタンクとは……」


「ありがとうお姉ちゃん!図鑑で見ただけだから詳細は知らなかったんだ!とりゃあああ!!!」


 俺がアドバイスをする前にレニーは飛びかかっていく。


 飛び道具が無いのであれば打ち落とされることも無かろうとナイフを振り下ろす。


 ギィン


 しかし、タンククローラーの頑丈な装甲には急ごしらえのナイフでは歯が通らない。「タンク」という名前から推測していたが、やはりこの手の形状をもつメカは硬いんだな……。


 レニーは何度も何度もナイフを振り下ろすが、そのうち頭突きを喰らって吹っ飛ばされてしまう。


「キャアアアアアッ!」


『胸部装甲にダメージ レニー、昼食抜きです』


「そ、そんなあ~……」


 おいおい…戦闘中にそんな暢気な会話を……。


「ちくしょう!名誉挽回!とりゃああああ!!!ってええっ!?」


 タンククローラーは遭遇したときと同じ状態、丸まり形態になり不穏な音を立てている。


 ギュィイイイイイイイイイイイイイ… ドッシュッ!


 形勢逆転である。


 これがタンククローラーの主力攻撃「体当たり」無限軌道にも似た仕組みで自らを高速回転させ獲物に向かって転がっていく。その硬い装甲から繰り出される体当たりは馬鹿に出来ない。それは無残になぎ倒されている周囲の木々を見れば明らかである。


 通常であればこの手の相手には高火力装備に切り替え広範囲を纏めて攻撃するか、一点集中型の装備で弱点を貫くか、一度動きを止める攻撃をするか等々、なんにせよ装備を切り替え対処する必要がある、


 しかし、俺は装備品を全て失っているし、なによりどんな装備が有ったのか殆どデータが消失しているようだ。


 つまり装備に関しての記憶がないとうことだが、これはスミレにも同等のことが言え、二人がわずかに覚えているのはハンドガンと高振動ナイフくらいだった。


 ナイフこそ代替品でなんとかしているが、現状刃が立たない状態で手詰まりに近い。取りあえず撤退するしか無いのでは無いかと思っているのだが、レニーはそうはせず避けながら何か考えている。


「うーん、殻が抜けないなら内側を壊しちゃえばいいのでは?」


 レニーがさらっと頭がおかしい事を言いだす。クラッシュバレットを思い出し期待しつつも胃がキリキリと痛む感覚がした。


「何か思いついたのか?」


「こいつの体当たりさ、威力は凄いけど馬鹿正直に突っ込んでくるからカウンター当てやすいんじゃ?って思ったんだよね」


  確かにこの魔獣は小回りはきかないようで、ある程度軌道は読める。読めるのだが……。


「カイザー、腕吹っ飛んだらごめんね?」


「お、おいレニー??レニーさん???」


『……反動に備えます……はぁ……』


 回避を止め反転し停止、手を開き右腕を軽く正面に出し右足を前に出した。


 土埃を巻き上げながらタンククローラーが迫る。レニーは目を閉じ静かに呼吸を整えている。


 カっと目を見開き、レニーが吼える。

 

「今……ッ!この手に…ッ!思いを乗せてぇえええええ!!!! カイザァアアアアインパクトオオオオオオオオオ!!!」


 輝力炉から右足へそして右足から右手へ輝力が流れ、カイザーの全体重が乗った掌底がタンククローラーに炸裂する。


 こちらも後ろに押されたが、タンククローラーはもろにカウンターを喰らいひっくり返っている。


 通常であれば例えひっくり返されても即座に防御態勢である"丸まり状態”になって手がつけられなくなるのだが、カウンターダメージにより各部センサーがパニックを起こしているのか無防備に腹を見せてしまっている。


「ボディががら空きだぜ…?」


 マニュアル以外にも別の"聖典"でも伝わってるんじゃ無いのか?なんて不安にさせるセリフをレニーが呟くと、容赦なく跨がり、何度も何度も殴り始めた。


「装甲が硬くたってぇええええええ!!!ひっくり返しちゃえばああああ!!!!こっちのものよおおおお!!!!!」


「お、おいレニー!!レニーもうやめろ!!もう…そいつは…」


『対象のエネルギー反応消失、レニー……もう止めてあげて……』


 俺達に声をかけられようやく気づいたのか、気まずそうな顔で手を止めた。


「あ……あはは…やり過ぎちゃったかな……?だって…ねえ?ずっと追っかけられっぱなしだったし……」


 ……最後まで油断をしないというのは良いことだが、もう少し余裕を持てるように訓練が必要だな……。


 

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