表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/498

第百七十二話 いざ海上へ

 翌朝、いつもより早起きをした乙女軍団はいそいそと朝食や朝風呂を済ませ、布団を干したり、装備のチェックをしたりと普段以上に張り切っていた。


 海上移動、シグレは船で移動をしたり、ガア助で飛んだりと経験者だが他の3人は船自体乗ったことがなく、海上を移動して何処かにいくというのは初体験。


 故に興奮して早朝から目を覚まして用意を始めているというわけだ。


 海が持つ怖い一面を考え怯えるということをしないのは若さゆえなのか、性格なのか。

 何れにせよ、臆すること無く出発できるというのは何よりだな。


 用意が終わってから2時間。布団もそろそろいい頃だということでいよいよ出発の時が訪れた。


 各自コンソールを使いおうちや私物を回収し、普段より念入りに忘れ物チェックをしている。ここから暫くは後戻りが出来ないからな。いつも以上にしっかりとチェックしなければ。


 間もなく其れも終わり、各自が自分の機体に乗り込んでシャインカイザーに合体した。


 4人がコクピットに揃った所で改めて指令を出す。


「皆用意はいいな!これより我々ブレイブシャインはリーンバイルを目指し飛行する。

 予定では普段どおり30分おきに休憩を取ることにしているが、海上の大気は不安定。普段どおりにいくとは思わないように。

 不調を感じたら直ぐに言うこと!いいな!」


「「「「はい」」」」


「よし、では発進!」


 地から飛び立ち空に舞い上がり海を飛ぶ。安全のためある程度高度をとって飛行しているが、視界いっぱいに広がる海に乙女軍団は大喜びだ。


「ひゃー、改めて海ですねえ!」


「なんだそりゃレニー。海以外のなんでもないだろ」


「そうは言うけどさ、マシュー。右も左も前も下も海なんだよ?海じゃないのは後ろと上だけ。凄くない?」


「そう言われてみれば凄いような気がしてくるな……」


「でしょう?」


 二人の無邪気な会話を聞いてミシェルが優しげな笑みを浮かべている。

 しかし、そんなミシェルもいつもとは雰囲気が違う。どこかウキウキと気分が高まっているのがよく分かる。


「ほう、この辺りは船が沢山通るんだな。あれは漁船かな?」


 まださほど沖合に出ていない眼下には、多くの船が適当な感覚に散らばって浮いたり移動したりしている。


 この質問を聞き逃さず、待ってましたとばかりに鼻息荒目にミシェルが答えてくれた。


「ええ、我がルナーサが誇る漁船団ですわ。近海に棲む魚類は我が国にとって重要な資源。この辺りは海棲魔獣の姿が少ないのでああやって多くの船で賑わっていますのよ」


 なるほどねえ。この大陸では船を使った運送は盛んではないけれど、漁業のため多くの船が海に出ているんだな。


「カイザーさん、漁船の中に大きな船が何隻か混じっているのに気づきまして?」


「ああ、其れも気になっていたんだ。漁船とは装備が違うようだったがあれは?」


「あの船は護衛艦ですのよ。近海は比較的安全とは言え、海棲魔獣が出ることがありますの。そんな時に漁船を護るのがあの護衛艦。流石に機兵を乗せて戦わせる事は叶いませんが、船に搭載された大型火気や大鋏で魔獣を追い払うことができますの」


 ちょっと気になったのでホバリングしてもらい、護衛艦をスキャンしてみた。


 なるほどこれは面白い。


 船の前後に主砲と言える砲台が付いているのはわかる。しかし、面白いのはミシェルが「大鋏」と言った装備だ。


 船の左右に大きなアームが付いていて、その先がハサミになっている。言ってしまえば船から腕が生えているような具合だ。


 現在は折り畳まれているが、スキャンデータからシミュレーションしてみると本当に腕のように見えて面白い。


 ちなみにこの世界の船は2種類存在し、どういう仕組みかまではわからないが魔石で動く魔導船と、風を動力とする帆船だ。勿論、手こぎボートもあるが流石に大型船となると先の2種類だ。


 魔導船は歴史が浅いらしく、まだ多くの漁師は昔ながらの帆船を使っているらしい。しかし、財力がある商会所有の船や護衛艦などは既に魔導船になっていて、ルナーサの漁獲量の増大に一役買っているのだそうだ。


 その後、何度か休憩を挟み本日の休憩ポイントに到着した。

 といっても、ここは海の上でなにか目印があるわけではない。予め俺が決めておいた飛行距離を達成したので今日はもうおしまいというわけだ。


 無理をして輝力切れでも起こしたら面倒なことに繋がりかねないからな。


「では、着陸後野営の用意をする。各自備えろ」


「ちょ、ちょっとまってカイザーさん!ここ海の上だよ?着陸?今着陸って」


「そうだぞ!何も言わず『各自備えろ』って言われても困るぞ!」


 ふふふ、そうだろうそうだろう。ちょっと俺のいたずら心が出てしまっただけさ。


 慌てるレニー達を尻目にコントロールを俺に移しゆっくりと海面を目指し降下していく。


「周囲の天候問題ありません。気象シミュレーションの結果も良好、モードチェンジ承認します」


 スミレの言葉を聞いてさらにああだこうだ騒ぐ乙女軍団だが、敢えて無視をして変形を始めた。


「モードチェンジ!海上ベースモード!」


 俺の宣言とともに変形が始まる。俺達の身体は合体はそのままに円形に変わり、身体の縁からはフロートが現れる。


 コクピットはそのままブリッジとなり、周囲を見張る見張り台へと変わる。


「よし、もう外に出て大丈夫だぞ」


「……」


 あっけにとられて言葉が出ない乙女軍団。ふふふ……その顔が見たかったんだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ