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第百七十一話 出発前夜

 サウザンで一夜を明かし、半休を終えた我々ブレイブシャインはロップリングへ向かう街道を途中から東にずれ、空からスガータリワ北東部を目指した。


 この辺りの海岸線は高くなったり低くなったりしていて、長い砂浜が続くということがない。

 どちらかと言えば断崖絶壁が多く、昔テレビで見た島根県の摩天崖を思い出す。


 スガータリワを過ぎ、着地ポイント兼キャンプ地を探していたが、ちょうど良さそうな場所を発見した。

 

 洋画で妖しい取引をするような連中がヘリで降り立つような、そんな崖。

 ロボの身体でもそれなりに広く感じられ、背は低いが草木が茂る良い場所だ。


 着陸をし、分離後出発前最後の野営準備を始めた。


 それぞれが自分のおうちを出し、風呂の用意や食事の支度を始めている。

 夕焼けに染まる海が一望できる贅沢な宿だな。


「わー、見てみて!綺麗だよ!」

「だなあ……。海に沈む夕日というのを見たかったがこれはこれでいいな」

「トリバならザイーク近郊の海でみられそうですわね」

「いやしかしこれはこれで中々良いものですな。こうしてしみじみと見たことはありませんでしたが、皆で見ると良いものです」


 ……明日からは暫く海から上がる太陽も沈む太陽も嫌ってほど見れるわけだが、それを今言うのは無粋だな。


 場所が場所だけに風の心配もあったが、天に恵まれているようで穏やかなものだ。これならば安心して一夜を明かすことが出来るだろう。


 風呂を済ませ、焚き火を囲んでの夕食が始まる。

 今日のメニューはイーヘイでアホほど買い込んだ海鮮料理だ。


 食事を摂る乙女軍団を見渡し、声を掛ける。


「食べながらで良いので聞いてくれ」

 

 言われるままに食事の手を止めること無く顔だけこちらを向く一同。


「明日の朝、ここからリーンバイルを目指し出発する。以降リーンバイルまでの間周りにあるものは海、慣れない環境となるが協力しあって無事着けるよう頑張ろうな!」


 俺の宣言にそれぞれがそれぞれの言葉で返事をした。


「俺もこの世界では海の事情はまったくわからん。一番詳しそうなのはシグレかな?なにかあるか?」


 指名されたシグレは少し何かを考えていたが、ひとつずつ思い出すようにしてそれにこたえてくれた。


「まず、我々は今回飛行していくのでさほど問題があるとは思いませんが、島の周辺海域には複雑な海流があります。それ故船舶での接近が難しく、鎖国をしやすい状況になっているわけです。

 例えば、ルナーサから船で向かったとしても直接島に向かうといつまで経っても近づくことは出来ませんね。一度北上してから大きく島を迂回し、島の北東側から近づいていく形になります」


「なるほどな。恐らくは北東部が島に入る唯一のルートになっているのだろう。と言うことは帝国からいった場合は一度東に出てから大回りで島の北東部を目指す形になるのか」


「そうなりますね。そんな面倒がなければ6日もあれば着ける距離だと思うのですが。まあ今回は飛んでいけるので、そのへんの問題はあまり関係ありませんね」


「飛んでいくって言っても、途中海に降りるんだよな?どうするのかはわからんが、そん時その海流とやらの影響を受けるんじゃないか?」


「そうだな、一応対策は考えてあるが、もしかしたら多少流されることはあるかも知れない。ただ、沈むようなことはまず無いからそこは信用して欲しい」


「そうそう、一応海にも魔獣は出ますので注意をしていただければと」


「やはりいるのか、魔獣が」


「はい、大小様々な魔獣がそれなりに……。危険な魔獣は航路上には出ないので今回はさほど心配はいりませんがね」


 考えたくはなかったが、やはり海にも魔獣が居るわけだ。

 つまり……沈んでいる装備品がある、そういうことだよなあ……。


 この機体は一応潜れなくはないけれど、海に潜った後はメンテナンスが必要になる。

 俺達の身体は自動修復は出来るが、塩を落とすことは出来ないからな。錆びるわけではないが、少なからず動作に影響が出るため落とさなければいけないのだ。

 

 砂塵などであれば簡単に落ちるのだが、どうも塩は上手く落ちない。アニメの設定なのかわからんが迷惑な話だ。


 ああだこうだと話し合っていると、ミシェルが「あ!」と声を上げ、俺に何か言おうとして口をつぐむ。


「なんだ?何か気付いたことがあったら遠慮せず言ってくれ。そういう遠慮は今後トラブルの種になるからな」


「ですが……その……ええと……ああ!そうだわ、スミレさん、ちょっと……」


 俺ではなくスミレを指名して、ゴソゴソと話し合っている。

 

「ああ……それなら……、今使っているのをそのまま使えますよ」


「そうなんですの?水の上では穴を掘って設置というのが無理かなと……」


「まあ、本来あまり褒められたことではありませんが、広大な海ですし、そこは直に……」


「なるほど……割り切っていくしかありませんわね……でもアレが使えるのは僥倖ですわ」



 ……微妙に漏れてくる会話から推測するにトイレか……。

 まあ確かに俺は声からして男みたいなもんだから話しにくかったんだろうな。こういう時スミレという存在はありがたいな。


「ああ、ちなみに言っておくが、風呂も使うことは出来るからな。別に今日入り溜めする必要はないぞ、レニー」


 夕食前に入った風呂に再度入ろうと用意をしているレニーに念を押しておく。


「え?そうなんですか?良かったあ……」


 その後、暫く打ち合わせをして早めに寝ることにした。

 

 出発前は前でやることが色々ある。

 

 明日は起床したらそれぞれ布団を干してから洗濯をしたり、備品のチェックをする。

 其れが全て終わったら、予定としては起床から3時間後いよいよ出発だ。


 

「では諸君!今夜はゆっくりと休んでくれ」


 それぞれがおうちに潜り込んでいき、静寂が訪れる。


 俺の目でも流石にここからではリーンバイルがある島は補足できない。

 古地図を見ると目視できそうな距離に見えたが、実際はそこそこ距離があるのだろうな。

 

 全速力で飛行できれば恐らく数時間で着くのではないかと推測しているが、其れを可能とするのは最終話付近の竜也達レベルまで輝力が高まらないと無理な話だ。


 今の時点では最高速度を出せるのは5分が限界だろう。その後は皆揃って長いクールタイムに突入だ。

 なので最高速度はおろか、その半分も期待することは出来ない。


 現在の飛行速度は頑張って平均時速100kmが良いところだ。しかも30分毎にホバリングして1時間の休憩が必要になる。

 ポンコツもいいところだが仕方がない。それでも地上を移動するよりはよっぽど速く移動できるしな。


 ここから探る限り、海上はどうも気流も生易しいものでは無さそうなので飛行で消耗する輝力はいつもより倍増しそうだ。

 

 1日150km程度進めれば上出来と言ったところか。


 海流とやらのせいで船の移動距離がわからないのが痛いな。

 それがわかれば大体の距離を割り出せるのだが。


 ともあれ、流石に1000km以上は無いと思いたい。大体フォレムからルナーサくらいと楽観的に推測すれば4~5日で到着出来るはずだ。それだけ過ごす以上の用意は出来ているし、後は彼女達のちからを信頼することにしようじゃないか。



 距離的な辻褄でちょっと悩んでしまいました。

 多少のガバさには目を瞑っていただければ幸いです

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