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第百七十話 サウザン再び

 ゲンベーラで一夜を明かし、再び移動を開始する。

 昨夜は続きを見せろとうるさかったが、狩場だと言うことを理由に我慢して貰った。

 

 不用意な光源は魔獣を呼び寄せることになるし、それによって他のハンターに迷惑をかけないとも言い切れないからな。


 今回はあまり高く上がらず、森の上を泳ぐように飛行した。

 そのうち戦いで飛行を使わないとも限らないのでその訓練を兼ねている。


 木々は高さがまばらなため、森スレスレを飛んでいると高めの木に当たりそうになる。

 それを躱しながら飛んで貰っているわけだが、それなりに良い調子に飛べている。


 最も、まだ戦闘に使えるレベルでは無いのでこれからも訓練は必要だな。


「カイザー、そろそろ着陸ポイントです。周囲に機影及び人間の反応はありません」


「よし、では着陸後分離。徒歩でサウザンを目指すぞ」


 ◆◇◆


 徒歩での移動はやはり時間がかかるな。

 サウザンに到着したのは夕方、閉門まで一時間という所だった。

 

 屋台は既にまばらになっていて満足に買い物が出来そうに無かったため、明日の午前までを自由時間として休憩と補給に充て、移動は午後からと言う事にした。


 ミシェルお勧めの宿にチェックインをして乙女軍団の自由時間が始まる。


「ほらほら!レニー急げ!あっちの屋台まだやってるぞ!」


「ちょっと待って、靴が、靴があ!」


「シグレ!先に行って焼まんじゅうを4人分買っといてくれ!」


「心得た!」


「ミシェルはあっちの串焼きを頼む!」


「宿の夕食が入らなくなりますわよ」


「それは別腹だ!4人前頼む!お前が無理ならあたいが食う!」


 インカムを通して乙女軍団の声が届く。食欲がなせる技なのかも知れないが、マシューは案外リーダー向けなのかも知れないな。


 ジンがトレジャーハンターの頭領を押しつけた理由が分ったような気がする。


 暫くわいわいと買い物に走っていたが、今日食べる分は買えたのか何処かに落ち着いて食べ始めたようだ。


「あ、この場所って……」


「ああ、前にシグレとまんじゅう食ったとこだな」


 会話がふと気になってしまい、自作のマップで位置を確認するとどうやらマシュー達は広場に居るようだ。

 そう言えばシグレと始めて会ったのはこの街だったな。


「あの時は色々とご迷惑をおかけしました」


「それは言わない約束だよ、シグレちゃん」

「結果的にこうして知り合えたんだから良かったんじゃないか?」

「経緯はどうであれ、貴方との出会いはかけがえのないものですのよ」


「うう……みんなありがとう。大陸に来て良かったと今なら思います」


「ほらほら、泣いてないで食べた食べた!夕食に間に合わなくなるぞ!」


「そもそもこんな馬鹿みたいに買ったら夕食なんて入りませんわ!」


「あたいは平気だけどな……まあ、ほら!夕食が心配になったらアレにしまってさ、後でおやつにすればいいじゃん!」


「海を渡るんだもんね、おやつはいくつあっても……そう言えばシグレちゃんはどれくらいかけてここまで来たの?」


「私ですか?船も使って、しかも降り立ったのは帝国でしたので少々事情は変わりますが、大体12日くらいでしょうか……」


「12日……、いくら飛べば速いとは言え最悪その半分以上はかかると思った方が良いよな」


「そうですね、船はあまり速く無いとは言え何が起こるか分りませんし、余裕を見ておけば良いかと」


「じゃあ、明日はたっぷりと買わないとね……」


「食料は十分あるけれど、おやつは不十分です。私に任せて下さいの!」


「頼りにしてるぜミシェル!」



 ……俺の見立てでは5日と見ている。あの張り切り様だと倍以上は仕入れかねないぞ……。

 財務担当のミシェルがまだ平気そうな顔をしてるから信じているが、後で聞いてヤバそうだったらストックしている魔獣をギルドに卸さないといけないな。


 本格的に不味くなってもヒッグ・ギッガやバステリオンの素材をちょっと売れば賄えるが、リックの悲しげな顔がチラついて売る気になれないんだよな。


 今後も暇な時に狩りはしていくことにしよう。



 翌日、朝から元気な乙女軍団は朝食を摂るとさっさとチェックアウトをして街へ繰り出していく。

 俺達ロボ軍団は広場に併設された機兵置き場に置かれお留守番だ。


 イーヘイみたいな街作りが各所で行われれば俺達も買い物を楽しめるんだがなあ。

 というか、スミレさんが早く義体を作ってくれさえすれば……。


 この様な待ち時間の間、ロボ軍団の皆はそれぞれ好き勝手過ごしている。

 と言っても、動き回れるわけではないので、その場でできることに限るわけだが、例えばオルトロス達は子供らしいAIがそうさせるのか、二人で仲睦まじくしりとりやナゾナゾを出し合って暇をつぶしている。

 ウロボロス達はどうかと言えば、視界に入る人間達を観察し、市場調査をしているようだ。街を歩く人間の年齢や性別、身なりなどを細かくデータに取り、商売に役立つ情報を集めている。

 それなりの期間、例の腕輪となって商人となったルストニアと共に過ごしていたのだからもう癖というか、趣味になっているのだろうな。


 そしてガア助はといえば、シミュレーターを展開し、戦闘訓練をしているらしい。

元々、シグレ達も修行の一環で瞑想をしながら脳内で戦闘シミュレーションをしていたらしいのだが、ガア助もそれに習って訓練をしていたそうだ。

 当時は自分がロボだと知らなかったため、シグレ達も自分同様シミュレーターが展開されているとばかり思っていたそうだが、先日それを聞いたシグレから「そんな便利な術があったら教えてほしい」と言われ困っていた。

 

 流石に人間では単体でそれをやるのは無理というものだ。


 でも、シミュレーターというのは悪くはないな。後で出来ないかスミレに聞いてみるとしよう。


 ……奴は今日も元気にレニーの肩に乗って買い食いツアーに同行してるからな……くそっ!

 

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