第百五十九話 いざイーヘイへ!
翌日、俺達は決意を新たにイーヘイを目指し洞窟から出発した。
まだ酒が残っているのか、怠そうな団員達が律儀に並び俺達の出発を激励してくれた。
「マシュー!カイザー達に迷惑かけんじゃねえぞ!」
「うるさいな!んなことしねーよ!」
「がっはっは、食料事情を悪化させてるくせによ」
「てめえ!ジャック、覚えてろ!土産は無しだ!」
「まあ、みんなよ、怪我しねえで行ってきなよ。わたしらここで待ってるからさ」
「次来るまで立派にしておくからな!調査と修復が済むまで帰って来んなよ!」
「がっはっは、まあそういうわけだ、気をつけて行ってきな!」
最後にジンが前に出て一言「頼む」と言って頭を下げた。
俺はそれに力強く頷き、皆に指示を飛ばす。
「ここからイーヘイ付近までは合体して飛んでいく。
訓練はしているが、今日が初めての本番飛行となる!気を引き締めていくぞ!」
「「「「おー!」」」」
それぞれ自分の機体に乗り込み団員達に手を振った。
俺はそれを見届けると、全機に声をかける。
「よし!ではいくぞ!フォーメーション!シャインカイザー!」
俺の声と共に各機が間隔を開け合体に備える。
『いきますよ!モードシャインカイザー承認!』
「「「シャインンン……カイザアア!」」」
変形した僚機達が俺のもとに集う。
オルトロスが腕となりウロボロスが脚となりヤタガラスが羽となる。
その様子を見ていた団員たちから歓声が上がる。
「うおおおお!何度見てもいいなあそれ!」
「頭領、俺達もあれ作りましょうぜ!」
「そうだなあ!頑張ってみるか!って出来るかバカタレ!」
「「「がっはっはっは」」」
合体した身体からその様子を眺めたパイロットたちの緊張がほぐれていくのがわかる。
改めて団員たちに手を振ると俺達は空へ舞い上がった。
「では、改めてこれからの予定を伝える。目的地は言わずもがなイーヘイだが、飛行形態は非常に目立つ。
なので姿を消した状態で飛行していく事となるが、地上に降り立つと透明化は解除されてしまう。
シグレはガア助に乗っていたからその事については理解しているな?」
「はい、いくら訓練をしようとも、ガア助の術は地上に降りると解除されていました。
なるほど、元々そういう術だったのですな」
「術……か、うん。まあそういうことだな。で、だ。イーヘイ付近は人通りも多く、突然俺達が姿を現せば騒ぎが起きることだろう。
なので、イーヘイよりやや離れた位置の街道付近に着陸し、そこからは分離してイーヘイ入しようと思う」
「街道付近……ということは、直に街道にはおりないのですわね?」
「ああ、念のためにな。周囲の様子を見て人気がない所で降りようと思うが、街道から外れた所で休憩をとっていた体で現れようと思う」
「飛行後はシグレちゃんがつかれるだろうし、実際休憩を取ってからいくのもいいですね」
「そうだな。よし、では進路をイーヘイに!シャインカイザー発進!」
「「「発進!!」」」
空を飛ぶ俺達には地上の地形など関係のない話だ。
遠慮なく最短距離で移動させてもらう。
陸路であれば一度フォレムか西の街「ザイーク」まで行かなければイーヘイに行くことは出来ないが、空路であれば大幅にショートカットが可能だ。
仮にフォレム経由で向かった場合は1週間かかる。ザイーク経由の場合はそれよりもう少しかかるのではないかとマシューが言っていた。
アズベルトさんからきいたイーヘイまでのざっくりとした所要時間から計算すると空路でまっすぐ向かった場合、本気で行けば1日かからず着きそうだった。
しかし、これはアニメ作中のパイロットたちが無茶苦茶な輝力と体力を持っているから可能となる飛行時間だ。
レニー達もそれなりに力はつけているが真似をして本気の速度で移動した場合途中で気を失ってしまうことだろう。
自立機動すればなんとかなりそうな気もするが、アニメ準拠の高出力となればパイロットたちから輝力を吸い上げる必要があるため、結局無理な話なのである。
今のレニー達の輝力で計算すれば、途中で降りて一晩休み、再度飛び立ってイーヘイ付近の街道へ。
一晩野営した後イーヘイに到着、計3泊4日の工程となるだろう。
それでも地上を移動するより圧倒的に速いし、仮に直接イーヘイまで飛行した場合は2日で着けてしまう。
今後の旅のことを考えると飛行能力を得たことはとても大きい。
飛行中、所謂全天周囲モニタに切り替えてみた。
ちょっとしたいたずら心だったが、パイロットたちから悲鳴が上がることはなく、寧ろ好評だった。
「おおおおお!鳥になった気分が増しますね!」
「ガア助に乗ってる時を思い出しますよ」
「この状態で大陸をぐるりと回れば精密な地図が作れそうですわ」
「未発見の遺物や遺跡を見つけられそうだなこれ!後で探そうぜ!」
もう少し悲鳴か何か上がるかと思ったから少しさみしいな……。
「ふふ、カイザー。貴方達のパイロットになるような子たちですよ。
この程度なんとも思わないのは当たり前です」
がっかりしてるのはバレバレだったか。
高所恐怖症克服イベントとか見てるほうが辛いからまあ良いんだけどさ……。
そして数時間の空の旅を楽しんだ後、少し早めに荒野に降り立った。
「では野営の用意をするぞ。各機分離後「おうち」を出して夜に備えるように」
「「「はーい」」」
「おうち……ああ!あの良くわからないアレは出せるのですか!」
そう言えばバタバタしてその辺の説明をしてなかったな。
どうやら俺達を監視していた時にちらりと存在を見ていたようだが、謎の小屋だとばかり思っていたようだ。
レニー達が俺に代わって説明をし、予備の布団などを貸してあげている。
うむうむ、助け合うパイロットたち良きことかな。
こうしてイーヘイへの旅、最初の野営が始まった。




