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第百四十九話 戦いの果に

「……!黒騎士、来ます!構えて!」


「なんですって?まだ動けるというの?」

「畜生、化物かよ!」


 スミレの声に各パイロットが驚きの声を上げる。

 

 あれだけの剣を受け、変わらぬ速度で向かってくるのだ。


「リボルバー!」

 

 レニーがソードからリボルバーに武器を変え黒騎士を狙う。

 

 「止まってえええええええええ!!」


 ガァン、ガァンとリボルバーの音が鳴り響く。

 打ち切ればリロードをしてまた撃って。

 敵も流石に万全ではない、ならば今なら当たるのではないか?


 そう祈るように思ったがそれは叶わない。


 あのなりでも変わらぬ反応速度で全て弾かれ当たらない。


「レニー、奴に銃は無駄だ!ブレードのがマシだぞ!」


 マシューが叫ぶ。


「うーわかった!」


 再度ブレードに持ち替え構えると奴の連撃が始まる。


 思わず盾を構えるが、まるで怒気が篭っているかのような一撃は先程よりも重い。

 よほど奇策めいた方法で攻撃を当てたのが気に召さなかったらしい。


 このまま耐え、再び先程の作戦を使うか?いやだめだ見切られてしまうだろう。

 シールドが破壊されることはまず無い。ならばこのまま時間を稼いで……


 ……破壊されることこそ無かった。

 しかし、驚くべきことにシールドがジョイントから外れ吹き飛ばされてしまう。


「なんのおお!!!まだまだあああ!!!」


 咄嗟にレニーがブレードで斬りかかる。

 それは黒騎士のソードを捕らえ絡み合う。


 剣と剣が擦れギャリギャリとした音が鳴り響く。

 力負けはして居ない、しかし……鍔迫り合いの経験がないであろうレニーにこの状況は……


「きゃっ!」


 唐突にブレードにかかっていたテンションが開放されバランスを崩す。

 黒騎士が重心を変えバランスを崩れさせたのだ。


 狙っていたその一瞬を見逃す黒騎士ではない。

 目前に晒すこととなった背中にソードが叩き込まれる。


 鈍い音と共に俺の身体は地に沈み、息をつく間もなく再度横から衝撃を受け転がされる。


 っぐ!脚部パーツに追加の一撃か!

 

 そのまま奴は俺から距離を取ると背中から新たな武器を取り出している。

 あれだけシールドを切りつけていたのだ、あのソードはかなり傷んでいることだろうよ。


 ……警戒して距離を取ったのか?わからんが……ありがたい。

 少し考える余裕ができたな……。


 束の間の作戦タイムといこうじゃないか。


「みんな、大丈夫か!」


「ああ…なんとか…」

「いてて……ごめんみんな……あたしが油断したから……」

「そんな話はまだですわ。まだ、終わってないのですから」


 パイロットたちはなんとか無事のようだ。

 さて、「俺達」の状態はどうだろう……。

 先程追加で貰った一撃、アレはとても良くない筈だ。


「スミレ、損傷状態を報告してくれ!」


「……左脚部、ウロボロスに重大な損傷を確認……修復可能ですが今は時間が……」


「っく、立つことすら難しいか……」


 カメラがこちらにゆっくりと向かう黒騎士を捉える。

 万策尽きた……、コクピットにそんな空気が漂い始める。


「最後まで……諦めちゃ……だめなんだあああああ!!」


 レニーが咆哮を上げ、ブレードを杖にして立ち上がる。


「そうですわね!諦めない限り……勝機はあるんですの!」


 盾は遠くに吹き飛ばされ護るものはない。


「最後まで諦めない、それだけだ!」


 それでもただやられる訳にはいかない。


 俺達は最後の力を振り絞り、剣を構える。


「来るぞ!」


「うおおおおおおお!!!カイザアアアアブレエエエエエ……」


 ガシュウ……


 剣を上段に構えた瞬間、脚元から嫌な音が響く。


 それはウロボロスとの合体が強制解除された音だった。


 損傷により合体の維持が難しくなった場合、強制解除されることがある。

 アニメ特有の演出だが……くそ!何もこんな時に!


「きゃああああああ!!」


 突如脚部が通常状態に戻され、大きくバランスを崩し前のめりになる。

 ウロボロスはそのまま遠くに射出されロボに戻って横たわっている。

 脚部状態で受けたダメージはそのまま返る。

 

 ……動くことは出来ないだろう。


 目前では黒騎士が新たなソードを構え上段に構えている。

 膝立ちになった俺に避ける時間は無かった。


 ギィイン


 何かで視界が遮られ剣が当たる音が聞こえた。

 同時に大きな衝撃を受け俺の身体は再度倒される。


 が……様子がおかしい。

 音と衝撃はあった、だが衝撃は斬撃によるものではなく、何か重い物が当たったような感覚。

 そして視界を遮るこれは……?


「カイザー……これは……鳥の魔獣、シグレの魔獣です……」


「シグレちゃん?」


 魔獣が俺から離れ、くちばしで立ち上がらせてくれた。


 クリアになった視界に映ったのは俺をかばって剣を受けた魔獣の姿。

 そしてやや離れた所にはシグレが立ってこちらを見ていた。


 魔獣は致命傷を受けたのか、俺から離れるとそのまま力なく地に横たわった。

 

 くそ……!勝てないばかりか余計な犠牲まで……!俺は……!くそ!くそ!くそ!


「こうなったら……パイロットたちを緊急脱出させて俺が奴と刺し違えても……!」


「カイザーさん!」

「馬鹿やろう!何て事を言う!」

「っく……そうですわカイザーさん…私達は仲間ですよ……」


「だが!他にお前達を護る方法は!」


「待って下さいカイザー!敵機の様子が……?

 撤退していきます……間違いありません、敵機撤退です」


「なんだって……?見逃してくれた……?そんな訳はないか……」


「理由はわかりませんが、ライフルを回収し撤退するようです……」

「そうか、ライフルは取られたか……」


「んなもん後で取り返しにいきゃいいんだよ」

「そうですわ!生きていればまた強くなれるのですから!」


「そ、そうだ!シグレちゃんが……!」


 シグレは魔獣の所に駆け寄り、愛しげに撫でながら泣いていた。


「ガア助……すまぬ……無茶をさせたな……すまぬ……」


 コクピットから降りたレニー達が駆け寄りシグレに声をかける。


「この子……ガア助っていうんだ……ありがとう、おかげで助かったよ」

「でもひどい傷……なんとか出来ませんの?」

「あたい達のせいでこんなの……あんまりだよ」


(なんとかしてやりたいが……)


「いや……これは返しきれない恩と詫びだとガア助がいってますので……」


「ガア助の言葉がわかるの……?」

「いえ……その……ガア助は……」


『シグレ……己の命はもう長くはなさそうにござる……。

 最後に己の口から皆に詫びと挨拶を……』


「そっか、そうだな。皆、驚かないでくれて感謝します。

 ガア助は……魔獣ながら人語を解して……」


「ちょっとまて、ガア助お前まさか……」


『おお……お主はカイザー殿……己同様喋れるのですなレニー殿の銃撃は見事……』


「おい、スミレ!」

「はい!カイザー!間違いありません!」


「カイザー殿?しゃべっ……いや、ガア助に一体何を!?」


「シグレ、ガア助は助かるぞ!」


「へあ?い、一体どうやって?

 で、でも助かるなら……!なんでもします!お願いしますガア助を!」


「話は後だ!スミレ!頼んだぞ!」

「はい!カイザー!」


 俺から伸びるケーブルがガア助の背中にあったコネクタに接続された。

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