第十三話 私兵団vs魔獣 1
周辺に生息する魔獣だけでは目当てのパーツが手に入らない、そんな話をしていたらレニーが冒険者ギルドで話を聞いてみようと提案してきた。
ハンターズギルドの話は前にちらっと聞いたが、その成り立ちや仕組みなどはまだ知らない。なので詳細を聞いてから判断してみてはいかがでしょうとスミレも言うので、改めて聞いてみることした。
「ハンターズギルドのお話ですか?いいんですか?そんなこと言って!張り切っちゃいますよー!私に語らせると後悔しますよー!では、むかしむかし…ほんのむかしのお話です……」
◇◆◇
ハンターズギルドとはかつて魔獣討伐をしていた私兵団が元になっています。
ある日狩人に目撃された魔獣はやがて人の脅威であると判断されました。腕が立つ狩人が「我こそは」と、何人か討伐に向かいましたが、生きて帰るも者は少なく、また無事に戻った者もただでは済まなかったのです……。
このままではだめだ!ジリ貧だ!そう思った狩人達は話し合い、バラバラだった狩人達をまとめ上げ私兵団を設立。一人では敵わなくとも複数人ではどうだと、パーティーを組んで狩るようになったのです。
私兵団として行った訓練が実を結んだ効果もあり、結果は上々でした。最初こそ多少の苦戦はありましたが、殆どが無事に戻り、狩った獲物を持ち帰ることも増えたのです。
この頃にはまだ、物珍しい金属パーツということで、日用品や武器の素材として使われていたみたいですね。
それから数年が経った頃です。ちょいちょいおかしな個体が目撃され始めました。
それは従来の個体よりも身体が大きく、パーティの人数を倍に増やしてようやく対等という恐ろしい存在でした。
それでも、まだ私兵団の心は折れませんでした。勝てないなら俺達が強くなればいい!ひたすら訓練と狩りを続け、また獲物から作った武器により作られた新型の弓、機械弓や機械刀により更に優位に立てるようになりました。
さらにその頃には魔獣の研究も進み、弱点部位の特定や行動パターンが判明し、また以前のようにあまり犠牲者を出さず狩れるようになったのです。
意気揚々と凱旋する私兵団の勇姿は憧れの的で、志願者は増大。私兵団の黄金期と呼ばれています。
しかし、そんな日は当然長くは続きません。
ある日一つのパーティーが戻りませんでした。深追いしてるのだろうか?怪我をした仲間の治療をしてるのだろうか?様子を見ようと決めましたが、それから1日が経ち、2日が経ち、3日が過ぎても戻りません。
異常事態が起きているかもしれない。
そこでようやく捜索隊が結成されました。
5パーティ、60人で結成された捜索隊はやがて複数の亡骸を発見することになります。その亡骸の異常さをきちんと理解していれば、なぜこうなったのかを考える暇があればよかったのですが、そこは既に奴らの縄張り、気づけば魔獣達に取り囲まれていました。
従来大型とされていた新型が5体。そしてそれを従えるかのように岩の上に座る3mはある大型の個体。
その個体には今まで見たことがないパーツが付いていたのです。
1匹の魔獣が動いたことにより戦いは始まりました。
その戦いは苛烈を極めましたが、数では圧倒的に勝っています。
ボスなのであろう新型は岩に座り退屈そうに眺めているだけでしたので、多少の犠牲を払いつつも、なんとか取り巻きを撃破、残すは大型個体のみとなりました。
ここで一次退却をして対策を練れば良かったのかもしれませんが、数としてはまだこちらの方が多かったわけで、どうせデカいだけで他の魔獣と変わらないだろう、そう判断した私兵団は大型を取り囲んでしまいます。
その油断が命取りでした。
のそりと岩から飛び降りた新型は飛びかかるでもなく、うろうろと左右に歩きながらなめるように私兵団たちを眺めていたそうです。
やがて「突撃!」の声とともに駆け寄った私兵団たちでしたが、その刃は、矢は新型に届くことなく炎に包まれていました。
あたりを焼き尽くす強烈な炎。見る間に私兵団たちは焼かれていきます。
いわゆるブレス攻撃ってやつですね。
それまでの魔獣はみな、姿こそ違えど、攻撃方法は動物と似たようなものでした。飛びかかるーとか、パンチーとか、噛みつきーとか。それがブレス攻撃をしてきたのです。
予想外の攻撃に為す術もなくどんどん蹂躙されていきます。
遠くから援護射撃をしていた若者は賢かった。数を減らす仲間たちに謝りながら一人退却。
本部へ戻った若者が報告をすると驚きの声に包まれました。
恐れおののいて逃げた者の言い訳ではないのか!そういう声もありましたが、
後日送られた調査隊が発見した亡骸によりそれは真実と判明、私兵団の心はポッキリ折れてしまいました。
幸いなことに、ブレストウルフと名付けられたそれは縄張りから出ることは無かったので、狩りの範囲から外すことにより狩りは継続できましたが、あの惨状を思い出すと再戦することは考えたくありませんでした。
しかし、ある時その状況を打破する出来事がありました。




