第百四十二話 つかの間のフォレム
翌日、村人達に再会を約束して別れ、俺達はフォレムへと発った。
今回はロボモードで淡々と進んでいるため商人に掴まることも無く、日暮れ前には余裕でフォレム入りする事が出来た。
既に我が家同様であるリックの工房に到着すると、珍しくアルバートの姿もそこにあった。
「お、カイザー達じゃねえか!もう帰ってきたのか?」
ニコニコと手を上げるリックに久しぶりだな、と声をかけようとして思い出す。
おっちゃんことアルバートには俺達の秘密を話していなかったのでは無いか。
レニーに確認を取ると、(ああ~~!忘れてたあ!)という顔をして居る。
どうしたもんかと思っていると、アルバートがこちらにやってきて声をかける。
「よお、レニー!無事で何よりだ!そしてカイザーつったか、噂は聞いたぞ!」
む?噂?一体何を言ってるんだ。
「あれ?おーい、カイザー!喋るんだろ?商人が言ってたぞ!パインウィードで見たって!」
「なんだよ、カイザー、アルに教えてなかったのか?」
やれやれ、これではもう内緒にして居る意味も無いか。
まあ、レニーの大切な人だし、内緒のままってのもアレだしな。
「うむ、その……なんだタイミングというかなんというかな……。
改めて……俺はカイザーだ。よろしくなアルバート!」
「お、おお、おう!な、なんだ……その。実際見るとび、びびるなこりゃ」
「だからおめえはいつまで経ってもジャンク屋なんだよ!」
「う、うるせえ!リックだってびびったんだろが!」
「さてな」
『私達はオルトロス-』
『よろしくね~』
『この姿では初めましてだねリック』
『ミシェルの"機兵"、ウロボロスよ』
「おお、見慣れねえのが増えてると思ったがまた喋るのが増えたのか!」
「か、カイザーだけじゃねえのかよ!なんだよおめえら……すげえな……」
「私もこの姿では初めましてですね、リック。
アルバートも色々とお世話になっています、スミレです」
「う、うお、うおお!す、スミレェ?」
「なな、なんだこいつは?よ、よよ妖精か?」
スミレの姿を見た時が一番びびるってどうなんだ。
ジャンク屋とメカニックだから機兵には理解が及ぶが妖精っぽい何かには理解が追いつかないって事か。
「スミレはこう見えてちっさい機兵みたいなもんだよ。
妖精なんて不思議な存在じゃないよ、安心してくれ」
「それはそれで恐ろしいわ!」
「全くだ!一体どうやったらそんな小さくて緻密な機兵作れんだよ!」
「これは私が自分で作りました。パーツの一部はアルバートの店で買った物ですよ」
「ああん?じ、自分でつったのか?す、すげえなお前さん……」
「うちの店にそんな上等なパーツがあったのか……」
おいおい、アルバートはもう少し店に自信を持てよ……。
「あ、そうだ二人居るなら丁度いいや。はい、お土産だよ」
空気を読めるよい子、レニーがバックパックからドサドサと山のように酒や海鮮を取り出した。
バックパックの存在を知らないアルバートは腰を抜かし、ぷるぷると震えている。
「お、おおおい!今更もう驚かねえと思ったが、なんだ?どっから?どっから出した?」
「俺が喋って動く以上、何があっても驚かない方が良いぞ……。
じゃないと心臓がいくらあってもたりんからな」
「へ、へへ……ちげえねえや。カイザーは冗談も言えるんだな。
まったく変わった機兵が居るもんだぜ……」
リック達に今夜はここに一泊をして直ぐに発つと伝えると、レニー達は報告のためギルドに向かった。
去って行く乙女軍団を見送り、ロボ軍団とオッサン軍団が取り残される。
「で、おめえさん達が帰ってくるのはもう少し後だと踏んでいたが……随分はええな?」
「ああ、ちょっと面倒な依頼を受けていてな。その流れでこちらに急ぐことになった」
「……言えねえ事情もあるんだろうから詳しくは聞かねえが、レニーの事頼むぜ」
「な、なんだ?レニーはそんなヤバそうな仕事をうけるようになったのか?」
「正直言って危険な依頼だと思う……。しかし、約束しよう。
俺がどうなろうとも、レニー達を護り抜くと」
と、俺が決意を新たにするとリックにスネをガァンと殴られた。
「馬鹿野郎、おめえさんがぶっ壊れちまったらレニーが泣くだろうがよ……。
おめえさんも無事に帰ってこい。まだ俺に見せてねえ素材が色々あんだろ?
素材毎おさらばなんて許さねえからな」
「そうだな、ヒッグ・ギッガに……ヒーガ・マッゴに……」
「ああん?今なんつった?」
「おいおいおい!嘘だろ?レニーがそんな、嘘だろお?」
ったく、オッサン共には敵わんな。
トレジャーハンターギルドでどうなるか、全く予想が付かないが……
絶対にパイロット、機体共々無事に戻ってこよう。
俺達には待っている人達が沢山居るからな!
百四十一話に加筆修正をしました。
倍くらいに増えてますので気になる方はご覧下さい。




