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第百四十話 トリバへの帰還

 シグレからの報告を受け、直ぐにトリバへ向けて出発した。


 迷ったが、これは俺達だけの問題では済まなくなりそうだったのでアズベルトさんに報告を入れた。


「……帝国のとある組織、と濁しつつ、黒騎士の名を出すのは意味が無いよね。

 黒騎士のアランドラが出る、となればこれは少なくとも帝国の上層部からの指示だ。

 皇帝が関与しているかは分らないけれど、大店長としてこれは見逃せない問題だ」


「問題はアランドラが狙うのがトレジャーハンターギルド、トリバ領内と言う事だ。

 俺達は共和国のお偉いさんとパイプがあるわけじゃあない。

 どうにかアズベルトさんから話を通しておいて貰えませんか」


「そうだね、一応僕はルナーサの大店長だ。トリバの大統領とはそれなりに付き合いもある。

 ただ、情報がはっきりとしたものではないから、彼も目立った対応は出来ないと思う。

 シグレ君といったか、彼女を疑うわけでは無いけれど、軍を動かして何も無かったじゃ済まないからね」


「……これが発端となって大戦が始まる……なんてことはありませんよね……」


「私としてもそうならない事を祈りたいよ……。

 カイザー殿、アランドラは強い。無理をせず敵わぬと思ったら直ぐに撤退して下さい。

 これは友人である君達と、何より娘の無事を祈る親としての我が儘です」


「ええ、心得てます。では、何か進展があったらまた」


 作戦……というか、これからの行動は簡単だ。

 まずはフロッガイを目指しひたすら移動をする。

 フロッガイで食料等の補充をし、宿で一泊する。


 今回は急ぐため夜も俺達の自立機動により休まず移動することにしている。

 しかし、車中泊を何度かしたからわかるが、シートで寝るのは身体に負担がかかる。

 なので、フロッガイとリバウッド、そしてフォレムでそれぞれ一泊して身体を休める予定だ。


「ところで、黒騎士のアランドラ……奴はどんな機兵に乗っているんだ?」


「その名の通り、黒一色の機兵で、カイザーさんにどことなく似た雰囲気の機兵ですわ。

 恐らくは、旧機兵時代に作られた機兵の模造品。

 しかし、その機動力は他の機兵の群を抜き、それに乗るため黒騎士団を目指す者は少なくはないみたいです」


「へえー、いろんな機兵を見てきたけど、流石に黒騎士は私も見たことないよ。

 話だけ聞いてると凄く強いんだろうなあって思うけど、ピンとこないね」


「カッコイイらしいからな、油断しちゃだめだぞレニー。

 噂によれば槍のような武器を使うらしいからな。

 レニーのリボルバーに頼ることになるかも知れない」


「お前達忘れるなよ、出来れば戦闘はしないで撤退するんだ。

 ギルドの人達に事情を話してフォレムに誘導したら、後はフォトンライフルを回収して撤退。

 これが今回の作戦だからな」


「わかってるわかってるって!もしもの話だよ!」


 まったく、自分の実家に危険が迫っているというのに暢気なもんだ……。

 まあ、多少ほぐれていた方がこの強行軍でへばらず済むのかもしれないがな。


 ◆◇◆


 予定通りフラウフィールドに到着した俺達はそのままフロッガイに抜けた。

 今回はミシェルの顔の他、重要任務と言う事もあり優先的に国境門を通ることが出来た。


 他の商人達が恨めしそうに見ていたが、こちらは急いでいるんだ、すまんな。


 前回同様「うらら」で宿泊手続きを済ませ、いろんな意味での補給タイムに突入する。

 旅に必要な食料等はここでなるべく補給し、残った時間でゆっくりと過して貰う。


「いいか、はやる気持ちもあるだろうが、休める時はしっかりと休むことも大切だ。

 何もかも忘れて楽しめとは言えないけど、きちんと心も休ませてくるんだぞ」


「もちろんだ!}

「言われなくたって!」

「任せて下さいな!」

「ちゃんとギルドにも寄るんですよ」


「「「はーい」」」


 そんな感じでスミレを伴って出発した乙女軍団を見ていると普段と何一つ変わらぬように思う。


 しかし、今現在も黒騎士は海を渡りトレジャーハンターギルドを目指しているのだ。

 パイロット達にはああは言ったが、どうも落ち着かないな……。

 どうやら俺が一番ダメな奴みたいだ。


 暫くモヤモヤとしていたが、考えていても仕方が無いので今後の予定を纏めることにした。


 まず、リバウッドからパインウィードに抜けてフォレムに向かう。

 パインウィードやフォレムでゆっくりしたい気持ちもあるが、それはまた後だ。

 

 フォレムで軽く補給をしたら王家の森を抜けてトレジャーハンターギルドへ。


 マシューはギルドメンバー達に事情を話し用意をして貰う。

 その荷物はマシューがバックパックに預かると言うことで良いだろう。


 その間俺達は周囲の警戒をする。

 そして可能であればウロボロスとフォトンライフルのデータリンクを済ませ、戦力に加える。

 ミシェルは前衛として優秀だが、今回の作戦に狙撃手は喉から手が出るほど欲しい。


 ウロボロスの広範囲レーダーと組み合わせれば鬼のように強力な狙撃手となるだろう。

 万が一撤退前に黒騎士が来た場合、戦いに備える必要がある。

 先に手を出すのは不味かろうから、形式上マシューが話し合いに向かい、決裂し戦闘状態になったら即狙撃をして貰う。

 

 それは別に当たらなくとも良い。


 狙撃手がいるというだけで相手には十分なプレッシャーとなる。


 後はこの間手に入れたシールドだが……、ソードが俺用だったならば併せて装備と考えたが、ソードはオルトロスの専用装備だった。


 となれば、合体時に使うしか無いか……というか、恐らくはそれを想定したものなのかも知れないな。


 と、レニーから通信が入っていることに気づいた。

 夢中で気づいてなかった……すまん。


「すまんすまん、どうしたレニー、なにかあったか?」


「あーーー!やっと出た!あのですね、ザックと再会したんですけどね?

 カイザーさんのお人形がすっごい良い出来で!あ、じゃなかった。

 お姉ちゃんに夢中で返してくれないんですよ-」


「はあ?一体お前は何を……」


「ああ、じゃなかった。私の肩に座ってたお姉ちゃんに気づいてですね、これは何処で買った?だの、誰が作った?だの煩くて……。

 適当に誤魔化してたら今度は「スケッチさせてくれ」ですよ。

 お姉ちゃんの目がどんどん曇っていくんですよ?助けて下さいよ……」


「助けろって言われてもな……ああ、そうだマシュー達は一緒か?」


「え?近くのお店に居ますけど……」

「そうか、じゃあお前はそこで待ってろ」


 スミレ……留守番していればこうはならなかったろうにのう……。

 さて、ミシェルに連絡するか。


「あら、カイザーさんなにかありましたか?」


「ああ、マシューも一緒に居るんだよな?」

「ええ、一緒にお買い物をしてますの」


「すまんが、一度宿に戻ってウロボロスとオルトロスに乗って出てくれないか」


「敵襲ですの?」

「いや、もっと厄介なものだ……。

 レニーが、いやスミレがザックの奴に見つかってな……」


「ああ……なるほど……。ウロボロス達で気を引いてスミレさんを逃がすというわけですのね」


「ご明察だ。マシューにも伝えて置いてくれ、すまんな」


 はあ……、ザックとはもっと平和な時に会いたかったよ。


 

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