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第十一話 魔獣の秘密

 あれから一ヶ月ほど森で訓練を続けている。


 魔獣のパーツから俺の武器が造れそうだったので、その素材集めと訓練を兼ねて魔獣狩りをしている。


 輝力の制御を覚えたため、レニーは過剰な必殺技を撃つことは滅多に無くなり、今のところは魔獣から造った簡易的なナイフと蹴りで獲物を狩っている。


 以前我々を死ぬ目に遭わせたあの魔獣、ブレストウルフは今では格好の獲物となり、逆に俺達が追い回す始末だ。連中のパーツを集めれば飛び道具も造れそうに思ったが、いくつかパーツが足らないので他の場所も探してみる必要があるな。


 そうそう、奴ら、魔獣についてはスミレが渋々といった感じで説明してくれた。



  ◇◆◇


『カイザー、怒りませんか?』


「なぜ俺がスミレを怒る必要がある?もしかしてまた何か隠していたのか?」


『怒らないとおっしゃらなければ申しません』


「口調が変だな…まあいい、怒らないよ、話して」


『色々思うところがあって300年ほど起こさなかった、と言ったのは覚えていますね?』


「ああ、その事については仕方ないと思うし、怒るようなことじゃないさ」


『いえ…、カイザーさんのメインシステム、つまりカイザーさんは眠った状態でお体だけ起きていたと言うのはお話ししましたよね?』


「ああ、脳は寝ていて身体だけ起きてる状態だったって事だよな」


『大体そんな感じです。人間であれば身体が完全に止まってしまったら死んでしまいますので其れで正しいのですが、カイザーさんの場合は事情が違います。本来であればメインシステムだけ停止させると言うことはあまり良くは無いのです』


「ちょっとまて、さっきから気になってたが、なんでお前まで「カイザーさん」と呼ぶんだ?何時ものように呼び捨てにしてくれよ、ムズムスするから……」


『あれ?何故でしょう…?何故だか「さん」をつけて呼ばないといけないきがして……。いえ、で、ですね……、お身体を起動させていると言うことは、輝力炉エンジンには火が入った状態です、カイザーシステムを動かすには莫大なエネルギーが必要で、その全てを輝力炉でまかなっているわけですが、それが止まっている以上、余裕で炉のエネルギーは余ってしまいます』


「輝力炉は夢の無尽蔵エネルギー生成装置みたいな感じだったな。扱いを誤ればどえらい目に遭うから、その製造方法は人類には秘匿、コアとなる部分はブラックボックスで解析すら不可能だったと聞く」


『その通りです。そしてその無尽蔵に生み出されるエネルギーを私やカイザーさ…カイザーのサブシステムに回して全出力を上げて調査や分析をしていたわけですが、当然それでも余ってしまうわけです』


「なるほど、いくら頑張って使っても俺が寝てる以上は余剰エネルギーがどんどん発生してしまっていたと」


『はい、それでそれをそのままにしておくとお体に触ると申しますか、なんと申しますか……率直に申し上げるとカイザー様はやがて爆発してしまうとわたくしは思いました』


「おい、言葉遣い!悪化してるよ!」


『ですので…大変申し上げにくいのですが、少しくらいなら良いだろうと、外部へ放出していたわけです…勿論、人体を含む生物への影響が無いことは社の方、クロモリの研究員達も確認済みでしたのでさほど気にせず余った分はどんどん、そりゃもうどんどんお外に放出しちゃってました……』


「影響は…無い、そうだね、確かに資料集にはそう書いてあったと思う」


 そうだ、アニメ終了後に出た資料集にも其れは書いてあった。某目がグルグルになる系のエネルギーとは違いクリーンであると。多少漏れたところで人体や生物への影響は無いと明記されていた。


 確かに、それで影響が出るようであれば間近で浴びることとなる作中の主人公達もただでは済まなかったと思うし、最後まで健康体で居た様子から何も無いと思う。



『ただ、ただですね。イレギュラーというものはどこにでも忍び寄ります』


「つ、つづけて……」


『この世界の在来種、動物たちには我々が知らない器官がありました。魔石です』


「魔石っていうとファンタジーなお話に良く出てくるアレかい?」


『そうです、その魔石です。心臓に隣接するその魔石は…輝力と凄く、すごおく相性が良かったようで……

 中でも強い個体が持つ魔石は輝力の影響を受けやすかったようで、それの干渉により周囲から鉱物を吸収し始め、心臓部と魔石を融合させ魔導炉に変異、そこを基板として徐々に変異は全身にわたりやがて機械生命体へと変化させてしまいまして……』


「では、この世界でちょいちょい困ったことを起こしている魔獣は、ハンターズギルドなる冒険者組合設立に至った原因である魔獣は、スミレさん、スミレさんがお創りになられた、そういう事で間違い有りませんか?」


『ちょ、ちょっとカイザー敬語はやめましょう。辛いです。怒らないと言いましたよね?』


「怒ってませんよ。ちょっと驚いただけですよ。俺が寝ている間にスミレさんはそんな凄い事をやってたんですねー。通りでスミレさんがお目覚めになったのと魔獣の発生時期が大体近い感じだったわけだなあと納得した次第ですから。怒ってませんよ」


『カイザー、それを私の国では怒ってると言うのです。いやほんと勘弁して下さい……自分から暴露したのですから…何卒…』


「まあまあ、カイザーさん、その辺で勘弁してやって下さいよ」


「レニー達だって魔獣にはかなり迷惑を被ったんじゃ無いのか?」


「そりゃまあ、酷い目に遭った人は沢山居ますし、今もきっと誰かが餌食になってますよ」


『うう…レニー…ごめんなさい……』


「まあまあ、でもね?魔獣が居るおかげで私たちみたいなしょっぱいハンターが機兵に乗れるんですよ。ほら、機兵って大昔に創ったのを発掘してメンテナンスするか、自作するしか無いんわけで。発掘された高性能な遺物アーティファクトは大抵帝国なんかの国家に接収されちゃうから自作する人が多いんですよね」


「前も思ったがロボットを自作って結構凄くないか?」


「うーん、自作と言っても見よう見まねですからね。動きそうな部品をくっつけて上手く動いたらラッキー!みたいな。世の中には凄まじいメカニックが居て機兵団の機兵に迫るスペックを誇る機体を作れるみたいなんですが、無理無理!普通はむーり!」


「ほほう、一度会ってみたいな…出会い頭に分解されそうな気もするが……」


「あはは!可能性は無くはありませんがカイザーさんなら平気でしょ?私がいくらやっても壊れなかったんだから…おかしいですよその装甲!工具のが壊れちゃうなんて信じられません!」


「マジで壊す気でやってたのか……」


『わたしはこの子についてそう説明し、貴方に警告しましたよ……』


「まあまあ!で、それもこれもスミレさんが魔獣を作ってくれたおかげ!魔獣のパーツが無ければもしかしたらもう機兵は存在しなかったかもしれませんよ。

 国家所有の機兵にだってメンテナンス用パーツとして魔獣は使われているはずですからね」


(するとスミレがミスらなければ俺が望むロボが世に溢れる前の無双出来る世界にロールバックしていた可能性もあったのか…ぐっ……複雑だ……)


「私としては、この機兵文化のきっかけ、そもそもの原因がカイザーさんにあるのでは?と言い伝えから推測してるんですがその辺どうなんですか?」


「内緒だ」


「内緒ですかあ…まあ、それならそういうことにしておきます。スミレさんは私たち世界にもう一度機兵を触るチャンスを与えてくれた、今度は間違えず、良い方向で使うチャンスを与えてくれた。それでいいことにしましょうよ!ね!」


『レニー、良い子ですね。後でセンサーの見方を教えてあげますね』


「ありがとうございます!スミレお姉ちゃん!」


「なんだかお前らまた仲良くなったな……」



 仲良くなるのは何よりだが、俺が嘘をついてるときに上がる数値とかそういう話は勘弁して欲しい、本気でそう思った。

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