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第百二十六話 暗部

 ―帝国領某所


「成る程、奴らはアレを回収していったか」


「ええ、リブッカを調査をしているようだったので、監視を続けていましたが、まさかアレにたどり着くとは……」


 薄暗い部屋の中に二人の人物が居た。


 依頼主である帝国軍諜報部アルスト・レビン、そしてもう片方はシグレと呼ばれるアサシンギルドの女である。


 アサシンギルド、それは暗殺だけが仕事ではない。

 時には今回のような諜報活動もまた彼らの仕事だ。


 ギルドと名は付いているが、これは裏組織、その存在を知っているものは決して多くはない。

 

 本部の存在は噂されるが、その場所を識るものはギルド員以外には居ない。

 完全掌握し、帝国諜報部に取り込もうとする動きもあったが、逆に貴重な諜報部員の数を減らす結果となった。

 

 経緯からしてアサシンギルドに消された事は確かなのだが、その情報すら掴めず掌握は完全に失敗してしまった。


 故に現在は国としてではなく、一人の客として依頼をし仕事をさせている。


「アレから我々に届く可能性はあるか?」

「我らはあくまでも諜報が仕事。故に拙い意見になりますがよろしいかな」

「ああ、構わない。君が見て感じたことをそのまま話してくれればそれでいい。

 ここ数日、奴らを監視していた君の意見を聞きたいのだからな。

 そうだな、先ずは改めて詳しい報告をしてくれ」


「であれば……。連中の姿を初めて見かけたのはルナーサにほど近い竹林でござった。

 中間報告にも上げたとおり、見慣れぬ3機の機兵に乗り現れました。

 アレに感づいたかと監視を続けていましたが、その日はそのまま帰っていきました」


「確か、2機はそれなりに手練だが、1機は素人だと報告していたな」


「ええ、竹林に槍を持ち込むとは初心者もいい所。故に脅威度低しと報告を上げましたが、問題は翌日です。

 槍を持っていた紫色の機兵がタチ…いえ、リーンソードを装備していたのです」


「ほう、リーンソードか。今では見ることも少ないのに何処からもってきたのやら。

 大方家の倉庫から持ってきたのだろうが、アレは素人には難しいと聞くぞ」


「ええ、故に私も呆れつつ監視をしていました……が、その動きは決して付け焼き刃等ではなく、永きに渡って鍛錬をしたブシドウに通ずる物がありました」


「ブシドウ……、大戦と共に失われた武術と聞くが一体何処でその技術を……」


「わかりません……が、連中はそれで終わりではなくそのまま原野に向かいました」


「先程聞いたとおりだな。まあ、リブッカの生息地を調べるというのはまともな奴であれば誰しもが起こす行動であろう。

 しかし、連中は池には寄らず、そのままビスクルに抜けたと報告にあったが」


「ええ、軍部からの依頼、はたまた軍部のツテを使っての調査かと疑い監視を続けました。

 が、奴らは普通に露店で買い物をしていただけで特に何もせず。

 ろくに荷物も持っていなかったようなので恐らく補給に寄ったのだと思いますが、

 アレだけの動きが出来ながら、初心者ハンターのような行動は不可思議に思います」


「ううむ、こちらに気付いて撹乱しているという線はないのか?」


「其れはないかと。ビスクルで監視していた赤毛のパイロット、恐らくは獣人族の女と思われますが、奴は屋台を次々巡ってはだらしない顔で買い食いをしていました」


「しかし、それが結果としてはアレを回収していったのだろう?」


「はい、パーティーの中にまともな奴が居るとは思えませんでしたが、翌朝になるとまっすぐ池に向かい間もなくアレを発見しています」


「やはり村で協力者から情報を得たのではないか?」


「そうでしょうか……。他のパイロットも監視していましたが、皆一様に買い物を楽しんでいたようにしか見えませんでした」


「回収した後はどうだったのだ?何か気付いたような気配はしたか?」


「いえ、水から引き上げた其れを警戒することもなく手にとると、どこかにしまいそのままルナーサヘ引き上げていきました。

 形状から銃だと勘違いしているのかわかりませんが、銃のように構えふざけているようでしたから、なにか面白いものを見つけたというくらいにしか思っていないのでしょう」


「ふむう、であればアレを回収することは可能か?」


「はい、間抜けそうな連中です。お時間をいただければ必ずや」


「よし、今日は休んで明日からまた頼むぞシグレ殿」


「かしこまった」


 シグレと呼ばれたアサシンは表に出ると口笛を吹き何かを呼び寄せる。


 現れたのは巨大な鳥―いや、それは魔獣だった。

 ひらりとそれに飛び乗ると夜の空に消えていった。


 一人部屋に残ったアルストは報告に会った3人について考えていた。


(作戦について感づかれることはないとは思うが、念には念を入れておかねばな。

 人が魔獣を作る、この禁忌が世にでることとなれば他国は黙っては居ないだろう)


 アルストはあちこちに印がつけられた地図を広げため息をつく。


(上の考える事は理解できん。魔獣を生み出し資源にするなど……あってはならないことだ。

 しかし、従わねば生きては行けぬ。願わくばこの忌々しい印が全て消え去ってくれればいいのだが)


 


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