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第百十九話 調査進展……か

 「たあああああああ!!!」


 槍から日本刀リーンソード雪月華セツゲッカ」に持ち替えたミシェルは昨日とは打って変わり、水を得た魚のようにリブッカを次々と屠っている。


 聞けば別に上手く扱えないから苦手なのでは無く、槍の方が上品だからという理由で好まないと言う話だった。

 しかし、地形効果もあるのだろうが槍よりこちらの方が圧倒的に期待に合った良い動きをしている。

 

「流れる水の如く美しい剣技だな」

 

 と、思ったまま口に出して褒めると嬉しそうにしていた。


 今後は槍とともに手に取り良い活躍をしてくれることだろう。


 この日はリブッカを計12体も討伐し、そこそこの収入となった。

 

 帰り道、またスミレが空を気にしていたがやはり何も反応はなく、リブッカの件もあって少々気になった俺は帰りにギルドによって話を聞くことにした。


 ギルド職員、ライラから先ずはリブッカについて詳しい話を聞いた。

 図鑑があるからと特に生態を聞かずに調査に出ていたが、図鑑には乗っていない生のネタは大切だからな。

 簡単には行かなそうなので反省して聞くことにしたのだ。


「リブッカは本来キャリバン平原が主な生息地なんですよ。

 場所は大体ルートリィからまっすぐグレートバンブーを越えたあたり。

 その辺りは帝国との国境に面しているため、街道も無く未開の地になっています。

 もし行くとなれば、許可証を発行しますので予め声をかけてくださいね」


 どこでも自由に行けると思っていたが、そうではないらしい。

 いや、トリバではそのような面倒なことは無い。

 

 これはルナーサ商人連邦独自の決まりで、未開地に誰が入ったのかをきちんと管理することにより、勝手な開発を防ぐ目的と、街道すら無い土地ということで安全面を考慮した結果という話だ。


 未開の地で不幸にも倒れてしまっても、届け出がされていれば帰還予定日より大きく遅れた場合に救助依頼が出される仕組みになっているらしい。


「前にも何度か依頼で向かったパーティーが居ましたが、概ね10日以内には帰還していましたのでもし行くのであればそのくらいの予定で届け出を出すと良いでしょう」


「ありがとうございます。それで、グレートバンブー周辺で空を飛ぶ魔獣……なんて報告はありますか?」

 

 俺が伝えた通りレニーが例の話を一応聞いてくれている。

 

 スミレに限って気のせい、ということはあまり考えられない。

 であれば魔獣か何かが居るのではないか、そう思ったのだが……。


「いえ、あの辺りでそのような魔獣が出たという話は聞いていませんね。

 変わった魔獣といえばそれこそあなた方が討伐してくれているリブッカくらいのもので、空飛ぶ魔獣はこのへんでは……」


「そうですかあ、じゃあもしキャリバン平原に行くと決まったらついでに調査してきますね」


「ええ、未知の魔獣報告は我々としても助かりますので、その時はお願いしますね」



 ギルドを出て、現在我々の基地と化しているルストニア家の格納庫で一息をつく。


「でさあ、どうする?あたいは別にこのまま竹林で狩りをしててもいいんだけどさあ」


「うーん、気になるっちゃ気になるんだよねえ。ヒッグ・ギッガもそうだけどさ、本来の生息地ではないところにいる魔獣って厄介なことに繋がるからねえ」


「リブッカもまた、既に厄介事として話題に上がってますし、私としては原因を突き止めたいですわ」


「ヒッグ・ギッガの場合はボスの座を追われた個体、と推測できるが群れで移動しているリブッカだとまた話が違うからな。

 俺が居た世界でも似たようなケースはあってな、本来シカが生息しない地域にいつしか群れで現れ始め、畑の作物を食い荒らして大問題になったんだよ」


「へえ、そっちにもシカっているんだな。で、その原因はなんだったんだ?」


「ああ、色々だな。人間によって生息地が開拓され居場所を求めて移動するパターン。

 逆に異常に繁殖した群れが餌を求めて本来の生息地を外れて大移動したというパターンも有る」


「それってどっちにしろ『お腹がすいたから』ってのが理由につながりますよね?」


「そうだな、生き物である以上、生きるために食い物は必要だ。となれば……」


「キャリバン平原になにか異変が起きている、その可能性はありますわね……」



 仕事を終え、格納庫にやってきたアズベルトさんに会議内容を含めて報告をする。


「成る程、キャリバン平原に異変が発生し、餌を求めてこちらにやってきたか……。

 ならば南のほうがより過ごしやすいと思うんだけど、わざわざこっちに来る理由が気になるね。

 しょうがない、少々危険だけど調査をお願いしていいかい?」


「あたいはかまわないぜ」

「勿論、依頼とあれば何処へでも!」

「ブレイブシャインとしての初仕事ですもの、やり遂げますわ!」


 パーティの結束は固く、誰ひとりとして意見を違えるものは居なかった。

 では、明日用意をして早速!と話し合いを始めた時、バァンと音を立て家へと繋がる扉が開かれた。


「ミシェル!帰ってたのね!帰ってたのなら言ってくれればいいのに!!!」


「お、お母様?言ってくれもなにも……お母様は居なかったじゃありませんか……」


 綺麗な女性がうるうるとした瞳で駆け寄ってくる姿が見えた。

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