表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/498

第百十四話 その頃の乙女軍団

「馬車ってこんなに揺れるもんだったんだなあ」


 マシューが変なことを言うもんだから他の乗客がクスクスと笑っている。

 確かにカイザーさんの馬車はおかしいほど揺れないし、椅子もフカフカしていて中に居ると本当に動いているのか不安になるくらいだ。


 私達は今、久々に機兵では無く自分達の足で移動し、買い物を堪能している。


 ずっとカイザーさんに乗りっぱなしだったというわけでは無いけれど、こうして広い街を馬車で移動してお買い物するなんていつ以来だろう?


 ここ、ルナーサはフォレムの何倍有るのか分からないほど広い。

 フォレムだとお店とお家が適当に混ざり合ってるのに、ここはきちんと居住区と商業区がわけてあって、毎日わざわざ家からお店に通うらしい。


 露天商みたいなことしてるなあって思ったけど、建物を丸々お店のスペースとして使えるのは便利そうだし、流石商人の街だなあと言ったところか。


 建物を二つも所有するとお金も大変なのでは?とミシェルに聞いてみた。


「個人で店を所有している人も居ますが、半分以上はうちみたいに大きな商家と契約した雇われ店長ですのよ。

 毎月売り上げから決まった割合を支払う取り決めになっているので、極端に儲からない月でも家賃を払えないと言う事にはなりませんの」


 わあ、凄い仕組みだ!と、私は素直に思っちゃったんだけど、マシューが意地悪そうに質問を入れる。


「じゃあさ、100金貨稼いだのに『1金貨しか稼げませんでした』なんて嘘つかれたら大損じゃね?」


 確かに……!人間いい人だけじゃないし、そんな人も居るかも!

 でも、ミシェルは何故か得意げに笑ってそれを否定する。


「マシューのおっしゃりたいことは良く分かりますわ。

 でも、商人というのは怖いんですのよ? 儲けるためには他店の観察も必要ですの。

 何が売れているか、客が何を求めているか、それを見定めるため他店の観察は絶やしませんし、仲間との情報交換もかかしませんの」


「じゃあ、例えばマシューが儲けているのに『あたい1銀貨しか稼げなかったよー』と誤魔化したところで、それを見ていたお姉ちゃんが『うそですよ、レニー。マシューは金貨10枚は稼げるほどお客さんが来ていましたよ』と言えばバレちゃうわけかあ」


「その通りですわ。そして雇い主に嘘をついた店長は厳しく取り調べられ、帳簿に嘘が見つかれば罰金を取られた上にルナーサから追い出されますの」


 信用が第一の商人、その商人の国の首都ですのよ?と言うミシェルはやはり得意顔だった。


 さて、今日はカイザーさん達は居ないとは言え、お姉ちゃんは一緒に来ている。

 お姉ちゃんはお姉ちゃんなのにすっかり可愛くなってしまった。


「疲れました。レニー、乗せて下さい」と私の肩に座ってニコニコとしてるんだ。

 

 お姉ちゃんがこうして身体を持ってお話ししてくれるのはとても嬉しいし、キラキラとした綺麗な翅を持ったその身体はとても可愛らしいけど、とにかく目立つ!


 さっきから大人の人達は私を微笑ましそうに見てくるし、小さな女の子達はお姉ちゃんを欲しがるし、そのお父さんやお母さんなんかは「どこで買ったのか教えてくれ」と聞いてくるし。


 お姉ちゃんと一緒は楽しいけど、これはこれで大変だ。


 ちなみにお姉ちゃんは周りのことは気にせず飛ぶし喋る。

 いいのかなあ?って思ったけど、


「何か言われたら『最近気鋭の人形師ザックによる人工精霊だ』と言えば良いんですよ」


 なんて無責任なことを言っていた。

 確かに元となった模型はザックが作った物だけど、あそこに行ってもお姉ちゃんは買えないのにな。


 ……帰りに寄るはずだけど、お姉ちゃんの姿を見たら本当に作るかも知れないなあ。

 自分で動く物は流石に無理だろうけどさ。


 

 今日はまず、ミシェルの案内で一通り中心街をあるいた。

 色々なお店があったけど、特に多いのが服屋さん。


 折角だからーと、冷やかしのつもりだった私やマシューも一着買っちゃった。

 こう言うお店だから高いかと思ったけど結構リーズナブル。


 それが買った理由なんだけど、なんでもそれぞれの身体に合わせて作るのでは無く、5段階の大きさ毎に同じ服を何着も作って殆どの人が着れるように作っているから値段を落とせるみたい。


 ミシェルが「既製品というものですわ」と言っていた。

 ウロボロスのローちゃん……、ボロスの提案らしいけど凄いなあ、戦いだけじゃ無くてそんな知識もあるんだ。


 カイザーさんも変な知識いっぱい識ってるけど、カイザーさん達はほんと不思議な存在だな。

 そう言えば異世界から転移したとか凄い事言ってたっけ……。


 カイザーさんが言うことだから本当のことなんだろうな。

 だって人間みたいに考えて喋って動く機兵なんて居ないし、お姉ちゃんとカイザーさんって時々私が識らない単語を出すし。


 今度暇な時カイザーさん達が居た世界のこと聞いてみようかな。

 あっちはきっと凄い機兵が沢山居るんだろうなあ……。


「おーいレニー!何ぼさっとしてんだ!今度はパーツ屋行くってさー!パーツなんかさっさと見て港にご飯食いに行こうぜ!」


 っと、このままじゃほんとにパーツ見る時間が無くなっちゃうよ!

 まったくマシューの食欲は異世界級だなー!


「まってよー!今行くから!ご飯はその後ゆっくりと!」

「そうですよ。カイザーが身体をねだっていましたし、パーツもじっくりみないと」


 お姉ちゃんの一言でマシューが絶望感に包まれた表情に変わる。


 まあまあ、お姉ちゃんはあたしが抑えるから……。

 お昼なる前にはご飯いけるから……。


 お金稼いでおいて良かったなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ