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第百五話 ルストニア家

 ミシェルのおかげでスムーズに門を通った俺達は報告のためハンターズギルドに向かった。


 首都にあるギルドだからどれだけ大きいのだろうと、少しだけワクワクしたがフォレムのギルドと大して変わりは無かった。


 何だかちょっと拍子抜けしたが、この国ではハンターよりも商人の方が多く、ハンターズギルドの需要がトリバほど無いため、首都とはいってもそこまで大きな規模にする必要が無いとのことだ。


 少々がっくりきたが、無事依頼達成の報告が出来たので良しとしよう。


 念のためにここでも例の街道について報告すると、商人ギルドにも話を回しておくと感謝された。

 やはりあの街道はそれなりに重要な道のようで、商人ギルドから何とか出来ないか問い合わせが何度もあったらしい。


 とはいえ、他国の問題なのでいくらギルド間で付き合いがあるとは言え勝手にハンターを派遣することも出来ず、トリバのギルドに手紙を送るのが精一杯だったようだ。


 早々にギルドの依頼が終わった俺達はミシェルを家まで送ることにした。

 

 依頼されていたのはルナーサまでの護衛、つまりギルドに着いた時点でもう終わりなのだが、ミシェルから是非家に来るよう招待されたのだ。


 ウロボロスの事も気になるし、ミシェルの家も見てみたい。

 俺達は二つ返事で了解したのである。


 首都ルナーサもまた、木の素材を主体とした建物が多く建っている。

 街の南に大森林があるそうで、木材資源が豊富らしい。


 規模が大きな街だ、どこまでもどこまでもそれが続くかと思われたが、途中から建物の様式が変化する。


「この辺りからは旧貴族街ですわ。住んでいる人は殆どが大きな商会の重役ですの」


 今まで立ち並んでいた建造物とは違い、どこかヨーロッパの建物を彷彿とさせる大きな屋敷が建ち並んでいる。

 主体となっている材質は石材で、何処か古びた感じはあるが、けして汚いわけでは無く、荘厳な雰囲気を漂わせている。


「ルストニア時代から残る建物に手を入れてますのよ。

 見た目は古くさく感じますが、中身は現代技術が詰まった堅牢な建物ですの」


 古民家の内側だけリフォームして住んでいるような感じかな?

 どこかで見た目は古い日本家屋なのに、玄関を開けるとLOT家電で揃えたハイテクハウスーってのを見たことがある。

 

 そこまで行かなくても何か魔導具を使って近い事はやってそうな気がする。


 やがてひときわ大きな屋敷が見えてきた。

 こうなると屋敷と言うよりはちょっとした城に見える。


「見えてきましたわ、あれが私のお家ですわ!」


 やっぱりな、と思った。


 この手の流れ、ましてやルストニアのお嬢様だ。

 あれほどデカい屋敷が出てきてうちは隣のちっさいのですのは無いと思ったんだ。


 屋敷の前には大きな門が有り、2機の機兵が門番をしている。

 その胸にはルストニアの紋章が描かれていて、俺のロボ好き魂が熱く震えてしまう。


 いいよね……紋章入りのロボット……。

  

 機兵達はビシっと敬礼をすると、声を揃えてミシェルに挨拶をする。


「お帰りなさいませ、お嬢様!どうぞお通り下さい!旦那様がお待ちです!」


 旦那様……、ミシェルのお父さんが待ってるって?着いたこと知ってたのかな。

 それともまさか毎日毎日ずっと待ってたって言う意味……?


「ふふ、門を通った際に先触れを出したのですわ。

 馬車に乗っていたと報告されていれば迎えが来なかったのも頷けますもの」


 なるほど、そう言うものか。お金持ちって言うのは凄いんだな……。


 我ながらいまいちピンとこない感想だなと自問自答しつつも敷地内を移動する。

 凄いな金持ちって。こんなに大きな馬車が悠々と走れるスペースがあるどころか、家まで少し遠いくらいだ。


 これはちょっとしたテーマパークに来たような気分だぞ。


 そして間もなく、屋敷の前に到着し、多くのメイド達の姿を見てギョッとする。


「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」


 マシューやレニーが先ほどから無言なのはただただ唖然としているのだろう。

 俺だって言葉を失いかけているんだ、住む世界が違うって奴だな……。


 ミシェルが馬車から降りると屋敷から立派な身なりの男性が現れた。

 三十代中頃だろうか?渋い感じのイケメンで、何だか嫉妬する勢いだぞ。


「ミシェル、良く戻ったね。護衛の方々も有難うございます。

 部屋を用意していますのでおくつろぎ下さい」


「皆さん、こちらルストニア家現当主、アズベルト・ルン・ルストニア、私のお父様ですわ」


「ああ、あわ、あた、わたしはレミー・ヴァイオレット、3級(サード)ハンターです」

「あたた、あた、あたたい、わた、私はマシュー、ただのマシューです」


 こいつら緊張しすぎておかしくなってるな。

 レニーは普段からふわふわしてる「あたし」と「わたし」がゴッチャになってるし、マシューなんかどこぞの格闘家かなにかみたいになっている。


「はっはっは、そう硬くならなくていいよ。ミシェルが屋敷まで連れてきたんだ、もうお前のお友達になっているのだろう?」


「そうですの!彼女たちは護衛と言うよりお友達ですのよ!さあ、レニー、マシュー!機兵はあちらに止めて中へいらして!」


 流石ミシェル、『カイザーさん達』とは言わずに機兵と呼んでいる。

 機兵をさん付けするなんて妙な話だからな。レニー達ならこうはいかない。


「いや、ミシェルそれには及ばないよ。

 始めまして白き機神殿、貴方様がいらっしゃる日を当家はずっと心待ちにしていました。

 あちらに貴方がたも入室出来る部屋を用意してありますのでご案内しましょう。

 積もるお話しはまず、そちらに行ってからゆっくりと」


 ミシェルの父親はさも普通に俺に話しかけてきた。

 


 

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