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第九十七話 カイザー職質される

 リバウッドまでの道なりは平和そのもので、時折ハンターと情報交換をする程度で特に目立ったトラブルも無くどちらかと言えば少々退屈な旅路であった。


 ハンター達にこの先の街道が開通したことを伝えると、喜び半分驚愕半分と言った感じで、何よりヒッグ・ギッガがどうなったのかを気にしていた。


 村のハンター達と協力して倒したとレニーが伝えるとそれを冗談だと思って笑う者も居て、「街道の情報はきちんと理解し拡散して貰うべき」と、スミレがバックパックからヒッグ・ギッガを取り出してしまい、ハンター達がパニックを起こすというアクシデントもあったが、まあ些細なことだ。


『別に馬鹿にしたような顔に腹が立ったわけではありませんよ。きちんと脅威が去ったと理解して欲しかっただけです』


 絶対嘘だ……。


 そんな真似が出来るのもここまでだ。目前に迫る宿場町リバウッド、ここは街道の分岐点となる町だ。

 北に行けばパインウィード経由でフォレムへ、西へ行けば首都イーヘイとフォレムへ向かう街道に。

 南に行けば大牧場があるオグーニ、そして東に向かえば国境の町フロッガイだ。


 場所的に国境を越えトリバへやってきた商人達が集まるため、いつしか宿場町として発展したとのことだ。


 というわけで、ここからは商人達と遭遇することが多くなる。ハンター達も俺やオルトロスへ興味を向けることはあるがそこまで声をかけてこない。


 しかし商人達は別だ。少しでも金の匂いを感じると直ぐに声をかけては情報を得ようとしてくるのだ。

 それはこちらも情報を得るチャンスであるため、そこまで悪い話では無いのだが、あまり目立った行動が出来なくなるのは少し不便に思う。


「わあ、立派な門ですねえ!」


 レニーの間の抜けた声に力が抜けるが確かに立派な門だ。

 ベースは金属でしっかりとした作りになっているが、それに沿うように彫刻が施された木が併せられていて堅牢さと暖かみを併せ持った美しい門である。


「ここには商人だけでは無く、色々な人々が集まりますので……、今日は大人しくしましょうね」


 ミシェルの警告通り、門を潜り町に入ると今までに見たことが無い程機兵達がうろついていた。


 その殆どがなんらかの魔獣をベースとしたハンターの物と思われる機兵だったが、チラホラと人型の機兵の姿も見られた。


「あっちの青い機兵がトリバの防衛軍で、向こうに居る銀色の機兵がルナーサの自衛軍ですわ」


 これが噂に聞いていた「人型」か。確かにどことなく俺に似ているが、西洋甲冑を身に纏っているようなデザインで正直向こうの方がカッコいいのでは無いかと軽く嫉妬する。


 トリバとルナーサの関係は非常に友好なようで、その二つの機兵もカラー以外に見た目的な違いはそこまで無く、同じような機体デザインをしている。


 これにはルナーサが所持している聖典を元にトリバの意見を取り入れて設計されたと言う経緯があるらしい。

 

「いやあ、こうしてみるとほんとカイザーと軍機って似てるよなあ」

「間違えて連れて行かれたりして」

「……悪い冗談ですわ」


 ほんとだよ!こんな所で変なイベントでも起きたらまた足止め喰らっちゃうよ。変なフラグは立てないで頂きたい。


「む、そこの白いの!ちょっとこちらに!」


 ほらきた!


 青い機兵、トリバ共和国防衛軍所属機と思われる機兵がこちらに手招きをして呼び寄せる。

 腰に立派な片手剣を装備した如何にも兵士らしい姿は惚れ惚れとするな。


「おい!白い奴お前だ!早くこちらへ!」


「え?あ、あたしですかあ?」


 レニーが素っ頓狂な声を上げると、その声に驚いた相手がこちらに向かって歩いてきた。


「なに?女……?ちょ、ちょっとハッチを開けて姿を見せろ!少々事情を聞かせて欲しい!」


 なんとも無礼な態度だが、平和を守る存在というのはこう言う一面も無ければいけないからな。

 俺が許可を出すと、スミレがハッチを開けレニーがそこから顔を出す。


「あのー、何か私達悪いことでも……?」


 コクピットに収まっているのが本当に女の子なのを確認すると、兵士は驚いた顔をしつつも、用意していたであろう質問をする。


「む、あ、ああ、いや。その機兵、軍機では無いのか?認識票プレートは……肩か。では少し見せて貰うぞ」


 お巡りさんから職質受けてるようなもんだな。高校生の頃は俺もたまに職質されたんだよな……。

 あれは不審者のチェックや深夜徘徊をする子供への指導の他に盗難自転車チェックも兼ねている。

 良くある自転車に乗って夜中にちょろちょろコンビニなんかに行っちゃうと覿面に遭遇・職質となるわけだ。


「なるほど……、登録はされているようだな。君、一応タグも見せてくれ」


 俺の身体を相手に近づけ、コクピットから手を伸ばして向こうのパイロット―トリバ兵であろう男に手渡す。

 かっこいいシチュだから良いけど、それぞれ下りてやればもう少し楽なのでは無いかと思う。

 

 何よりよくよく状況を観察すると俺とよく似た顔の機兵が「近い」のだ。相手はロボだし、AIを持たない抜け殻とは言えなんだかちょっと照れる。


 タグを手に何かの端末を弄っているのが目に入った。む、ここに来てそんなハイテクな端末を見ることになるとは。


 どういう仕組みで再現しているのかは分からないが、どう見ても7インチ程の小形タブレットにしか見えない端末だが、どうやら中身はデータベースのようだな。


「うむ、確かにレニー・ヴァイオレット、3級ハンター、搭乗機がカイザーとなっているな。

 失礼な態度を取って済まなかったね。盗難した軍機と思われる機兵に乗っている者が居ると噂になっていてね、盗難されたという事実は無いが、念のため調査をしていたわけさ」


「あー、カイザーって軍機によく似てるからな」


「君が乗っているのもよく似ているけどね。まあ、カイザーと違いトリバ、ルナーサ両軍の意匠とは違うからレニー君の様に疑われることは少ないかも知れないが、君たちの機兵は目立つ。くれぐれも問題は起こさぬよう、何かあれば直ぐ我らに相談するようにな」


 ふう、特に何も起きなかった……。もしかしたらデータベースを見て「ヒッグ・ギッガを倒したのは君達だったのか!?」から「実は困っていることがあってな、詳しくはギルドで……」なんて強制イベントでも始まるのかと思ったけど、流石にあの情報はまだ届いていないようだな。


 そう言うイベントは3機揃ってから改めてお願いしたい。

 


 

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