9 非日常からの刺客②
僕のスレイアントのマニュピレータには、巨大な銃が握られている。
実は最初に襲いかかってきたスレイアントに馬乗りになった時に、銃を奪い取っておいたのだ。
僕の手元から放たれる軌道は、二機目の敵に命中。しかし、――――敵機は未だ健在。
新手の敵は、肩にシールドのような追加装甲を装備していた。
(こいつはできる……)
僕の直感は、当たっていた。
肩にシールドを搭載した新手は、テイルブースターを吹かせて僕に一直線に向かってくる。その途中、自身が持ってた銃を味方機にパス。
僕のスレイアントに新手が近接戦闘を挑み、それをもう一機が銃を撃って援護する。
新手は追加装甲で防御力が高い。そして当然ながら、間合いを詰めた闘いでは、防御力の高い方が有利になる。
それに搭乗者の技量も平均以上だ。
(面倒だな……)
僕は機体の四肢を操り、新手の攻撃を凌いでいく。僕の機体のマニュピレータには、戦闘用のダガーが握られている。さっきあの下手くそ機から奪っておいた。
新手の敵も同じような近接武装で、僕の機体を執拗に狙う。
硬軟織り交ぜた畳みかけは、搭乗者が熟練の腕であることを証明する。
その上、後方から敵の味方機が援護射撃してくるのだ。
何度も言うが、スレイアント同士の戦闘は、数的有利が如実に出る。
僕はどう見ても劣勢、敗北、死を避けられない状況だ。
――――が、僕は、この戦況で、敵の戦術的な欠陥を見出した。
見れば瞭然としているのだが、敵は味方同士の距離が離れすぎている。
これでは数的有利を存分に生かし切っているとは言えない。
連携が取れていないからだ。
事実、あの後方の下手くそな敵機が放つ援護射撃は、味方と呼吸が取れておらず、攪乱にもなっていない。ときどき追加装甲の新手に当たりそうになっている。
新手のスレイアントに乗る熟練兵が、わざと遠くに追いやったのではないかとすら思えてしまう。
なら、各個撃破の隙はある!
僕は、スレイアントのテイルブースターを全力で吹かせた。
一般的に、民生用のスレイアントの方がブースターの出力は高い。
重い荷物を運搬したりするからだ。
新手の敵機に向かって、真っすぐに飛ぶ。
敵がすれ違いざまを狙い戦闘用ダガーを繰り出す。
――――だが、僕の狙いは目の前の敵ではなかった。
狙いは、新手の脇にマウントされてあったスレイアント用の拳銃……。
それを奪い、そして、遠方から下手くそな援護射撃を撃つ敵味方機へ向かって、全速力で接近し、乱射。
敵機が機能停止。
もう一機が襲いかかってきた。
僕は今度こそ振り返って、
新手の熟練兵が乗る機体を、ぐさりと、戦闘用ダガーで刺した。
死亡フラグ。
何とか、折れたかな。