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7 機動兵器(スレイアント)、襲来

彼女も僕と同じ系、か。

 拳を交えたときも、彼女だけ技のキレが他二人とは違い、洗練されていた。



「あの……」


「ええっと……」



 どことなく似たものを感じて、傍目から見れば何にも会話になっていないにもかかわらず、僕はなんとなく落ち着いたのだった。



 それでも銀髪美女はモジモジ俯きながら、言葉を紡ごうとしている。


「……私は……」



 グーキュルル。



 お腹の、音。



 花多葉さんのじゃないだろう。

 彼女のお腹の尾とはこんなものじゃ済まなうわ何をするやめっ



 ふと視線を前にやると、銀髪美少女が服の裾をつかんで激しく俯いている。

 この音の主は彼女のお腹、だろう。


「聞ーちゃった、聞ーちゃった!セシルのお腹、聞いちゃった!」



 花多葉さんがセシルのほっぺをつんつんしながら言う。



 鬼畜やめーい!

 銀髪美少女セシルの首の角度がますます下方修正されてるじゃあないかッ!


 しかしそんな鬼畜花多葉さんもまたかわいいッ!

 僕は知らないがあばたもえくぼになるドルヲタの心理とはかくなるものかッ!


「あかり……」


「えへへ、ごめんごめん!でも、これでおあいこだね!」


 そうだ、セシルも花多葉さんのお腹の音を聞いているんだ。

 無論、セシルがBBFにいるのは、ただそれだけが理由ではないだろう。

 その理由が弱みとかそんなのではなさそうだというのは、セシルが花多葉さんに見せる笑顔を見ればはっきりと分かった。



「ところで皆、おつとめご苦労様!お腹すいたよねー?」


 花多葉さんがみんなに問う。

 どことなく同意を前提にした質問なのは気のせいか……。


 すると岩本卓雄が手を上げて


「そりゃもうペコペコですよ!」


 ゴロゴロゴロ……とお腹を鳴らして同意する。


「だよねー!あ、隼人はやとは?いらないのー?」


 続いて花多葉さんは金髪ヤンキー風の男に声をかける。


「勝手にしろ……」


「あっそ!てりやきキャベツベーコンエッグバーガーキングサイズいらないんだね!あーっそ!」


 聞くだけで胸焼けしそうなメニューだ。


「ポテトで十分だ」


 隼人と呼ばれた金髪の男は、素っ気なく返した。




「セシルは……聞かなくてもいいね!」


「ちょ、ちょっとあかり……」


「大丈夫、大丈夫!わたしももーすぐお腹鳴りそうだから!」



『あかりさん!!ワタシにも買ってきてくださいね!?」


「はいはい真鈴!忘れてないからね!」



 ……教室とは違い、本当に今の花多葉さんは生き生きとしている。


 そんな彼女は、運転席に手を伸ばした。

 

 そういえば運転手の気配がしないが、この車どうやって動いていたのだろうか。


 ポチポチっと、彼女は何かを操作している。


「何してるんだ?」


「目的地の設定よ。この車、自動操縦なの」


 何と。

 すごいな。


「そういえば……まだ、聞いてなかったよね」


「ん、何を」


「士昏くんがBBFに入ってくれるのかどうか」


「それは……」


「いやとは言わせないんだからね!」



 彼女の謎の自信。

 やばい、何かあるぞこれは。


 彼女は次に言葉でなく。


 数枚の写真を見せた。



 彼女自身が映ってる写真。

 僕は、見覚えがあった。



「それは……」


「うふふ。士昏くんが普段教室で小説読むふりしてこっそり盗み見てた私の写真」



 …………全て筒抜けかァァァァァーーーー!


 一番の、一番の、俺の弱みがッッ!




「でもね、私、この事実を校内にバラすぞ!とかそういう、安直な脅しを使いたくないんだ」


 次に彼女は、恐ろしい言葉をつむぐ。



「……だってこんなに私のこと思ってくれてる士昏くんが、この誘いを断るわけない!って信じてるからね」


 

 ぐわああああああああ!


 よりにもよって!


 僕の純情を人質に取られたッ!


「お返事は?♪」



 花多葉さんがにっこり笑顔で聞いてくる。


 なんて……なんて……!



 なんてかわいいんだ……!



「僕は……」





 ドンドンドンドンドンドンドン…………!




 今度の音は、腹の音なんかではなかった。



 遠い特殊作戦群むかしに、聞き馴染んだ音だった。



「<<蟻>>でござるよ!うわああ、ナマで見るのは初めてでござるなああ!」



 岩本卓雄が興奮して叫んでいた。


 そう。この車の背後に、全長7メートルほどの巨大な蟻が、ぴったりと張り付いていたのだ。



 もちろんただの蟻じゃない。


『スレイアント』。


 そう呼ばれる、有人機動兵器ロボットであった。


「興奮してる場合かよ、何で殺人蟻スレイアントが俺たちの車追っかけて来てるんだ……つかどっから湧いてきた」


 金髪ヤンキー、隼人が言った。



 僕、いや、


 ――――俺だけは、その理由を知っていた。



 僕は即座に、自動操縦でマッ〇へ向かう車の運転席に飛び移った。


「ちょっと、士昏くん……!?」


「悪いけど行先変更だ。あとマニュアルで運転する」




「<<蟻>>が銃座をこっちに向けてるでござる!」



 後部座席から岩本の声が上がった。


 直後。



 僕たちの乗る車が、殺意に彩られた衝撃と爆風に舐られた。




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