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4 特殊作戦群(けもの)の血


 聞いた、わね……?



 一体なんのことだ?


 それよりも何よりも、今、目の前にいるのは。



 普段誰もが知る、花多葉あかりではなかった。



 普段教室での彼女と今目の前にいる彼女とのあまりのギャップに硬直していたら、花多葉さんの姿がいつの間にか消えていた。


 何、どこに行った……!?


 代わりに僕の脇にフッと這い寄ってきたのは、黒の目出し帽、迷彩服、防弾チョッキの男、二人。

 

 ――――どう見ても現代日本に釣り合わない二人に、僕はどこかで懐かしさを感じた。




「一緒に来て欲しい」


 藪から棒に、目出し帽の男が言う。


 

「その前に自己紹介くらいほしいな。知らない人にはついて行くな、って親から教えられててね」



 自分で言って気が付いた。僕には親がいない。親が誰かも忘れた僕が、こんなセリフを言うなんて我ながら滑稽だ。


 

「着いてきてくれたら話す」


 一人が言う。


 昔のクセで、僕は相手をプロファイリングする。

 

 声が若い。……高校生くらいか?



 彼らは花多葉さんが姿をくらました後に現れた。


 ということは、花多葉さんと何らかの関係がある、と見て間違いない。



 花多葉さんは一体何と関わっているのか?


 それとも彼らが花多葉さんと関わっているのか?


 

 思考しながら、僕は答えた。


「話さないのなら着いて行く義理はない」


「そうか」



 ――――男の一人が、僕に向かって腕を突き出した。




 害意ある突き出されたその腕を、僕は反射的に掴んで頭突きをかます。


 もう一人も左側から襲いかかってきた。手にはダガーを模したゴム製ナイフ。


 僕はこれも捉え相手の腹に蹴りを入れた。うめく敵を、さらに背中に肘撃ちを入れて行動不能にする。



 ――――特殊作戦群むかしの血が、騒いだ。


 


 右斜め後ろから殺気。

 殺気というには仰々しいが、それに似た、研ぎ澄まされた敵意。


 フックの要領で、敵の腕が飛んできた。


 さっきの二人よりも鋭い攻撃。だが、僕はそれも捉え頭突きで鎮めようと……気づいたのは、その瞬間ときだった。



 ニット帽から伸びる長い白髪。掴んで分かった腕の感触。

 彼女は女性だ。

 フェイスゴーグルで顔は見えないが、間違いない。



 そこで躊躇ったのが間違いだった。


 彼女は、反対の拳で勢い良く、



 僕の顎を揺らした。



 グワン、と僕の体は揺れ、そのままガタリ、と膝を着き崩れる。



 僕を跪かせた女が、ニット帽とフェイスゴーグルを外して素顔を見せた。


 

 確かに日本人なのだろうが、どことなく東欧系の儚い美しさを持った顔だ。

 花多葉さんとは違った雰囲気を持つ美人。正直、これもこれでタイプだ。

 年は僕と変わらないくらいか。

 


 その女性は儚げで美しい顔を、


「いつの、間に、攻撃していた……?」



 ――――苦悶に歪め、右膝から崩れ落ちた。



 僕もただ、黙って殴られたわけではない。


 彼女に顎を揺らされたとき、僕は彼女の軸足に下段蹴り(インロー)を入れたのだ。



 ローキックは痺れるように熱く重い痛みを与える。特殊部隊でそれなりの訓練を積んだ僕なら、素人をインローの一撃で鎮めることも可能だ。


 僕にインローを入れられた女性の刺客は、そのまま膝を落としたまま行動不能になる。

 強めに入れたから、しばらく行動不能になるだろう。




 朦朧とする意識。

 敵は全員片付けたが、僕自身も無事ではない。



 そこに。

 後ろから、聞き馴染んだ声をかけられた。



「士昏くん……お願い、わたしと来て」



 切なく哀願する声。

 紛うことなき花多葉さんの声だ。

 いつの間に背後に来ていたのか、というのは置いといて。



 普段なら萌え度120%に聞こえるのだろうが、今ここではそうではなかった。


 なぜなら彼女は。


 僕の後頭部に、黒光りする拳銃を押し当てていたからだ。



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