二度目の出会い
青い空に雲はなく晴れている。冷たい朝の空気が襟元から流れ込む。
昨日彼女に会った道を通る。溶け残った雪の上に猫はもういない。
《二度目の出会い》
学校が終わると、足早にバイト先へ向かった。
駅近くの賑わった商店街の一角に、古い一軒屋を改造した本屋がある。
砂糖屋は小さな個人経営の本屋で、高校1の夏からもう1年は働いている。
ガラス扉を押し開けると喫茶スペースが広がり、
常連が2〜3人本を読みながらコーヒーを飲んでいた。
奥の5畳に、本棚が押しやられたように少し並んでいる。
店長は本屋だと言い続けるが、近所の人は皆、喫茶店だと思っている。
レジ奥の倉庫からケラケラした声が聞こえた。
狭い部屋の中には店長と見知らぬ少女が一人いる。
店長はまだ50代だが髪の毛は真っ白で、厚い眼鏡をかけている。
細身の身体にパッチワーク柄のカラフルなセーターを着てニコニコしていた。
昨日と同じ服だ。
手前で背を向けている少女は、肩までの黒髪に黒いタートルネック。
膝までのスカートもタイツも全て黒色で、
カラフルな店長と並ぶとその黒が異様に感じた。
少女が振り返り、微笑む。
「初めまして、谷さん。私、十朱ゆいです。」
彼女だった。あの雪の中、猫の死骸の側にずっと立っていた少女だった。
そろそろ春ですねー。この話しは暫く冬です。