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ブライト・ディステニー  作者: 沢木 たいよう
4/4

兵舎帰宅

 俺達が主に住んでいるのは警衛団の兵舎だ。

 兵舎は階級別で分かれており、ここには俺達の様な入って1、2年の新米兵士達が肩を寄り添って住んでいる。(警衛団団長はアーク・コンチュの本部に住んでいたりする。すげー豪華らしい)

 俺達の兵舎の正式名称は「警衛団第二支部警衛兵士用特別兵舎」という長ったらしい名前が付いている。(まぁ、長いので兵士達は第二兵舎という風に呼んでいる)

 特別兵舎という割には、特に特別な所は何もないので至って普通の兵舎である。

 場所は、天の首都「アーク・コンチュ」から見て東の方角で町を3つ挟んだところにある「ハクロード」という町にある。

 「ハクロード」は首都ほど発展している訳でもなく、農村と言うわけでもない、平凡な町だ。

 まぁ、町を3つ挟んだと言っても、各町にある「テレポリクス」という瞬間移動システムがあるため遠いという実感がない。


 そんなわけで俺達は我が家、第二兵舎に3人で帰って来たのであった。

 男子寮女子寮と別れているためロココとはすぐに別れた。(別れ際までうるさかった…)

 ここで皆が思うのがキルソの事だろう。少女と同じ部屋というのは、俺は別にいいとして、周りの野郎共の目が有るため堂々と入るわけにはいかない。

 そんな時のために(知らんけど)キルソにはある能力がある。


「ちょい待っといてな」


「ん」


 まず俺1人で堂々と部屋に戻る→キルソに魔力波(魔力での振動)を飛ばす→キルソが気付く→テレポートする

 といった風に、キルソはいざとなれば俺(聖剣キルソ本体?)の元へと飛べる。


「んー」と魔力波を飛ばすと、すぐに「シュッ…」とキルソが俺の前に現れた。


「キルソォ~何か今日、すんごい疲れたんだけど」


 俺はそう言ってベットにボフッっと横たわる。


「知らんわ貴様の体調なんて」


 キルソはソファに座り、何かしらのゲーム機片手に適当に俺の言葉を受け流す。


「つれねーなーほら、こっちこいよギューってしてやるぞ。甘えたいお年頃だろ?」


 ほれほれと掛け布団をめくる俺。

 もちろん冗談。


「お年頃と言ったが、キルソは外見こそ少女だが中身は少女ではないぞ?」


 なんと…

 ここでキルソのロリババア疑惑が浮上する事になるだなんて…

 まぁここで女性に年齢を聞くのも失礼というものなので敢えて聞かない。だから疑惑は払拭しない。


コンコンコン


 誰かがドアをノックしてきた。


「合言葉をどうぞ」


 暇だったのでふざけてみた。


「あ、愛言葉だなんて… そ、そんな… 急過ぎます、…よ」


「おお、ロココかしばらく見ねぇうちに大きくなったな」


 ドアを開けると何故か赤面しているロココがそこにいた。面白いのでふざけ文句を重ねる。


「い、いや…今さっき会ったばかりじゃないですか」


 普通にツッコミされた。


「何じろじろ見てるんですか。私の脅威の発育スピードでも、たったの数分でおっぱいは大きくなりませんよ?」


 自身の豊満な胸を抱くロココ。まだかすかに謎の紅潮が頬に残っている。


「いや、そんな見てねえよ」


「今、そんなにって言いましたし、そもそも私がココロを読めるロココだということをお忘れですか?」


 忘れてはないけど…


「ま、まぁ?先輩がどうしても私でエロい事をしたいって言うのなら…け、けけけ、検討しますけど…」


 可愛らしい猫耳まで赤くなるロココ。


「そんなつもりは、ねぇんだけど…」


「あっそうですか。さいですか…」


 今のでYesするとエロ同人誌みたいになっちゃうからな…


「ところで何か用事が合ったんじゃねえか?女子寮から遥々男子寮に来たんだし」


 一応、行き来自由だが精神的に壁がある。(ソースは俺)俺は女子寮に入ったことすらない。女子の怖さは訓練兵団時代に嫌と言う程味わった。


「いやね?先輩。私が部屋に帰って、先輩を夜襲うためにお風呂に入ろうとしたんですが」


「……」


 襲うため…


「先輩がキルソちゃんに向かってセクハラ発言をしたので、これはまずい!と思いまして、おっぱいだけ洗ってからすっとんで来ました」


「……」


 おっぱいだけ洗ってって…

 やたらと自身の豊満な胸を張って強調してくるロココだった。

 まぁ、こいつがファッションビッチだという事は知っているので受け流す。


「冗談ですよ、冗談。本当は帰って来て疲れたのでベッドで、ウニャーとごろごろしていたら、セクハラ発言が聞こえたもので…」


「え?女子寮まで聞こえた?そんなはず無いけど」


「どこにいたって、先輩の事なら大体分かります。私やユートさんのおっぱいでエロい妄想してんのも丸分かりですよ?」


「なっ…そんなこと…そのような無粋なことは拙者しないでござるよ?」


「どうしたんですか?その喋り方。普通にキモいですよ?」


 動揺を露骨に出してしまった…


「そだそだ。言ってなかったと思うけど俺、一週間後に仕事入ったから」


「へーどんな仕事です?やっぱ死ぬ系?」


 そう言いながら、キルソとは別のソファに座るロココ。

 この部屋は机1つ、一人用ソファ1つ、多人用ソファ1つ(キルソが1人で独占中)、その他本棚などしかない。つまり、俺の座るところは無くなった。座るつもりないけど。

 ってか、死ぬ系ってなんだ!


「そうだけど…その言い方だと俺には死ぬ位の仕事しかしないみたいじゃないか」


「え?そうなんじゃないですか?」


 キョトンと首をかしげながら続ける。


「確かー『ハイリスクハイリターンが俺のモットーだぜ!』って、言ってませんでしたっけ?」


 「だぜ!」は言ってない。


「そうでしたっけ?でも仕事は死ぬ系しかないじゃないですか。私と初めて会った時も、目に前で私を庇って死んだじゃないですか」


 そだっけ?


「そうですよ!覚えてないんですか!」


……


「もう喋らなくてもいいっすか…」


「いやいや、言い訳ないじゃないっすか。先輩の声が寂しくなります」


 さいですかー


「で、どこに行くんです?仕事」


 無駄に倒置法を使うロココさん。

 いるよね、たまに……はっ!


「大焦熱地獄」


 ギョッとしている。

 してやったり。


「はいい?そんな所に何しに行くんですか!?やっぱり死にに行くんですか?」


 行かねぇよ!

 ん?

 行くのかな?


「極力、死ぬつもりはないけどね…」


「ふむ」


 謎の納得をするロココ。

 俺はまだ自殺志願の不死身ではない。不死身はその内、自殺志願者になるらしい。誰でも出来ない事はしたくなるものだ。それと同じ原理?なんか違う気がする。

 なるつもりは毛頭ないけど。


「ロココも聞いてると思うが、地獄である事件が起きている」


「天国の使者が行方不明にになってるって話ですね。一応、小耳には挟んでいます」


 ふむふむと頷きながら言うロココ。

 その隣では、キルソがニヤニヤ(不気味)しながらゲームのボタンを連打しまくってる。


「ふわわぁ~ という事で俺はもう眠なければならない。おやすみ~」


「何が『という事で』なんですか!?しかもまだ8時ですよ。まだまだ夜は長いぜぇい!もっと、いちゃいちゃしたいです!」


 いちゃいちゃしていたつもりは毛頭ない。


「そっすか…おやすみ~ キルソもゲームばっかしてねぇで早めに寝ろよ~」


「んー」


 そう言って俺は布団をかぶる。

 実は全く眠くない。

 俺が編み出した対、強喋獣ロココ対策だ。


「先輩。これだけアピールしてるのにすぐ忘れるんじゃないですよ。眠くないのはバレバレです。ロココは相手のココロを読めるココロなんですよ!」


 えっへん!と、その豊満な胸を張るロココ。


「もう、どっちが本物か分からなくなりつつあるが、『ココロを読めるロココ』だろ?」


 お分かり頂けただろうか?この巧妙な噛みを。『あいつ』と『あいす』より分かりにくい…

 あと、自分の名前って普通、間違えるか?


「そんなにバカにしなくてもいいじゃないですか!たまには人だって間違いますよー!」


 目を><にして可愛く抗議するロココさん。まぁ、ロココは人でもないし(亜人)、亜人でもない(天使)


「という訳で俺は寝る。キルソもゲームをほどほどにして寝るよー」


「んーんん!?んなっ!う~はっ!ふふふ…っ!…(`*´)~がぁ!グハッ…」


 グググ~とにらめつけるキルソ。


「貴様が…貴様が喋りかれるから負けたぁ!図ったな!?」


 なんと!


「今のは俺は悪くない!八つ当たりだろ!や、やめて!剣は出さないで剣は」


 八つ当たりで剣を出すのかよ…

 怖えぇ……


「もう…おやすみ!」


 俺はもう自暴自棄気味に布団をガバッとかぶる。


「せぇ~んぱぁ~い。もう、先輩が眠くないのは周知の事実なんですよー」


 と言ってソファを立ち、こちらに近付いて来る気配…


「とーいうことはー。まーさーかー」


 俺のベッドの横まで来て布団に手を掛けるロココ。

 こ、これはヤバくない?


「夜這いして欲しいんですか!」


 バサッ!と布団を剥ぐ混乱気味のロココさん。


「こ、混乱なんかしてねぇっすよ~私は先輩の事を敬愛し過ぎている、只の後輩ちゃんっすよ~」


「…………」


 混乱してらっしゃる。

 語尾の敬語すら怪しい…

 おや?ニヤニヤしながら部屋を出ていくキルソ。手には消えかけの魔法陣。犯人はキルソか…ゲームの恨みきつ過ぎるだろ!


 ヤバイ!

 ロココが布団に潜り込んできた。


「んー先輩のいいにおいがしますぅ~」


 仰向けで寝ている俺の右腕をギューっとしてくるロココ後輩。

 ヤバイ…


「せぇんぱぁ~い♪」


 顔まで近づけてきたぁ!?

 吐息がもろにかかって…

 しかも我が右腕がロココの谷間に陥没しておる。

 やばい…

 意識が…とろんとしてきた…自制が効かな…くなる…


~はいっ!ボーナスおしまい~

(念話…だと?)


 !

 ロココの混乱が解けた。


「な、なわわ…わ…わたくしはぁ!…えっと…先輩と一緒のベッド!記憶も少しの間ないし…私のた…谷間に先輩の腕!?ま、まさかぁ…先輩と…私…」


 猫耳の先まで真っ赤にして、ボスッ!と効果音が出そうになるまで照れてる。

 何か照れが伝染してきてこちらまで恥ずかしくなってくる…


「いや…ロココが思ってる程の事はやってないと…思うぞ?」


「そ、うですか…なんだかとても疲れたので今日はもう、自分の部屋に帰りますね…?」


 いそいそとベッドから出るロココ。


「お、おう。んじゃまた明日な。おやすみ」


「はい。おやすみです」


 そう言ってロココは女子寮にある自分の部屋に帰っていった。


 そのロココと入れ違いに入って来た少女に対して俺は思いっきりメンチを切る。


「どう事だ?キルソや」


「どうもこうもないけど…黙らせるには持ってこいかなーって思ってねー」


 えっへん!とロココと対称的な薄い胸を張るキルソ。


「お前なぁ!」


「キルソの最善策に何か文句でも!?」


「ぐぬぬぅー」


「ぐぬぬぅー」


 この日は、一晩中キルソとの平行線口喧嘩もどき口論をしていた。



 そんな風に平和な時はあっという間に過ぎ、物語は1週間後、作戦実行2時間前まで飛ぶ。

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