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ブライト・ディステニー  作者: 沢木 たいよう
3/4

帰路

 武器屋「Bクト」を出た俺は、キルソを探す事にした。


 表通りの方へ行くと言っていたが、どの表通りかも言ってないし、そもそも表通りにすらいない気もする。それくらいノー天気な奴なのだ、キルソは。

 のでので、俺は電話という素晴らしい機能に「キルソ捜索」を任せることにした。


 ルルル~


もう、慣れたお馴染みのメロディーち共に、キルソが電話に出るのを待つ。

 

 2分後。


 出ねぇ…

 そういやキルソは、電話が掛かっていても、平気で「めんどいから」って理由で電話に出ない奴だった…

 何の為に、携帯持ってんだよ…


 こうなってはもう、あの手を使うしか無い…


 電話よりもこっちの方が断然「キルソ捜索」には、役に立つのだけれど。

 俺はグッと体の中心辺りに力を込める。そうして魔力を起こす。

 そして、フッと力を抜き魔力を四方に向けて放出する。

 すると、俺も理論は知らないが、共鳴みたいなのが起き、キルソの位置が自然と分かる様になる。

 う~んと、位置は…前方右斜め上。


 上!?


どうやら、目の前にある30階建ての高層ビルの中の様だ。

 しかも、そのビルはこの町、即ち天国の首都「アーク・コンチュ」の中でも有名なビルの1つだった。

 当然、一般人の俺が入った事のある店の類いではない。

 まったく、何をしているんだ…

 まぁ、取りあえずは入ってみる事にした。

 中は意外と広く、なんでも上に行けば行く程、高級店になっていくシステムになっている。

 

 5階でまた、探知を使ってみる。

 まだまだまだ上…


 10階でまた、探知を使ってみる。

 まだまだ上。


 15階でまた探知を使ってみる。

 まだ上。


 はぁ…

 だいぶんヤバい所になってきた…

 だって、もう周り、下界で言う「三つ星レストラン」みたいな感じになっちゃってるもん…

 分かるかなぁ~ こういう所だと、無性に緊張しちゃうこの感じ。


 胃がきゅっとなる。


 15階でまだ上って…

 多分、20以上だと、精神が付いていけない領域になると思う。

 俺達は、霊体みたいな物なのだけれど…


 幸いな事にキルソは19階にいてくれた(?)。

 だが、超高級なカフェで超大盛り(キルソの上半身クラスの大きさ…)のパフェに食らいついていた。

 しかも、よりによって、キルソの向かいに座り、ニコニコ微笑んでいる女は誰であろう、ユートリスだ。

 ユートリスはさっき会ったときとは違い、兵団の服は着ておらず、白いワンピースに深い蒼のカーデガンを羽織っている。場の雰囲気に合わせた清楚な格好だ。


 ……


 正直に言うと、可愛い…

 元々、黒髪ロング巨乳美少女という外見を持ち合わせてはいるのだ。それが、兵団の制服から解き放たれ、清楚な服に身を包んで、可愛いく無い訳が無い…つまりは、必然的に可愛くなる。

 卑怯だ。

 まぁ、どれ程可愛くたって、本人には言うつもりは無い。

 そんなことは置いておいて、問題はキルソが何故、ユートリスと一緒に楽しくお茶をしているのか、という事だ。

 何だか、伝承にあるトロールみたいだ…

 もてなして、ニコニコ微笑んで、最後にはパァクッっていうのを、どうしても連想してしまう。


 そんな風に、キルソとユートリスの謎の共演に対して色々な感慨に浸っている時はいきなり、幕を迎えた。

 ユートリスに気付かれた。


 「やぁ、ライ。1時間ぶり。元気にしてた?」


 「元気って、1時間でそんなに変わるもんか?あと、1時間も経ってねぇし」


 おやおや?

 いつも、とってもお喋りなユートリスが今回はあんまし、喋っていない、だと?あと、心なしか少し声のトーンが低い気もする。

 何があったぁ!?


「どうした?いつもみたく、たくさん喋ら無いじゃないか?何かあった?」


 気になるので、一応は聞いてみた。


 「ああ、見てくれ、この美味しそうなキル…パフェを。そしてそれを一生懸命に食べるキルソちゃんを…可愛いし、何より微笑ましい…食べちゃいたい位だぁ~」


 やっぱり、こいつトロールじゃね?

 キルソの事、美味しそうって言いかけたし。

 そんな夢の瞬間をぶち壊しに、俺は胃をきゅっとしてまでして、ここまで来たのだ。


 「おい、キルソ。迎えに来たぞ。とっととそれを食って、この悪趣味な奴からは逃げようぜ」


 「悪趣味な奴とはなんだ。悪趣味な奴とは!せめて、可愛い美少女と言えぇ!というか、どうだ?久々に私服を来てみたのだが…」


 せめて、美少女って…とうとう自分で言いやがった。

 あと、上目使いで可愛い子ぶるな。

 そんな風にしたって…本音なんか…


 「うん…とっても似合ってて、か、可愛い…」


 ユートリスがニヤッとする。


 はっ!しまったぁ。本音がつ、つい…

 クソッ!美少女ってだけで卑怯だぞぉ!

 反則だろ、「美少女の上目使い」なんて。ある種の必殺技じゃん。

 今となってはレアなサキュバスとかの上目使いとかって、どうなのかな?やっぱし、キュン死するレベル?

 なんて考えている間にもユートリスの顔はニヤニヤが深まっていた。


 「そうなのかぁ~僕もとうとうそういう目で見られる様になったかぁ~今夜にでも、誘われちゃったりするのかなぁ~ す、少し緊張するよ…」


「な、何にもしねぇよ」


 何だかボソッとユートリスが「つまんないのー」と残念そうに呟いた気もするが、ほおっておく。

 

 そうこうしている内に、キルソが半身台パフェを食べ尽くした。


 「ふぅ…」


 満足げなため息。


 「お前、どれだけ食ってんだよ。半身台パフェって、漫画かよ」


 「ん?貴様も美味しい物はどれだけでも食えるだろ?貴様は毎日の様に可愛い女の子食べてるじゃないか~ そういう事でどっこいどっこい」


「おいぃぃぃいいぃ!止めろ!止めるんだ!ユートリスが結構真面目に引いてる。性格どうこうっていう前に女の子に引かれるのはいやだぁ!あと、そんな事、してないからね?」


 ユートリスは顔を赤らめながら、両腕でその豊満な胸を抱いている。

 ちょっと、可愛い仕草だ。


 一方、キルソは「してやったり」という顔でこちらを見下している。

 こちらはこちらで可愛いのだけれど、周囲の客の目が痛い…俺にズブズブ差さってくる…


 「はいっ!閑話休題。ところで何でユートリスはここにいるんだ?」


 「いや、閑話休題してはならないと思う。ライ。君は毎晩そんなふしだらな事をしておいて、僕達と吊るんでいたのか?このへんた…」


 「だぁっからぁ、ちぃがぁあっう!!ほら、キルソも何か弁解しろってぇ!」


 う¨…

 周りの目が更に痛くなった…豆腐メンタルの俺には大分しんどい…


 「弁解かぁ…そういえば昨日、キルソが寝ているベットの中に入り込んできた」


 「嘘ばっか言うなぁ~!!」


 「あ、あのぉ…すみません。これ以上声をあらげるのであれば店の外でぇ…」


 「「…はい……」」


 こんな風に、新人店員により本当に閑話休題した。

 店員さん、ごめんなさい。


  * * * * *


「話戻すけど、キルソ、お前何で電話出ねぇんだ?」


 そう、そうだった。

 俺はお喋りをしに来たんじゃ無かった。キルソを捜しに来たんだった。

 俺が電話の事を改めて聞いてみると、キルソはいつものとぼけた顔でこう言った。


 「何で、出なくちゃいけないの?」


 「…はぁ……」


 やっぱし、そうでした。電話のしてる時に考えていた通りの答えだった…

 こんな風に以心伝心は要らないんだよな。どうせ出来るんなら、キルソにも是非、俺の心を読んで欲しい…


 「しかも、そのけいたい?だっけ。それもう、無くしたし」


 「も、もうお前には何も買い与えない…」


 「そ、そんなぁ…これからキルソはどうやって生きていけば…」


 瞳をうるうるさせながら2人が一生懸命にこちらを見ている。

 いや、流石に必要最低限の物ぐらいは買うよ?

 って、あれ?


 2(・・)!?


 1人は当然キルソ。

 ユートリスはしばらく俺達の様子(主にキルソ)を見て(観察?)いたが、俺が「そういや、お前仕事は?休憩時間だろ?もう、過ぎてんじゃね?」と、言うと顔を青ざめて、思い出した様にどっかに電話を掛けに走って行った。

 つまり、ここにはいない。


 というか、読者に分かりやすい様に解説していたが、分かるじゃん。俺は見ただけで。知り合いなんだし。


 「せえぇんぱいっ!それは酷いです!最低限の物ぐらい買うって言ったって、相手は女の子なんですよ!もっと、甘やかした方がいいに決まっています!目の前の、この後輩ちゃんにもっ!」


 「はいはい可愛い可愛い。というか俺の心を読むな」


 今さっき、キルソに俺の心を読んで欲しいと言っていた俺だが、こいつの場合は違い、一方的な以心伝心だ。

 何でも俺の心だけ、分かるみたいだ…一応ストーカーではない。

 この自称「後輩ちゃん」は、その通り俺の兵団の後輩。名前はエリー・ロココ。今は兵団の制服を自己流で改造した物を着ており、元の制服と比べると色々と危うい。

 スカート丈は規定では膝上10cm以下に対し、膝上15cm以上のミニスカと化しているし、軽くフリルまで付いている。袖はタンクトップで織り付けており、肩まで見えている。胸元に至っては、ボタンを1つ、2つ外して、俺みたいなロココよりも背が高い奴からは胸元がチラチラ見えて、目の行き場に困る事となっている。

 本人いわく「夏っぽい気候だし、暑いからっ!」という事みたいだ。

 極めつけは、ロココの頭に付いているショートの髪と同じ明るい黄色の「猫耳」だ。勿論、付けている訳ではなく、同じ色の尻尾もロココには生えている。

 つまり、容姿だけは可愛い。

 容姿だけは。


 ユートリスがいなくなって、静かになったかと思えば、直ぐコレだ。

 うん。うるさい。


 「ねぇ、先輩。わたしも仕事で近くまで来たんで、先輩の気配がする方に来てみたんですが何ですか、ここ。来るまでに何度ひやひやしたことか…胃がキュウゥッとしますよ!」


 ふむ。お前もか。

 ユートリスやキルソが普通に入ってるから、俺の感性の方がおかしいのかと思っていたところだ。ナイス。


 「何がナイスですか。本当に大丈夫何ですか?先輩、お金持ちって訳でも無いでしょ?」


 「そんなにヒソヒソ話さなくていいよ。俺はキルソを捜しに来ただけ。会計は全部、俺の同僚のユートリスが持っててくれている。キルソが今食べた「半身台パフェ」もユートリスの財布からだ」


 ん?

 瞳をキラキラさせながら俺を見つめられても…


 「せ、せんぱ…い…」


 くっ…

 ユートリス程では無いにしろ、その胸のボタンを1つ外した…くらいじゃ…

 俺は…ぉれは…


「っくあぁ!ダメなもんは駄目だ!今月は金を使いすぎた!」


 うる目でもう1つのぼ、ボタンだと…

 それと、エリーの少し赤らめた顔と相まって…

 相まって…


 「ぐはぁ…!分かった分かった。もうやめろ。今度収入が入ったらな」


 ロココの顔がパァっと輝いた。分かりやすい奴だ。

 まぁ、どうせその頃にはこんな口約束なんて忘れてるだろうしな。


 「忘れませんよ?」


 「あっ…」


 心を読まれた。


 「それじゃ、そろそろ…あっ…」


 今度はロココが何かに気付いた様だ。


 「せ、せんぱい。わたし、店の外で待ってますね。キルソちゃん、行こっ」


 「あ…そっか…うん分かった…行こう…」


 「ごめんね、先輩。また今度!」


 「ちょっ…何?」


 ロココが舌をちろっと出し、店の外へかけていった。


 何だろう?

 何で2人とも…


 「あっ…」


 くそっ…

ユートリスの野郎、やりやがった…


 伝票、ここにあんじゃねぇか。

 俺も心を読めるようになりたい…


 金額は…はっ!


 流石は19階…

 今月は超貧乏生活になんじゃん…

 次会ったら覚えとけよ…



 そんなこんなで、ようやく兵舎への帰路に付くことが出来た俺だった。 

まだ、兵舎にまで帰る帰路にすら、付いてませんね…

 もう少ししたら帰路に付くとおもいます…

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