あなたの世界を知りたい
「すごくいい人たちばかりですね」
翌日、いつものカフェで諒太さんと会うことになった。平日の午後二時は、丁度お昼時を過ぎて空いている。この時間が一番好きだ。
「そうだろ。なんてったって半分は俺が選んだんだから」
諒太さんは自信満々だ。こんな人だから、みんながついてこれるんだろう。
「誰かに囲まれている状況で、そんな場所で安心できるってなかなかできないですよ」
羨ましい。黙っている諒太さんを不審に思い、じっと見つめていたけれど、諒太さんはしばらくどこか一点を見つめていた。
「千佳ちゃん、千佳ちゃんは普段どんなことしてるの?」
諒太さんは、一瞬真剣な表情で何か言おうとしていたけれど、すぐにいつもの表情に戻った。
「あたしは、あたしはただ」
息を殺している。学校でも、家でも、息を殺して過ごしている。
「いえ、特別言えるようなことはしていません」
胸が締め付けられた気がした。
「そっか、まあじゃあさ、これからはカフェ開業に向けて新しいことがたくさんできるね」
諒太さんに、言いたい。
あたしの全てを吐き出したい。
苦しみを吐き出したい。
だけどこの人に言ってどうなる?離れてしまうかもしれない。だって、彼はただカフェ開業を手伝う人材が欲しかっただけなのだから。
「千佳ちゃん、今回はカフェ開業で集まってもらったけど、俺は皆で色んなことをしたいと思ってる。サークルじゃないけどさ、皆仲間だから色んなこと共有したいんだ」
この人、すごいな。
「あたし、家に帰るのが嫌で、毎日あのカフェにいました。ただ時間を潰したくて、だからあの日も勉強しているフリをしていただけで、すみません」
「ああ、うん。知ってたよ」
彼はあたしの言葉に気まずそうに答えた。
「俺、ずっと見てたから。だから君に声をかけたんだ」
わからない。どうしてなの?
「あたしは、きっとすぐ、いらなくなると思います」
きっとすぐ邪魔になる。あたしはいつだって弾かれる。だから、もうわかっていたから、誰かと共にいることを止めた。そういう運命だから。
「千佳ちゃん、何があったのか知らないけれど、君がそういう考えだからそうなるんだよ」
諒太さんは真剣な顔で、強く言ってくる。少し怒っているようにも見える。
「過去に何かあって、それが辛いのはわかる。だからってそうならない未来を信じなくてどうする? 俺たちは君をいらないなんて言わない。俺が選んだんだ。君と一緒に楽しいことをしていきたいって選んだんだ! だからそんなこと言うんじゃねえ!」
周りのお客さんたちが、何事かとあたしたちを見つめている。それに気づいたらしく、諒太さんは俯いてしまった。
こんなに感情的に、あたしのために・・・。
「どうして? どうしてそんな風に思えるの? どうしてあたしなんかのためにそんなこと言えるんですか? 諒太さんは何がしたいんですか? わからない。あたしには理解できません」
俯いていた諒太さんは、あたしの言葉を聞いてまっすぐに見つめてくれた。
「そうか。なら、俺たちと一緒にいろ」