carom * 唄
たとえばそれは、誰かのタメだったのかもしれない。
熱気のせいか、さっきまで卒業ライブで貸し切っていたスタジオは少しだけ息苦しかった。
先程からのマサトとの言い合いにもうんざりして、ウザッたくて、逃げ出した。アヤノ先輩が来てちょうどマサトを捕まえてくれたおかげで、誰もついてはこなかった。
誰もいない楽屋がいくつか並ぶ狭い廊下、少し暗い照明が照らし出す。既にラストライブは終わった、後は飲んだり食べたりの宴会だ、興味ない。
それよりも、だ。誰かが唄っている。控え目なギターを奏でながら。
キレイな声だ、こんな奴今まで知らなかったな。惹かれるままに音がもれる一室を覗いた。元からきちんと閉まっていなかったドアの隙間から、バレねぇだろうな、なんて少しドキドキした。
キレイな声、メロディはどこか落ち着いたやさしい響き、なんだ、アイツか。
ドキドキする心臓でリズムを取る、それからアイツが唄い終わるまで、私は楽屋の外でその曲に耳をすませていた。
***
夢を見たんだ 人形の
ぼくらはいつしか 見えなくなる
その前にひとつ 話し掛けてやらないか
いつだって 待ってんだ
はちきれそうな孤独抱えて
さあ騒ごうぜ 月が満ちるまで
ぼくらは いつだって 夢みがち
あの子にも おすそ分け
目を閉じたら 唄いだすから
少し泣いて 自転車とばそう
風が強い 景色が吹っ飛んでく
弾けとんだ 水分子
置いてった 声も
今あるものを 抱き締めてやれ
さあ騒ごうぜ この夜が明けるまで
ぼくらは いつだって 夢みがち
待ってんだって
目を閉じたら 唄いだすから
ほら 待ってんだって
あの子にも おすそ分け
目を閉じて 唄いだすから
ぼくらは いつだってそう
いつだって 唄ってる
ひしめきあう ガラクタ
忘れられた人形劇
終わる前に ひとつ 変わったこと
わからないまま
いつまでも 待っている




