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短編集<そこから物語は生まれる>

実録?老いるということ

作者: papiko

 僕は今毎週、病院へ通っている。精神疾患からのリハビリのためだ。田舎だから交通手段で一番便利なのは自家用車だけれど、僕は薬との兼ね合いで自主的にバスを使う。そんな僕がバス停で見聞きした。老人たちの話をしよう。


ケース1

 バス停で喫煙する老女二人。

「だいたいさ、煙草のほとんどが税金なのよね」

「そうねぇ」

「あたしら、年金減らされてんのに高額納税者よね」

「まあ、そうねぇ」

「まったく、こんなに税金はらってんのに、吸える場所がないってどういうことよ。腹立つわ」


 僕は唖然とする。僕も喫煙者だが、バス停の近くにはスーパーがあって、その入り口付近に喫煙場所がもうけてあるのだ。バス停の目と鼻の先にきちんと灰皿が置いてある。けれど、彼女たちはバス停の椅子に座り、先の会話である。


(あんたらが、そうやって身勝手やるからだろうに……)


自分たちで喫煙場所を狭めている愚かさに気が付かない。なんとも言えない哀れな老女たち。あなたたちが現在の日本をつくったのですねと僕は心からお悔やみを言いたい気分だった。


ケース2

 いつものようにバス停のベンチはおばあ様方でいっぱいだった。そしていつものごとく、買い物袋が席を占拠していた。僕の目の前で、知人同士の老女たちがおしゃべりをはじめた。

「足がいたくてね。本当にこまっちゃうわ」

「本当よね。膝なんてしょっちゅう痛むわ。あんた、今日病院だったの?」

「そうなのよ。薬ももらってるけど、痛くてね」


 僕は二人を見てなぜだろうと思う。膝が痛いという老女は立ったまま、大変よねと答えている老女はベンチに腰掛け荷物もベンチの上。その荷物を下ろして、座らせてやればよかろうにと思う僕。そして、ちょっと荷物どけて座らせてと言わない立ったままの老女。知り合いで、今、まさに会話しているのに。どちらも行動しない。なんという現象だろう。聞いて行動することの可能な話。言ってお願いすれば問題ない話。かみ合っているようでまったくかみ合ってない!

 そうか!あなたたちだったんですね。日本語が通じない上司を量産したのは!!と僕は思った。


ケース3

 いつものバス停、いつもの光景。違ったのはバス停でタクシーを止めようとするおじいさん。手をあげてもタクシーはまったく止まる気配がない。理由は簡単だ。すべて乗客を乗せているからだ。

「なかなか止まってくれんね」

「そうやね」

「お客さんのっとたよ」

 おじいさんの周りにいた数人の老女が、なぜかしらとおじいさんに同調している。


 僕はなぜ誰もタクシー乗り場がすぐそばにあることを教えないのだろうと疑問に思っていた。一台、二台、三台、四台……ああ、また止まらないわねなんて言ってるそこのおばあちゃん!知らないの?本当にしらないの。すぐ近くにタクシー乗り場あるって。誰か知ってるだろう。誰一人知らないのか!!

 僕は思わず、おじいさんに声をかけた。

「タクシー乗り場はあちらですよ」

「ああ、あっちかね。こりゃすまんね。はじめてきたもんでな。ありがとね」

 そういって片足をひきずって去って行った……。その後ろ姿を僕が眺めていると老女たちは言った。

「ああ、そうよ。あっちよね。知らんかったんやね。あの人」

 なんですって!!

 そこなの!!

 突っ込むとこ!!

 見てわからないものは聞いてもわからない……。あなたたちは状況判断という脳みそをどこに落としたのですか?


 僕は老いるのが恐ろしくなりました。こんなにも道徳も思いやりも真心も、年齢とともにどこかにおきざりにしていくのかと思うと……僕が子供のころのお年寄りというのは、もっと節度や想像力やおもいやりを持っていた気がしますが、気のせいだったのでしょうか?

 いや、おそらく僕がたまたま普通でない老人たちにであったにそういありませぬ。

 多くのお年寄りはきっと、きっと……。


『次のニュースは特集です。保育園と周辺住民の間で子供たちの声がうるさいという訴えがありました。訴えたのは老人会で……』


 寛大さまでもが!!

 いったい、どこで落としてきたんですか!!おじいちゃん、おばあちゃん!!




あなたの周りにいませんよね。何か人として落としまくってる老人なんて!!

たまたま、ですよね。この人々は特異なんですよね!!

誰かそうだといってくれ!

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