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グレーワールド~僕の戦場~  作者: 皆既月食 雪男
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プロローグ そして閃光

 うたた寝。まどろみの中、闇の中に意識が落ちていく。

 しかし、闇に落ちるように思うのは、目を閉じるからであって、本当に闇に落ちていくわけではない。意識がクローズするだけだ。

 でももしそれが、現代で解明されている部分のみ、知識上そう教えられているだけで、意識は本当はどこか遠くへ飛んでゆくのかもしれないし、こっちの世界がいわゆる『夢』と呼ばれている世界、実は別世界での自分がみている『夢』の世界の可能性だってある。

 だってリアル、リアルと言うけれど、現実世界のほうが不条理が多過ぎる。いわゆる非現実の世界のほうが、余程ルールが徹底されていて、そのルールに乗っ取って行動する分には不条理は少なく、快適だ。と俺は思う。

 もちろん非現実世界だって、多少の不条理は発生するが、現実の世界ほどではない。

 どうして大人っていう生き物は、当たり前に不条理を受け入れ、それを俺たちにも押し付けてくるんだろうか?

 まるで、不条理を受け付けない俺たちが、融通が利かなくて悪いみたいに言うけど、学校で徹底的にルールを仕込んでおいて、社会に出たら突然不条理万歳主義とは。

 俺、なんかおかしなこと考えてる?ねぇ皆はどうなのさ。


 新之助が目を覚ますと、校舎二階西側にある理科準備室は真っ暗だった。正確には夜になっていて、月明かりの中、目を覚ましたわけだったが。

 なんでこんな場所で目を覚ましたのか新之助は思い出せないでいた。

 目をこすり、首を回す。

 机に突っ伏したまま寝ていたせいか首が痛い。

 月明かりが、黒い板を張った机に窓枠の影をつくる。

 机の少し奥の方に置いてある紙袋が目に入る。

 開けてみると、小さなカードと一緒に手作りと思われるクッキーが入っていた。

 告白と、その添え物。

 新之助は基本、誰が作ったのかわからない手作りと思われる食い物は、生理的に受け付けにくく食わないようにしていたが、腹が減っては頭も働かない。仕方なく洗ったビーカーに水を汲み、添えられていたカードを見ながら、クッキーを口に入れ、水で流し込む。

 ありきたりの告白の文章に特に感じることもなく、カードは制服のズボンポケットにねじ込んだ。クッキーが入っていた袋は細かく裂いてゴミ箱へ。プレゼントをくれた相手に対して、そのくらいの心配りをしておくべきだというのは、新之助の信条だった。

 寺島新之助(てらじましんのすけ)、十七歳。性別、男。県でもっとも大学進学率の高い高校の二年生で、某有名大学進学は、すでにほぼ確定していた。でもそれは決して生まれつき頭が良いからではなく、新之助の努力の賜物だった。努力なしに手に入れられたものは、背の高さと、親譲りの整った顔立ちだった。

 だから、モテた。

 高校生の恋愛の多くは、パラメーター的に言えば、顔が良くて、背が高くて、やさしくて、あとはちょっと勉強もできればモテになり、その反対は、非モテになるわけで、そこのところは新之助もよくわかっていて、自分の世界観の俺に対しての告白に、いちいち本気で取り合っていなかった。

(本当の俺を知っていて、好きになってくれているわけではない)

 新之助の恋愛は長続きしたことはなかった。

 その理由は、特別、新之助に非があった訳ではなかった。王子様だと思っていた男の子は、実はごく普通の努力家の顔が良い男の子で、あまり要領は良くなく、その上お金も持っていなかったというだけのことだった。

 もちろん、出会ってすぐにお互いに強く惹かれあい、そのまま結婚した、従姉妹(いとこ)のねーちゃんのようなこともあるのだろう。しかしそれはごくまれな事例であることも、新之助には十分にわかっていた。

(非モテからすれば、俺なんて目の敵なんだろうけど、別に恋愛興味無いし、興味ないと、面倒なだけだし。キスとかセックスとか責任問題に発展することはもっと面度臭い)

 ぼんやり中庭の樹を見ながら、そんなことを新之助は考えていた。

(しかし、うちの学校も適当だな…まだ校舎の中に生徒が残っているのに施錠かよ。真っ暗だぜ)

 それから夜間はセキュリティシステムのセムコが起動していて、下手に動き回ると警備員の皆様をお呼び立てしてしまうことを思い出した。

「どうしたものか…」

 時計を見ると時刻は夜の九時。

 新之助の両親は、本日は揃って夜勤だから、本来なら入れ違いになるはずだった。

(っていうか、告白しに来たなら起こしてくれよな、えーと藍璃(あいり)ちゃん)

 くしゃくしゃになったカードを広げながら、新之助は大きなため息をついた。


 理科準備室、隣室の理科室の三分の一くらいしかスペースはなく、要するに物置になっていて、理科室へ通じる扉が一つ、廊下へ直接出る扉がちょうど新之助の正面にあった。

 どちらの扉にも、すりガラスが立った時に顔の位置にくるようにはめ込まれている。

 廊下側の扉が新之助の目に付いた。

 なぜなら、小さい光の玉が動いたように見えたからだ。

(警備員が回っていんのか?)

 しかしその光の玉は、やがてはっきりと見えるようになり、こちらにゆらゆらと近づきながら、少しずつ大きくなってゆく。

 警備員が巡回しているのならば、ちょっと怒られるかもしれないが、帰るチャンスだと思い、新之助は思い切って扉を開こうとノブに手をかけた。………(セムコしてんのに警備員が見て回るか!?)

 光の玉はどんどん大きくなり、近づいてくる。

 扉を開けるか否か。

 単純な好奇心も新之助にはあった。

 もし警備員でないのならば、一体何の光なのか?という。

 今は廊下がいっぱいの光で満ちている。背後の窓を見なければ夜とは思えない明るさだ。

 恐い…という思いよりも、好奇心が勝った。

 好奇心は猫を殺す。そんなことわざが頭の中をよぎったが、もう止められなかった。

 扉のノブを捻る。

 細く、ゆっくりと扉を開く。

(まぶしい…)

 目も開けられない程の光が、細く開いた扉の隙間から差し込んできた、瞬間。

 閃光が新之助を貫いた。

 ………目を開くと、そこは廃屋と言ってもいい…いや、廃屋だろう。

 割れた窓、ヒビだらけのコンクリートの建物。

 その中央に一人ぽつんと新之助は立っていた。

 握っていたはずの扉のノブも、扉も、背後の窓も無い。

 おかげで外の様子は良く見えたが、夜でもないが、昼でもない。

 一番似ているとしたら、それは雨が降る前の曇りの感じだった。

 空気もどこか黴臭いような、湿った紙の臭いがする。

「これは…ここは、どこだ?」

どうも、いかがでございましたでしょうか?

今日、日曜日から金曜日まで、0時に毎日投稿させていただきますので、

よろしかったら続きもご覧になっていただけますと、嬉しいことこの上

ないです。ではまた。

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