3/3
3話 王都親衛隊
どうしてそんなに哀しいのかと誰かに聞かれた。
それはとても、答えようのない問いだった。なにせ自分でもよくわからないのだから。
目に映るすべてが哀しく思えた。気が付いたら水の中にいるような景色しかなかった。
信じていたものとか、愛すべきものとか、それなりに持っていたのだと、後から思った。
今思えば、かけがえのない時間だった。
いつからか人を避けるようになっていた。
兄のように慕っていた人、母や父、やさしく笑いかけてくれていたはずのたくさんの人たちが、ある日突然消えた。
住む場所もなく、話し相手もなく、ただ町中の人たちから投げつけられる冷たい視線を感じていた。
自分が生まれてからの10年間を過ごした町。逃げるようにして、その町を捨てた。
あれから12年、いろいろな街を旅して歩いたが、その街の土だけはもう二度と踏もうとは思わなかった。