第三章 噂?
高校1年の時から高校3年まで2人は一緒のクラスだった。
「緋鶴ちゃんっ!」
真央は何を思ってか緋鶴のことをちゃん付けで呼ぶ。
「ねぇ、緋鶴ちゃん。さっきのテストわかんなかったよぉ。」
涙目でトテトテと走り寄ってくる真央を横目で見ながら緋鶴はため息を一つついた。
周りでは
「きゃあ〜!真央君可愛い〜!!」
と女子達は叫ぶ…。
「このクラスはアホばかり揃ってるのか。」
「何?緋鶴ちゃん。」
緋鶴の独り言は真央にしか聞こえない。
「はぁ…。」
ため息また一つ。
「真央さぁ。」
「何?」
「声変わりとかしなかったの?」
「………うー…うん?しなかったかも?」
「疑問系かよ。」
確かに真央の声はあまりにも高い為声変わりしていないと言った方が良いかもしれない。
というか、この容姿で声が低くなったりしたら少し怖い。
「緋鶴ちゃんは?」
「え?」
真央の突然の問いかけに疑問符を浮かべる緋鶴。
「だから声変わり。」
「女は声変わりしねーよ。」
緋鶴の冷たく言い放った言葉に真央は一瞬固まる。
「緋鶴ちゃん…ひどい!そんな言い方しなくても!
いくら僕が今まで女の子も声変わりするかと思ってたからって!!
そんなふうに言わなくてもいいじゃない!!」
えーんと無く素振りを見せる真央。
「泣くなっての!お前はガキか!!しかもそれくらいわかってろ!!」
緋鶴はバンと机を叩き、言う。
明らかにおかしな会話である。
「そういえば緋鶴ちゃん。この前男の人と歩いてたんだって?」
「はぁ?」
「も、もしかして彼氏でもできちゃったの??」
あわあわと何故か慌てる真央。
「できるかってのこんな私が。」
「じゃあ何で男の人と歩いてたの?」
「だから何で私が男と歩いてる事になってんだよ。」
緋鶴はわけわからんと言うように腕を組み真央を見つめる。
「だってみんな言ってたよ?かっこいい男の人と緋鶴ちゃんが歩いてたって。
緋鶴ちゃんめちゃめちゃ笑顔だったって。」
「知らねえよそんなん。第一私が男と並んで歩いてたって私も男に見間違えられるのが落ちだぞ。」
「あ、そっか。」
そこで納得するのもどうかと思うが…。
「まぁ、そういうわけだから私じゃねえよそれは。」
「そうだね。」
と言って真央はにこにこと笑顔になり自分の席へと戻っていった。
「何なんだか。」
次の日。
「緋鶴ちゃん!昨日かっこいい男の人と歩いてたって?」
「はぁ?またその話かよ。」
緋鶴は欠伸をすると机に突っ伏した。
「だってだってまたみんな言ってるんだもん。緋鶴ちゃんがかっこいい男の人と歩いてたーって!」
「だから見間違いだろ。」
「でも!」
「おやすみ〜。」
緋鶴はそういうとすぐに寝息を立てて本当に寝てしまった。
「緋鶴ちゃ〜ん。」
真央は困ったような顔をして緋鶴の制服の袖を引っ張る。
そんな真央の手をうざったそうにはらうとまたすぐに寝てしまった。
「もういいよ!緋鶴ちゃんなんか!!」
『緋鶴ちゃんのバカ!』
遠くで聞こえた気がした。