異世界における特異点
よくある転生ものですが、第1話をそのまま使っているので、最後は無理やり締めました。
”時任蓮司”43歳。男性。日本人。趣味は、アニメ、漫画、ゲーム、料理、家庭菜園など、多岐にわたる。恋人はいない。だが、年齢イコールでもない。
そこそこの才能に、そこそこの努力を重ね、人生は、そこそこうまくやっていた。休日出勤やデスマーチがあるようなブラック企業勤務でもない。
彼は、43歳の誕生日に、自宅の火災で、この世を去った。30歳で結婚を考えていた相手がいた。自宅も購入したが、破談となった。そのマイホームが燃え、彼も燃えた。
彼が次に目が覚めた時には、肉体は失われ、意識だけの存在へと昇華していた。その意識の中で、彼は自らの運命を決める。
(俺、死んだのか。死後の世界って、意識あるんだな。)
蓮司は、冷静に考えていた。自宅が火災に遭い、薄れる意識の向こう側で、サイレンの音が聞こえていた記憶がある。
”時任蓮司、今、あなたには、私の声が聞こえいるはずです。あなたには、私の創造した世界で、新たな存在として、生活を営んで欲しい。剣と魔法が存在し、モンスターと呼ばれる生物が地上のいたる場所で生活しています。”
突然、聞こえる声に、蓮司は戸惑う。
(誰だ?)
”誰という質問は適切ではありません。私は、あなたであると言えるし、そうでないとも言える。ただ、私が何者であるかは重要ではありません。あなた方の概念で例えるなら、『神』に近い存在と定義して、問題ありません。時任蓮司、私の世界で生きるか、ここで終わりを迎えるか?あなたの選択を望みます。”
(異世界転生ってやつか。俺は向こうで何をすればいい?)
蓮司は、異世界転生という言葉に、好奇心を隠せなかった。
”私の世界では、特に使命などはありません。あなた方の言う魔王なども存在しません。あなたを世界に送る目的は、世界の変化を観察するためです。自由に生きてください。あなたの選択が世界に影響を与えることを望みます。”
(俺の選択が世界に影響を与えないかもしれないって、ことはないのか?
”その心配はありません。あなたの選択は、必ず世界に影響を与えます。それが小さな水滴であっても、それはやがて、大きなうねりとなり、世界に影響を与えることでしょう。”
(俺が異世界に行ったとして、何か恩恵はあるのか?)
”当然、私の世界に転生して、すぐに消滅されては、困りますので、あなた方の世界で言うスキルを与えます。スキルは、必要な時に、あなたの助けとなるでしょう。しかし、注意してください。あなたに与える能力は、私の世界では、突出した力となります。選択次第で、あなたの望む未来とは、ならないこともあります。選択は慎重にされる事を願います。では、時任蓮司。あなたを世界に迎えます。”
世界は、光に包まれた。背中に地面の冷たさが伝わる。周囲が騒がしい。
「ここが異世界か。」
蓮司は目を開けると、そこは森だった。
「はっ?異世界ものの漫画とかアニメは、よく観たけど、このパターンは、モンスターとかに襲われるやつじゃないか?」
即座に立ち上がり、辺りに目を泳がせる。
「まず選択の余地がないってのは、聞いてないぞ。自由に生きろとは言ってたけど、これは少々ハードモードだろ。」
どうやら、何者かに囲まれているようだ。蓮司の脳内に様々なスキルが浮かんでくる。
「”気配察知”、”危険察知”か。あとはこの状況を打開するスキルは、、、”魔法創造”、”全魔法適性”、”身体強化”。これがスキルか。ちゃんと分かるように言語化されているのは、ありがたい。」
いくつかの能力が脳裏に浮かぶ。数ある能力で、分かりやすいものもあった。
「頭に浮かぶスキルは、使い方まで分かる。まるで努力して、手に入れたみたいに馴染む。敵の数は10前後ってとこか。」
彼の右手から、魔法陣が展開し、無数に燃え上がる炎が、彼を中心に射出される。
「キャインっ」
断末魔と共に、気配が消えた。
「全部やったか?」
気配察知で敵がいないことを確認すると、覗き込む茂みの向こうにオオカミのような獣が横たわる。
「これは、オオカミか?」
その死骸は、黒く焦げていたが、不思議と嫌悪感は無かった。蓮司がそれを見つめると、頭に名前が浮かぶ。
「モンスターは”灰色狼”。鑑定みたいなスキルじゃないのか。なんか想像してたのと違うな。頭に勝手に浮かんでくるって事は、既に記憶として、脳内に保管されている感じか。さて、このモンスターは、素材が売れるみたいだけど、どうやって、持って帰るか。定番のアイテムボックスとかないのか。」
彼がモンスターの死骸を担ごうとする。
「おっ、”異空間収納”。ちゃんとあるじゃないか。」
何も無い空間に、丸い穴が空く。彼は、モンスターを一匹入れた。
「よし、問題ないな。中に入っているものは、リスト化はされない。解体とかもできない。生きたままの生物は、入らない。まぁ、テンプレか。」
すべてのモンスターの収納を終え、蓮司は、空中を見る。
「・・・」
数秒見つめたが、
「ステータスとかは、無いみたいだな。頭に浮かばない事は、出来ないか。まず人里を探さないと、いつまでも森の中ってのは、気が滅入るな。おっ、地図が分かる。”世界地図”か。あっちだな。世界地図の縮尺が分からないあたりが便利なようで、不便だな。最悪、野宿も覚悟するか。」
案の定、村までは、相当な距離があるようで、世界地図で、細かく確認するも、村との距離は縮まらない。蓮司は野宿を余儀なくされた。途中、幾度かモンスターに襲われるが、神(?)が言っていた通り、蓮司はオーバースペックのため、命の危機に瀕することは無かったが、彼は辟易していた。
「”土猪”、”桃兎”、”鎖蛇”。大量にも限度がある。まだこっちに来て、1日も経ってないぞ。いい加減にしてくれ。」
彼は”全魔法適性”の性能を試していた。前世での漫画やアニメで、思い出せるだけの属性で、魔法を試行した結果、”火水風土光闇”の属性が存在する事は分かったが、”雷”は確認できなかった。さらに水と土属性は、質量攻撃のため、相手によっては、威力が十分とは言えなかった。光と闇属性については、”ただ光るだけ”、”目くらまし”程度の魔法だった。
脳内辞書(蓮司が勝手に呼んでいる)によれば、魔法はイメージが重要らしい。
さらに、野営やサバイバルの経験などない彼に、今の環境は過酷なものであった。
太陽があるうちは、気にならなかったが、夕暮れを迎えるころに、気温は震えが止まらないほど、冷たく、森が陽ざしを遮っているせいで、より寒さを感じていた。
枯れ木を集め、火の魔法で焚火を作ったまでは良かったが、寒さ対策には不十分であった。脳内辞書がスキル”熱耐性”が起動したと告げる。
寒さ対策の次は、モンスター対策だ。脳内辞書は”結界:認識阻害”の起動方法を教えてくれた。認識阻害は、何かを物理的に防ぐ効果はないが、結界内にいる間、周囲は気が付かない。というものだった。こうして、彼は、一日目を無事に乗り切れた。
2日目には、さらに問題が増えた。水の確保である。食事は無くても、ある程度生存可能だが、水分が確保できない場合の生存確率は、3日目から、ぐっと下がると、どこかで見たことがあった。
脳内地図(蓮司が勝、、、)によると、一番近くの川は、村の西側にある。小さな泉も存在していない様子。明日で3日目と焚火を見つめていると、脳内辞書から、スキル”生命維持”の発動を教えられた。食料や水分が無くても、一定期間、体調の変化が起こらないらしい。何とも有能なスキルである。だが、限度もあり、スキル効果が切れる前に、栄養と水分を摂取しなければ、大変なことになるらしい。
3日目。今日の森は静かだった。昨日までのモンスターが、嘘のように息を潜めた。
脳内辞書で、色々と探ろうとしたが、何かキーワードがないと、何も教えてくれないようだ。
そして、数日が過ぎ、ついに村が見えてきた。直線距離にして、まだ見える程度。相当な距離があったが、モンスターに襲われることが少なくなってきたおかげで、気持ちに余裕ができていた。
「おっ、あれが村か。この世界は、小さな町や村に入場規制はないが、大都市では入場時に身分証明書を提示するか、通行料を支払うことが一般的か。」
様々なチートスキルを手に入れた時任蓮司は、まだ見ぬ未知の冒険への第一歩を踏み出すのだった。
長編は、後日掲載いたします。




