#02.鬼灯
「…黒魔導士さんですか?」
「え、?」
黒魔導士ってもっとなんか、魔王とかそんな感じじゃなかったっけ?ていうか、ステータスにそれっぽいことも書いていなかったし。
「いや、わ…からないです。」
「申し訳ありませんが、黒魔導士の疑いのある方、公認されていない方を登録することは出来ません。」
「公認?」
「…もしかして、旅とか他の街から来たという感じですか?」
「…まあ。」
嘘はついてない。他の世界から来たのだからほぼ同じだ。
「わかりました、公認黒魔導士に紹介を出します。少々お待ちください。」
受付さんは裏に入っていった。この世界でも黒魔導士がいることがわかったし、肩身の狭い身分の可能性があることもわかった。あと、黒魔導士は外見で判断できる可能性も。周りを見ると黒髪の人も黒目の人もいない。だから、視線を感じたとすると納得できる。あと、絡まれるのも。
重い足音が近づいてくる。しかも複数。
「よお、ねぇちゃん。」
イキった威圧感という感じの声が耳に入ってくる。後ろを振り向くと、確かにガタイはいいが弱いものいじめしかしてなさそうな奴らがいた。これも、偏見か。
「何ですか?」
「何ですかって、w 俺のこと知らないとかあり得ないだろw」
今、そのあり得ないことがあり得てますけどね。と言いたいが争いが起これば面倒だ。なんで、こういうやつってギルドに蔓延って、絡んでくるんだろ。自分の惨めさを広めてるだけなのに。
「生まれも育ちもここじゃないもので。」
「よそ者で黒魔導士とか、あり得ねぇーw」
だから、あり得てるだろうが。あり得ないが口癖レベルで出てきてるぞ。
「…はぁ、」
「あ、お前今、ため息ついたな!?」
ため息ごときで何キレてんだ、こいつ。そういえば、こういう奴らって沸点低すぎたな。何しても地雷だし。
「ホオズキ様!」
受付の人が立ち上がる。入口の方向を見ると、黒髪黒目で身長の高い若い女の人がいた。見た目は魔法使いそのものだ。
「その子かい、黒魔導士の疑いのある子は。」
「はい、条件には該当していたので。」
「国王には?」
「連絡して、先にホウズキ様のもとで匿ってほしいと。」
「ったく、あいつは...」
目の前で会話が交わされる。すると、その人はこちらに目線を向けてきた。
「そうだ、お前の名は?」
「え、あ、えっと...」
名前。そういえば、…前の名前でもいいのか、それとも…
「...なるほど。まあ、詳しい話は私の家でしよう。」
「自己紹介が遅れたな、私の名はホオズキ。」
連れてこられた家は、まさに魔女の家。瓶や薬、なんだかよくわからないが綺麗な石やら、沢山ある。
「ホオズキさんも黒魔導士なんですか?」
「ああ。ありがたいことに国王様から直々に任命されてね。」
そう言うホオズキさんの顔は言ってることと反してすごく険しい。絶対無理やりやらされてるじゃん、これ。
「さてと。お前にはいくつか質問がある。まず、お前はどこから来た。」
「どこ、…あっちの」
「そうではない。どこの世界から来たと聞いている」
「…え、?」
「なんだ、お前は転生者ではないのか?」
「いや、多分、そうですけど。」
「…一から説明する必要があるようだな。」
呆れたような声で言ってくる。
「我ら黒魔導士はみな、転生者だ。」