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エーデルワイス  作者: たまき たまお
第一章  呼ばれる。
5/6

目醒

カナタは夜の静寂に包まれた部屋で、ベッドに体を沈めた。

窓の外では風が梢を揺らし、葉が擦れる音がかすかに聞こえてくる。


ポケットから、あの“欠片”を取り出す。

光も放たず、冷たいだけの塊。それなのに――目が離せなかった。


月明かりの下で見つめていると、まるでそれが“形を変えようとしている”ような錯覚に陥る。

不規則な模様が、見えたり消えたりしている気がする。言葉のような、記号のような……。


「……なんか、気持ち悪いな。なのに……」


なぜか手放したくなかった。

この欠片を拾った瞬間から、自分の中に何かが“起こり始めた”ような感覚がある。


その時――


欠片がかすかに震えた。

いや、震えたように“思えた”だけかもしれない。

だが次の瞬間、カナタの意識の奥底に、ひとつの“地図の断片”のようなイメージが流れ込んできた。


知らない場所。見たことのない地形。巨大な塔。空を裂く影。

そして――欠片と同じ模様を刻んだ“何か”。


「……なんだ、今の」


すぐに消えてしまったその映像に、理由はまったくわからない。

でも、確信だけはあった。

この欠片は“どこかに繋がっている”。

そしてそれは、この世界ではない“どこか”だ。


カナタは欠片を手の中に握りしめた。

熱はないのに、掌がじんわりと痺れていくような感覚が広がっていく。


目を閉じても、さっき見えた“あの景色”は残っていた。

知らない大地、宙に浮かぶ何か、そして――自分の知らないことわり


息を飲んだ。

この世界には、自分の知らない“何か”がある。

そう思った瞬間、胸の奥が、妙に騒がしくなった。


その理由はまだわからない。

でも、それは――どこか懐かしくて、怖くて、けど少しだけ、ワクワクする感覚だった。


……何かが、動き出している。


そんな気がしてならなかった。

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