1
私はよくいる女子高校生、茨 ちゑこ。
今日も憂鬱な登校だ。
「おっはよ!いつもと通り、元気ないねぇ。ちゑ子ちゃん!」
この子は、幼馴染ののり子ちゃん。
この歳になっても、まだちゃん付けで呼び合っている。
「皮肉ばっかだね。いつものように私と正反対って言われるのり子ちゃん」
言い返しておいた。
「そんなこと言って〜。私以外の子と一緒に遊んだこと無いくせにさ。私が遊んであげないと結局誰もいないんだから。ね、ちゑこちゃん?」
う。やっぱりのり子のほうが皮肉が上手い。
「さ、行くよ行くよ。いつも遅刻ギリギリになっちゃうんだから」
そう。ゆっくり話してるけど結構時間ギリギリなのだ。
でもこれが私達の見せ所。
「じゃ、準備いい?」
「OKだよ?ちゑこちゃん」
「じゃあ、いい。それじゃ」
まるで短距離走の選手のように手を地面につけ、すぐ走れるポーズに。
「「よ〜い、」」ねぇ
息を合わせて、言葉を合わせて。
「「スタート!」」
いよいよ始まった。
20☓☓年、☓月☓日。ちゑ子の家前にて、スタートが切られた。
一応ここは虎ノ門ヒルズの前。
ここから、わざわざ埼玉の学校に行くのだ。
……と言っても、歩いては流石に無理なので自転車で行く。
「走りが私達の見せ場なんだけどねぇ」
「どうでもいいでしょ?」
「まあ、ね」
訳わからん話をしながら、虎ノ門を自転車で駆けた。
しばらくして渋滞に巻き込まれてしまった。
「行くよ!」
のり子の声に合わせて、車の間をかき分けていく。
車からめっちゃ怒ってる……っていうおじさんがいたのだが、無視だ。
周りの大人も注意する間もなかっただろう。
私達はグングン前へ行く。
すると、事故現場を目撃してしまった。
嗚呼、これが理由だったのね。
「ここも行くよ!」
「は〜い」
生返事をしながらほぼ車のスピードで走り抜けていく。
「そこのくる、え、ええええええ!そ、そこの自転車止まりなさい」
なんか後ろで覆面パトカーに乗っている警察官が叫んでいる。
多分自転車ってことは、私達なんだろうなぁ……。
冷や汗かきながら、走る。
サイレンも回されてしまった。
「どうする?大人しく捕まる?}
「無理でしょ。早く学校行こ」
そう言って自転車を加速させる。
「ダイジョブ?今回、マジで捕まりそうだけど」
「ま、捕まった時は捕まった時!」
大雑把すぎる……。
「っていうか、私達顔バレないんだから、いいでしょ?多分あっちは二輪走行の物無いと思うし。そこの路地行こ」
「うん」
でも何駄感駄面白いのがこれ。
私も少し、笑えてきた。
路地にスピードを少しも落とさないで私達は入った。警察官たちはイライラした顔をして私達の方を睨んでいた。
何で対策取らないんだろ?
「こっから喋り無し。ゆっくり行っても多分大丈夫。何かあったら言うから」
「うん」
これ、1ヶ月前くらいから始めてるけど、のり子は元々やってたみたい。
だから慣れているんだ。
やがて、埼玉の町並みが見えてきた。
やっぱり東京二十三区とは段違い。
「キレイ……」
思わずうっとりする。
「ねぇあんた、転校して無ければこんな事にならないんだからね?」
「そうだけど……あの時は仕方なかったじゃん」
「まあ、ね」
そう、彼女は言う。
「ほら学校、見えてきたよ?」
よくある、普通の学校。
ここは元苛められっ子がよく来る場所。
だって一番都心に近い学校だから。
「わかってるって」
そう、笑い返す。
「おい!佐々木&茨!一限目は体育だ!早くしないともう一周走らせるぞ!」
体育の先生、村田康範が激おこぷんぷん丸のご様子で。
「ひ〜。怒ってんねぇ」
「そうねぇ」
「喋ってねぇで、早来いや!」
怖。
まあこれが普通。
いつものこと。
あの学校に居たときよりは全然いい。
「勿論体操服、着てるよね?」
「そりゃあね」
私は仕込んでいた体操着を取り出す。
「じゃあ大丈夫だ」
「何が大丈夫だ!早く上着脱いで来い!いつもよりは早いが!」
この教師、怖くないんだよねぇ。
中にある優しさが言葉から出てるから。
「村田センセ〜。今すぐ行きます!」
「早く来いって言ってんだろ!」
「は〜い」
「舐め取んのか!」
怖!
ついにMAX!?
そう思っていると、のり子が三分間走をしながらこちらに来る。
「ちゑ子。私達、だいぶ前から学校着いてるよ?」
「え?」
のり子の様子を見ると、上着は無く、小豆色のダサいジャージを着ていた。
「一限後に、職員室に来てくださいね?」
そこにはムラヤスが!
「はい……」
仕方なく返事をする。
元々自分が悪いんだけど。
「それと、のり子。お前も一緒に来いな?どちらも遅刻常習犯で、警察に毎回電話掛かってるんだからな?」
「え?センセ、知ってたんですか?」
「知ってたも何も、学校中の先生方全員バレとるぞ!家、虎ノ門にあるなら早く行け!」
怖い。
いつにも増して、怖い。
「その前に……早く走れ!ボケモンが!」
「ひぃぃぃぃ」
走る以外の術はなく、グラウンドに走った。




