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 私はよくいる女子高校生、茨 ち()こ。

 今日も憂鬱な登校だ。

「おっはよ!いつもと通り、元気ないねぇ。ちゑ子ちゃん!」

 この子は、幼馴染ののり子ちゃん。

 この歳になっても、まだちゃん付けで呼び合っている。

「皮肉ばっかだね。いつものように私と正反対って言われるのり子ちゃん」

 言い返しておいた。

「そんなこと言って〜。私以外の子と一緒に遊んだこと無いくせにさ。私が遊んであげないと結局誰もいないんだから。ね、ちゑこちゃん?」

 う。やっぱりのり子のほうが皮肉が上手い。

「さ、行くよ行くよ。いつも遅刻ギリギリになっちゃうんだから」

 そう。ゆっくり話してるけど結構時間ギリギリなのだ。

 でもこれが私達の見せ所。

「じゃ、準備いい?」

「OKだよ?ちゑこちゃん」

「じゃあ、いい。それじゃ」

 まるで短距離走の選手のように手を地面につけ、すぐ走れるポーズに。

「「よ〜い、」」ねぇ

 息を合わせて、言葉を合わせて。

「「スタート!」」

 いよいよ始まった。

 20☓☓年、☓月☓日。ちゑ子の家前にて、スタートが切られた。

 一応ここは虎ノ門ヒルズの前。

 ここから、わざわざ埼玉の学校に行くのだ。

 ……と言っても、歩いては流石に無理なので自転車で行く。

「走りが私達の見せ場なんだけどねぇ」

「どうでもいいでしょ?」

「まあ、ね」

 訳わからん話をしながら、虎ノ門を自転車で駆けた。

 しばらくして渋滞に巻き込まれてしまった。

「行くよ!」

 のり子の声に合わせて、車の間をかき分けていく。

 車からめっちゃ怒ってる……っていうおじさんがいたのだが、無視だ。

 周りの大人も注意する間もなかっただろう。

 私達はグングン前へ行く。

 すると、事故現場を目撃してしまった。

 嗚呼、これが理由だったのね。

「ここも行くよ!」

「は〜い」

 生返事をしながらほぼ車のスピードで走り抜けていく。

「そこのくる、え、ええええええ!そ、そこの自転車止まりなさい」

 なんか後ろで覆面パトカーに乗っている警察官が叫んでいる。

 多分自転車ってことは、私達なんだろうなぁ……。

 冷や汗かきながら、走る。

 サイレンも回されてしまった。

「どうする?大人しく捕まる?}

「無理でしょ。早く学校行こ」

 そう言って自転車を加速させる。

「ダイジョブ?今回、マジで捕まりそうだけど」

「ま、捕まった時は捕まった時!」

 大雑把すぎる……。

「っていうか、私達顔バレないんだから、いいでしょ?多分あっちは二輪走行の物無いと思うし。そこの路地行こ」

「うん」

 でも何駄感駄面白いのがこれ。

 私も少し、笑えてきた。

路地にスピードを少しも落とさないで私達は入った。警察官たちはイライラした顔をして私達の方を睨んでいた。

何で対策取らないんだろ?

「こっから喋り無し。ゆっくり行っても多分大丈夫。何かあったら言うから」

「うん」

 これ、1ヶ月前くらいから始めてるけど、のり子は元々やってたみたい。

 だから慣れているんだ。


 やがて、埼玉の町並みが見えてきた。

 やっぱり東京二十三区とは段違い。

「キレイ……」

 思わずうっとりする。

「ねぇあんた、転校して無ければこんな事にならないんだからね?」

「そうだけど……あの時は仕方なかったじゃん」

「まあ、ね」

 そう、彼女は言う。

「ほら学校、見えてきたよ?」

 よくある、普通の学校。

 ここは元苛められっ子がよく来る場所。

 だって一番都心に近い学校だから。

「わかってるって」

 そう、笑い返す。

「おい!佐々木&茨!一限目は体育だ!早くしないともう一周走らせるぞ!」

 体育の先生、村田康範(やすのり)が激おこぷんぷん丸のご様子で。

「ひ〜。怒ってんねぇ」

「そうねぇ」

「喋ってねぇで、(はや)来いや!」

 怖。

 まあこれが普通。

 いつものこと。

 あの学校に居たときよりは全然いい。

「勿論体操服、着てるよね?」

「そりゃあね」

 私は仕込んでいた体操着を取り出す。

「じゃあ大丈夫だ」

「何が大丈夫だ!早く上着脱いで来い!いつもよりは早いが!」

 この教師、怖くないんだよねぇ。

 中にある優しさが言葉から出てるから。

「村田センセ〜。今すぐ行きます!」

「早く来いって言ってんだろ!」

「は〜い」

「舐め取んのか!」

 怖!

 ついにMAX!?

 そう思っていると、のり子が三分間走をしながらこちらに来る。

「ちゑ子。私達、だいぶ前から学校着いてるよ?」

「え?」

 のり子の様子を見ると、上着は無く、小豆色のダサいジャージを着ていた。

「一限後に、職員室に来てくださいね?」

 そこにはムラヤスが!

「はい……」

 仕方なく返事をする。

 元々自分が悪いんだけど。

「それと、のり子。お前も一緒に来いな?どちらも遅刻常習犯で、警察に毎回電話掛かってるんだからな?」

「え?センセ、知ってたんですか?」

「知ってたも何も、学校中の先生方全員バレとるぞ!家、虎ノ門にあるなら早く行け!」

 怖い。

 いつにも増して、怖い。

「その前に……早く走れ!ボケモンが!」

「ひぃぃぃぃ」

 走る以外の(すべ)はなく、グラウンドに走った。

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