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第3話 出発の日

 「それじゃ。父さん、母さん」


 荷物を担ぎ、勇ましく育ったシオスが振り返る。

 後ろには涙ながらに見送る両親がいた。


「本当に立派になったなあ!」

「ええ、応援してるからね!」


 今日は、出発の日。

 

 前世の記憶を思い出してから、数年。

 学園へ行く決心をしたシオスは、いよいよ『グランフィール魔法学園』の受験へ向かう。

 もちろん、隣には相棒も一緒だ。


「きゅるっ!」


 ドランは小さなおててをぐっと握り、気合いを入れる。

 シオスに負けず劣らず、ドランの体も少し成長していた。

 サイズで言えば、まだシオスの上半身程度だが。


「行ってきます」

「きゅるーっ!」

「「気をつけて!」」


 シオスとドランは手を振り、王都行きの馬車に乗り込む。

 両親もハラハラと見守るが、心配はしていない。

 それほどに、二人の姿が立派なものだからだ。


「楽しみだね」

「きゅうっ!」


 走り出した馬車から外を眺め、シオスはつぶやく。


 はじめは、学校という存在が怖かった。

 だが、今ではそんな言葉が出るほどに心を(おど)らせている。

 前世で出来なかった事だと思うと、自然と心が軽くなったからだ。


 ただし、若干の不安はあるようで。


「受験……大丈夫だよね?」

「きゅ、きゅるっ!」


 両親の前では格好をつけたものの、実は合格できるか心配だった。


 それもそのはず、シオスはメインシナリオを知らない。

 ゆえに、どれぐらい強くなれば合格レベルに届くか分かっていなかった。

 そんな不安もあり、一日一日を大切にし、どこまでも修行してきた。


「まあ、なるようになるか……」

「きゅるぅ……」


 だからこそ、シオスは知らない。

 シオスは修行の末、同年代ではすでに最強クラス(・・・・・)にまで至っていることは──。





 数日後。


「うわあ~!」

「きゅる~!」


 いくつかの街を経由し、シオスとドランはようやく王都にたどり着く。

 そこで開口一番に声を上げた。

 周囲の景色が、驚くべきものだったからだ。


「これが王都かあ……」

「きゅるぅ……」


 『アルカディア』の世界観は、中世ファンタジー風。

 前世の“ニホン”に比べれば、テクノロジーは発展していないが、その分ファンタジー感があった。


(前世でも王都は来てないからなあ。想像以上だ!)


 街の至る所で魔法が使われ、人々が往来している。

 規模も、人の数も、小田舎とはまるで違う風景が広がっていた。

 また、その中でも一際目を()く建物がある。


「あそこに行くんだね」

「きゅる!」


 王都の最奥に高くそびえる、巨大な建物。

 『グランフィール魔法学園』だ。


 “山”という漢字のような形。

 歴史を感じさせつつも、最先端風の面影も見える。


 この王都という場所でも目立つ風貌(ふうぼう)が、その威厳(いげん)を物語っていた。


「行こう、ドラン!」

「きゅっるー!」


 シオスとドランは早速駆け出した。






「すごい人だなあ……」


 着いたのは、学園前の入学試験会場。


 王都には驚かされるばかりだが、シオスはここでも息を呑む。

 学園に近づくにつれ、人の数が顕著(けんちょ)に多くなっていたからだ。


(これが全員、受験者なんだ……)


 ここまでの道にも、たくさんの人がいた。

 だが、会場の密集具合はその比ではない。

 それも皆が同年代ぐらいのため、余計にシオスの緊張が高まる。


「次の方どうぞー」

「あ、はい!」

「きゅるっ!」


 しばらく順番を待つと、列の一番前に出た。

 ここで受験手続きをするようだ。


「それでは希望職の記入をお願いします」


 名前等を記した後、受付の人にそう(うなが)される。

 職がここで決定するわけではないが、大まかな目安だろう。


「えーと……」


 シオスはちらりとドランを見ながら、職種を記入する。

 書いたのは『テイマー』。

 ドランと一緒に入学できるのが、このテイマーのみだからだ。


(一緒に強くなろうな)

(きゅっ!)

 

 目で会話しながら、受付の人に記入した紙を返す。


「はい、確かに受け取りました。それではご武運を」

「ありがとうございました」

「きゅいっ」


 受験手続きはこれで完了だ。

 ようやく列から解放され、ほっとしたのも束の間。

 学園前で、ずいっとシオスの前に立つ者が現れた。


「おいおい、こいつテイマーだってよ!」

「ん?」


 見上げた先には、大きな男。

 同年代(にしてはちょっと老けてる)らしい、大斧を背負った男だ。

 シオスは首を傾げながら聞き返す。


「テイマーの何がいけないの?」

「はあ!? そんなことも知らねえのかよ、このド田舎者が!」


 男はニヤリとすると、周りに聞かせるように言い放つ。


「テイマーは不遇職! そんなの常識だろ!」

「え?」


 この世界において、テイマーは“不遇職”。

 シオスは知らなかったが、一般常識のようだ。

 その証拠に、周りにはクスクスと笑っている者も見られる。


 というのも、本来はそもそも魔物をテイムすることすら難しい。

 上位種ならば、なおさらだ。

 シオスとドランは“特別な出会い”を果たしたが、テイマーのほとんどは下位モンスターをテイムしている。


 ゆえに、仕方なくこの道を選ぶ者はいるものの、自らテイマーを希望する者は限りなく少ない。


「そんな小せえ奴に戦闘を任せて(・・・・・・)、強いわけねえだろ!」

「!」


 大きな男は、ドランを見下す。

 ドラゴンにはいくつか種類が存在する。

 ドランの容姿から、最弱の部類『ミニドラゴン』だと決めつけたのだろう。


「分かったら、どけ!」

「うわっ!」

「この“戦士”たるゴルス様の邪魔だ!」


 逆に、戦士は最もメジャーな職業。

 ならば、その分ライバルも多い。

 わざわざ希望するということは、この男──ゴルスは腕っぷしに自信があることの表れだろう。


 受験前に鬱憤(うっぷん)を晴らし、ゴルスは去って行った。


「きゅう……」


 すると、ドランは羽をしゅんとさせる。

 高い知能から、ドランは人間の言葉を理解している。

 自分のせいでシオスが(さげす)まれていることが分かったのだろう。

 

 だが、シオスはそっとドランを()でた。


「気にすることはないよ」

「きゅう?」

「不遇職かもしれないけど、僕には何も関係ない」

 

 真っ直ぐな目は、ドランだけを見つめる。

 その目には、シオスの信念がうかがえた。


「僕はドランと一緒じゃなきゃ嫌だから」

「きゅ……!」

「一緒に見返してやろう」

「きゅう~!」


 飛び込んできたドランを、シオスは抱きしめる。

 シオスは全く落ち込んでいないようだ。

 というのも、ゴルスの言葉には引っ掛かることがあった。


(戦闘を任せてって、どういう意味だろう……?)

 

 この世界のテイマーは、戦闘の才能がない(・・・・・・・・)者が最後に行き着く職業だ。


 しかし、シオスはその事を知らない。

 テイマーについては、ドランと共に独学を積んできたのだ。


 それが示すことは一つ。

 自らも修行を重ねたシオスは、“新しいテイマーの形である”ということ。


「とにかく、僕も共に戦うからね!」

「きゅうっ!」


 そうして、ひと(もん)(ちゃく)があった後。

 いよいよシオスとドランの入学試験が始まる。


 そして──


「……」


 二人の様子を覗く、少女の姿も見られたのだった。


初日の公開はここまでです!

明日2/14からは、毎日19:15を目安に更新していきます!

続きが気になりましたら、ぜひお気に入りをお願いします!

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