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猫と少年

「私、実はとっておきのおまじない知ってるの」

「……………は??」

 不治の病に罹った愛猫を思って泣く男の子に、私は思い切ってそんなことを言ってみた。

「ていうかね…内緒だけど、私、魔法が使えるんだよ!!」

 小学生くらいの子供なら、こんなこと言っても信じてくれるかも??なんて軽く考えて冗談っぽく真実を告げてみたんだけど──

「お姉さん…頭大丈夫??」

「口悪いな、君??」

 急に泣き止んだ男の子は、スンッとした顔になって、辛辣な言葉を投げかけてきた。なんなら本気で心配してくれてる風でもある。いやいや、視線が冷たいよね!?マジで憐れんでない!?

「ええと…う~ん、と、とりあえずさ、ミルちゃんの健康を祈ってあげても良いかな??」

「あ…うん…良いけど……」

 私がそう言うと男の子はハッとしたみたいで、シュンとした様子で私のおまじないを受け入れてくれた。どうも、初対面の人にきつい言い方したと気付いて、ちょっぴり反省したらしい。

 なんだ、素直な良い子じゃん。なんて嬉しくなりつつ、私はいつもの癒しの言葉(現代版)を口にした。

「痛いの痛いの飛んでけ~」

「適当なおまじないだね…」


 やっぱり口悪いな!?



「ありがとね…お姉ちゃん」

 気休めでも嬉しいよ。そう言いたげな顔で、男の子はお礼の言葉を口にした。しかし、次の瞬間

「にゃあ」

「…………えっ!?」

 ケージの中で力なく蹲っていた猫が、シャキッと起き上がるなり元気な声で鳴くと、男の子の顔は驚愕から歓喜の表情へと見る間に変わった。

 もはや鳴き声を上げる元気もなく、ただ、死んでいくしかなかった猫。

 力なくぐったりとして、いつも辛そうにしていた猫が、突然、元気な声をあげたのだ。

「ミル……ミルっ!?」

 男の子の驚きと喜びようは、見ている私をも嬉しくさせるほどだった。

「ありがとう!!ありがとう!!お姉ちゃん!!」

「うんうん。良かったねえ」


 ホント良かった。ちゃんと治せたみたい。


 私は大聖女の目で猫を診て、病気がキレイに消えたことに安堵した。そんな私に男の子はキラキラとした目で感謝を告げ、まだ『信じられない』と言った様子で猫を連れ、家へ向かって小走りに帰っていったのだった。


 そんな男の子の背中を見詰めながら、私は、やっぱりこの力を何かに役立てたいと思った。

でも、周囲に知られないよう、誰にも気付かれぬよう、癒しの力を使う方法が思いつかない。


「でも…どうしたら良いのかな…」


 そうして再び試行錯誤し始めた私に、一筋の光明をもたらしたのは、思いがけない人物だったのである。

 

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