表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

力の使いどころ

 記憶と共に大聖女の力を取り戻した時、私は、世界中の生き物を癒して回りたい、なんてことを考えた。


 いや、だって、せっかく奇跡ともいえる力を使えるようになったんだから、苦しんでる人や生物を助けたいって思うじゃない??

 それで手始めに病気で苦しむ人たちを助けて回ろうかしら??と、近所の病院の位置やらを調べてみたりもしたんだけれど…


 でも、本当にそれは良いことなのか??と、ふと悩んでしまった。

何故??って思うかも知れないが、それにはちゃんとした理由がある。


 もちろん病を癒すのは簡単だ。なにしろ今の私に治せない病はないから。

 でも、そうやってすべての病を癒して回って、世界から病魔を取り除くことが、本当に人類のためになるのか??と考えてしまったのだ。


 いくら大聖女でも、病気や怪我そのものを無くすことは出来ない。

ということは一旦、綺麗に治癒して回っても、新たな病人や怪我人はどんどん生まれてくる。

 今まで無かった病原菌ですら、時折、世界のどこかで発生してたりするんだから、その繰り返しに際限ないのは解ると思う。


 私が生きている間は良いよ?

 どんな病気だって、瀕死の怪我だって、一瞬で治せてしまうからね?

 でも、その後は??

 私が死んでしまった後は、いったい誰が病や怪我を治療するの??


 そう、もちろんそれは、人の医者たちだ。

 

 では、私がすべての人間を治癒してしまったら、患者がいなくなった医者たちはその間、どうやって生活していくのか??


 こう言っては何だけど、患者という収入減がなくなったら、食っていける訳がないよね??


 きっと私が生きている間、医者という職業に就く人間が居なくなってしまうだろう。そうして、せっかくここまで発展してきた高度な医療技術もまた、その間に廃れたり失われたりするのに違いなかった。


 それではダメなのだ。


 私が永遠に生きられでもしない限り──または、私のような聖女が、今後もこの世界に生まれ続ける確証でもない限り、人は自らの手で同族を治癒し続けていかなくてはならないのだ。そして、そのための技術と知識を維持し、未来へつなげ、発展させていかなくてはならないのだから。


 治せるのに治せない。

 そのことにかなりジレンマに陥ったけども、私のこの考えが『間違ってる』と言い切れる人は、きっと、この世界に存在しないはずだ。


 けれど、せめて、手の届く範囲で、この力を生かせないものか??


 そう考えに考えた結果、私は脳を駆使し過ぎてパンクし、とりあえず、勤めている八百屋さんで、野菜や果物の鮮度を保つために聖女の力を使っていた。


 …………え??

 今なんか、ずっこけられた??


 うん。まあ、冷静に考えたら、なぜそうなる??って、自分でも思うけどさ??

 いや、でもね??

 おかげでうちの店、お野菜の鮮度が長持ちするって、近所でなかなかの評判なんだけど。

 ……って、宝の持ち腐れ??

 え、そ、そうかな??やっぱり??

 うーん…

 これでも、めちゃくちゃ真剣に考えた結果なんだけど……ま、まあ、いいや。


 あとは、職場の同僚たちの腰痛や肩こり、勤務中に出来た細かい傷なんかを、こっそり治してまわってる平穏な日々を過ごしてます。

次回更新は8/27 朝8時です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ