あまり人を怒らせすぎるのは良くない
「……はぁ」
――それから数時間後、ユウは牢獄の中で一人ため息を漏らしていた。
(いやー、そりゃまああんなことやっちゃったらこうもなりますよねぇ)
(エルフの国の政治の中枢を担っているらしき王族相手に狼藉を働いたのだからな。むしろ命があって良かったというレベルだ)
ルティシアとエクスの言葉にユウは項垂れる。
「そうなんですけど……言わないでくださいよ」
「……元気出してくだせぇ、ユウの兄貴……」
気が付けば、何故か牢の中にいつぞやのモヒカンが生えて、ユウを慰めてきた。
「さりげなく生えるな出てくんな!今まで人間が足を踏み入れてなかった地域の牢屋に当たり前のようにしれっと出てきていい存在じゃないだろおめーは!!」
ユウはモヒカンを全身全霊の力を込めた脚で踏みつけて地面の中に送り返すと、肩で息をしながら言葉を吐き出す。
「ああもう……なんでこう次から次へとおかしな奴が……。そりゃツッコミだってせざるを得ないじゃないですか……」
(なんか『俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!』って言いたそうな感じですね)
ルティシアのボケにユウはため息を漏らす。
「微妙に今時の若者には分かりづらそうなネタを……」
(大丈夫ですよ、なろうの読者層なんてどうせおっさんばっかりだし、万が一に若年層が呼んでた場合もどうせそのうちリメイクやリマスターが出ますから)
「やめてください!25年経ってもリメイクもリマスターも出てない作品だってあるんですよ!?」
ユウの反応にルティシアは笑う。
(凹みはしてたようですが、まだまだ元気そうですね)
「ええまあ。凹みももちろんあるんですが、なんかこう……ふつふつと怒りがですね……。まともだと思った全裸の弟もあれだし……あんなアホみたいなボケ方は無いじゃん、みたいな怒りがですね……」
ユウはがっくりと項垂れる。そんな気落ちする彼を見かねたルティシアは軽く鼻を鳴らすと声をかける。
(……まあ、あの弟さんのリアクションに物申したくなる気持ちも分からなくはないですけどね)
「でしょう!?」
そんな仕方なしのルティシアのフォローにユウは声を上げる。
「揃いも揃ってボケ倒し体質なエルフと言う種族が悪いんですよ……。あんなボケ方されたら、ツッコミ入れるに決まってるじゃないですか。ましてや俺には今、こんな力があるんですから……」
(……私は別にツッコミのために力を分け与えたわけではないのだが)
「うっ……」
エクスから逆に冷静なツッコミを入れられたユウが、思わず言葉に詰まる。
(……まあまあ。やってしまったことは仕方ないですし、これからのことを考えましょう)
ルティシアのフォローにユウは再びため息を漏らす。
「……ですね」
(どうやら、今すぐに命を取られるというわけでもなさそうですし、ロックさんの方でとりなしてくれるでしょうから何とかなるでしょう)
「あの全裸が?あてになるかな……」
ユウは後頭部を掻く。
(おそらく大丈夫だろう)
(でしょうね。一応あんなんでも世界のこととかは真面目に考えている方な方のようですし)
「?」
エクスの物言いにユウは少々面食らう。
「……真面目?あれが?……いつの間に、奴をそんなに信用するようになったんです?」
(……)
(……)
ユウの疑問に答えようとした場合、彼が睡眠をとっている間にロックがちょっかいをかけに来たことを正直に伝えてなくてはならない。しかし、そうして良いものかどうか悩んだ二人は一瞬黙り込む。
「?」
そんな二人の反応を訝しんだユウは首を傾げる。
「いよーっす!元気してっか?」
――直後、のんきな声と共にロックが牢獄の中に現れる。
「うわっ、出た」
ロックの登場にユウはげんなりとした顔をする。
「うわとはなんだ、うわとは」
そんな反応に対するロックからの抗議の声をユウは適当に受け流す。
(噂をすれば……ってやつですね)
「ああ、俺様が美しいって話で盛り上がってたのか?」
「ああ、ハイハイ。そうですねー」
(まあそんな感じですね)
(多分そんな感じだ)
三人からの雑なリアクションにロックが笑う。
「エクスと女神まですっかり慣れたリアクションするようになったじゃないか」
(連日似たようなやり取りを見せられれば流石にな)
エクスの反応にロックは満足げに頷く。
「そいつは結構」
そのリアクションにルティシアが小さくため息を漏らす。
(なにがどう結構なのやら……で、こんなところまでわざわざどうしたんですか?何か急ぎの要件でも?)
「ま、そんなところだ」
ルティシアに問われたロックは後頭部を掻く。しかし、ユウはそんなロックの反応に構わずふんぞり返る。
「なーにが急ぎの要件だ。どーせ牢屋に入った俺のことからかいに来ただけだろ」
ユウのそんなリアクションを予想していなかったのか、ロックはしばしユウを凝視した後、苦笑する。
「流石にからかい過ぎたか?」
(ええもう。国の重役相手へのツッコミを自制できなくなるほどに)
尋ねられたルティシアがやれやれと言った様子でため息を漏らす。
「そうかそうか。そりゃ悪かったな。まあ、こっからは真面目な話をするからちょいと聞いてくれ」
「……」
ロックの予想外の言葉にユウが目を丸くする。
「どうした?」
ユウの無遠慮な視線にロックが悪戯っぽく笑う。
「謝罪とか出来たのー!?」
「はっはっはっは、ぶっ飛ばすぞこのやろう」
ユウの正直な感想にロックは顔面に笑顔を貼り付けて、笑い声をあげる。
「……」
「……」
――それから、一同はしばし沈黙をする。
(まあ、いい加減話を進めますか)
ルティシアの仕切り直しの言葉にユウは頷く。
「そうだな。それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
それを受けたロックが話題を切り出そうとする。その時……
「――その話、私にも聞かせてもらおうか」
牢獄に入ってきた何者かが二人に声をかけてくる。二人は声の方へと同時に振り向く。
「……貴方は……」
「お、やっぱ来たか」
そして、ユウは驚きの表情を、そしてロックは挑発的な笑みを浮かべる。彼らの視線の先にはホゾマの姿があった。
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