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着地はエレガントに

「おーい、ユウにいちゃーん!アネッサさーん!」

 ユウ達が立ち話をしていると、不意に聞き覚えのある声に呼びかけられる。ユウは声のした方向へと振り向くと、そこにはクルースに率いられたティキ達が手を振りながらこちらへと近づいて来る姿が視界に映った。

「ティキ!」

 ユウが声を上げると、ティキは駆け寄ってくる。

「ユウにいちゃん!アネッサさんと一緒に居たんだね!」

「ああ、うん。まあな」

 ユウがすこし目線をティキから逸らしながら後頭部を掻いていると、追い付いてきたエミリアが口を開く。

「まあ、ユウさん。ご無事でしたから良かったですが……このような事態の時に急にいなくなられては心配をしてしまいます」

「いや、すみません……」

 下手に言い訳をするのも下策と判断したユウは素直に頭を下げる。

「あー……なんだ。すまない。私が無理を言って頼んだんだ。ヴァルクスの操作にはまだまだ慣れていなくてな。戦闘の手伝いを彼にな……」

 そんなユウを不憫に思ったのか、アネッサが助け舟を出す。

「そうでしたか……」

 アネッサの説明にエミリアは納得する。

「ですがお二人とも、今後は気を付けてくださいね?」

「はい」

「すまない」

 二人はエミリアに諭され、深々と頭を下げる。頭を下げながらもアネッサの様子が気になったユウは、彼女の方に目線を向ける。すると、アネッサの方もユウの方を軽く見てから、苦笑交じりのウィンクを浮かべた。

「……」

 ユウも苦笑を浮かべると、頭を上げる。

(ギリギリ嘘は言っていないラインでフォロー入りましたねえ)

 ルティシアが感心する。

(まあ、確かに手伝ってもらいましたもんねえ……お互いに)

 そう言ってユウは先ほどの戦いを思い返す。

(こういうところで咄嗟の機転が利く辺りは流石ですねえ)

 二人でそんなやり取りをしていると、クルースが鼻を鳴らす。

「ふん!まったく下等な人間というものはホウレンソウもちゃんとできんのか……。これで集団行動をしているとはまったく……」

「うわー……ほんと隙あらば種族マウント取ってきやがるなこいつ……」

 ユウがあきれ顔で小さくため息を漏らし、その横でロックが小さく指を鳴らす。直後、クルースの足元から石が飛び出し、すねを直撃する。

「はおあっ!?」

 突然の衝撃と痛みに、クルースの表情が崩れる。

「おら、くだらないこと言ってんじゃねえ。そもそもお前、俺達を迎えに来たんだろ」

 しかし、その直後にダメージを与えた原因がロックであったことを悟ると、クルースの表情が歓喜に染まる。

「ああああああ……ありがとうございます……!なんという尊い痛み……お言葉……」

 顔面を涙と歓喜でぐしゃぐしゃにするクルースにユウは思わず後退る。

「おおい……やべぇよこいつ……。顔面美形なだけに余計おっかねぇよ……」

「ふむ、大した心酔ぶりだな」

 アネッサも同意しつつ感心する。

「とりあえずくだらねえこと言ってねえでさっさと宮殿に行くぞ」

 そう言うとロックは指を鳴らす。

「おわっ!?」

 

 ――直後、ユウ達の身体が強烈な浮遊感に包まれる。しかし、それも束の間。気が付けばユウ達は再び地面に脚をつけていた。

「え……?」

 ユウは思わず戸惑いの声を上げる。だが、何かがおかしい。ユウが改めて周囲を見回すと、風景が先ほどとは異なっている。どうやら一行とゴーレムはいつの間にか巨大な建物の入り口前にいた。

「ここは一体……?」

「ほれ。目的地に着いたぞ」

 ロックがこともなげに言う。どうやら移動魔法を使用したらしい。

「移動魔法使うなら使うで事前に一声かけてくれよ。……つーかこんだけ静かに移動できるんだったらさっきの移動は何だったんだよ……」

「気分」

「回答が雑だなオイ……」

 あまりにも適当なロックの返事にユウは力なく項垂れる。

「それで……ロック様は目的地とおっしゃいましたが、ここは一体どこなのでしょうか?」

 あらためてエミリアが尋ねる。

「エルフの王族の宮殿だ」

 アネッサがその疑問に答える。

「え?これが?」

 チコが驚きの声を上げる。その後ろではティキが怪訝そうな顔をしながら無言で建造物を眺めている。

「どうしたの、ティキ?」

「うーん。こういう感じの建物、最近どこかで見たことがあるような……。それに宮殿というにはなんか建物の雰囲気が違うような……」

 弟の様子がおかしいことに気が付いたエミリアが尋ねると、ティキは首を傾げる。そんなティキの漠然とした疑問にアネッサが問いをぶつける。

「英雄の頂の神殿に似ている……そう思ったんじゃないか?」

「……!ああ、それだ!」

 アネッサの言葉に、ティキは掌を握った拳の底で叩く。その反応を見たアネッサが説明を続ける。

「エルフの宮殿は古代文明の遺跡をそのまま利用している。おそらく英雄の頂の神殿と同種のものなのだろうな。そのために、以前の戦争では古代文明の技術を欲した魔王軍に攻め込まれたことがある」

 それを聞いたユウは腕を組んで頷く。

「なるほどなあ……。しかしアネッサさん、よくそんなことを知っていますね」

「そりゃまあ、攻め込んだ軍団を指揮してたのは魔王軍に所属していたころの私だしな」

「へー、そんなことがあったんですね」

 ユウが再び頷く。

「なるほどー。アネッサさんが……エルフの宮殿を……」

 そのままユウは停止し、考え込む。

「……」


「……」


「えええええええええ!?あんたそんなことしてたの!?」

 ユウは素っ頓狂な声を上げた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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