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たまには真面目に話をすることもある

「ふう、終わった終わった」

 融合を解除し、森の中に降り立ったユウは一人呟く。

「ユウ!」

 そんなユウの近くにヴァルクスを停め、降車しながらアネッサが声をかけてくる。ユウは軽く手を上げてそれに応える。

「アネッサさん」

「今回は苦戦せずに倒せたな」

 ユウは頷く。

「毎回、あれくらい楽に倒せるとありがたいんですがね……」

 ユウは肩をすくめる。


「そう都合のいいことにはならんだろうな」


 そんなユウ達に声をかけてくるものがいた。

「全裸」

「ロック様」

 ユウ達に呼ばれてロックは頷く。

(全裸呼びでいいんですか……)

 ルティシアは困惑するが、それに構うことなくロックは言葉を続ける。

「あの化け物……精霊を乗っ取っていたのだろうが、おそらく支配が不完全で本来の力が出せていなかったんじゃないか?」

「!?」

 ロックの言葉にアネッサが目を見開く。

(やはり気づいていたか)

 一方でエクスが平静なままロックの見立てに同意する。

「まじか……。通りでいつもより余裕だったわけだ……」

 ユウはため息を漏らす。

(精霊は魔術師と契約しなければ実体を持たない存在だ。それを無理矢理侵蝕しようとしたことでドゥーマ細胞側でパワーのロスが生じていたのだろう)

「元から誰かが契約して実体を与えていた精霊を侵蝕していたなら話は別だったかもしれんがな」

 エクスとロックの説明にユウは嘆息する。

「はー……。ちょっとでも状況違ってたらとんでもない強敵と戦う羽目になってたのか」

(そういうことだ。今後もくれぐれも油断はしないことだ)

 ユウについている者達のの会話が聞こえないアネッサは首を傾げている。その傍ら、エクスはユウを宥める。

「わかりました」

「……」

 ユウが返事をしていると、その横でロックが神妙な顔をして考え込む。

「どうしました、ロック様?」

 その様子が気になったアネッサがロックに尋ねる。

「……ああ、いや。おい、すっとこ女神……これが"実験"だった可能性はないか?」

(……あり得ると思います)

「どういうことです?」

 ロックの推論にルティシアが同意したことに驚き、ユウは尋ねる。

(何者かこの森のが結界に干渉した可能性を示唆する痕跡があった……という話は覚えてますね?)

 ユウは今朝方ロックから言われたことを思い出しながら頷く。

(そしてこの森にドゥーマが現れた……。もし、ヴェンフェルトのようなものが私達の行動を先読みし、妨害しようとするならば不完全な状況の手駒を差し向けるでしょうか?)

「たしかに……」

 ユウは腕を組む。その横では、やはりアネッサが説明をして欲しそうな顔をしているが、ユウはそれを一旦置いておく。

(あくまで可能性の一つですが……エルフの結界を利用し、我々から動向を察知されづらい場所で、何らかの実験を行っていた可能も考えられるのでは……?と、彼は懸念しているのです)

「なるほど……。もしかしたらここでもまだ一波乱あるかもしれない……ってことですか……」

 ユウの言葉にロックは頷く。

「そういうことだと。適当に理由つけて里帰りと洒落込んでみたが、思わぬ当たりだったかもしれねえな」

「勘弁してくれ……」

 ロックの神妙な顔での呟きに、ユウは思わずため息を漏らした。


 ――そんなユウ達を遠くの小高い丘の上、木々の間から見つめている黒いローブを纏った男の姿があった。

「やれやれ……まさかこのタイミングであの大魔導士がエージェントと行動を共にした上で介入してくるとはな……。おかげでこちらの予定が台無しだ……」

 そうやって男は一人つぶやく。その声は先日、英雄の頂でユウ達と対峙した男――ヴェンフェルトのものだった。

「しかもあの大魔導士……随分と目端が利く……。逃げるどころか、こちらから様子見をするだけでも動きを察知して来そうじゃ無いか……」

 ヴェンフェルトは自身の髪を強い力でかき乱す。

「仕方ない、しばらくはここで身を隠しつつ様子見だな……。折角面白そうな遺跡も見つけたというのに……」

 ため息を漏らすとヴェンフェルトは、丘から降りて木々の中へと消えていった。


 ――ナルヨーの森の最深部、そこに神殿のような建物があった。先ほどまでユウと行動を共にしていた三つ編みのエルフがその入り口の前に降り立つ。その姿を見た警備のエルフ達が駆け寄る。

「クルース!先ほどすさまじい轟音と揺れがあった!一体何が起きているんだ!?」

 名を呼ばれ、事態について聞かれたエルフ――クルースは神妙な面持ちで警備のエルフ達に告げる。

「そのことについて事件の現場を直接見た。女王様に至急報告したい。通してくれ」

 その言葉を聞いた警備のエルフ達は頷くと道を開ける。それに対してクルースも一礼をすると神殿の中へと入っていた。


「何事ですか?」


 神殿の最奥部、玉座が置かれた間に入ると透き通るような、それでいて威厳に満ちた声が問いかけてくる。その声を聞いたクルースはその場で直立不動になり、声を張り上げる。

「現在進行形で森の入り口付近で異常が発生しております!そして、その事態の対処にロック様が当たられております。事態の詳細について報告をしたく参上しました!」

「……」

 クルースの報告を聞いた女が息を呑む。

「分かりました。まずは状況を聞かせてください」

「はっ!」

 クルースは玉座の方へと歩みを進め、そしてその前で跪く。

「それでは女王キヤノ様!報告させて抱きます!」

 キヤノは頷くと、軽く俯き、小さく呟いた。

「兄様……。今までどこへ……」


 

 

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