サテライトキャノンは無暗に撃ってはいけない
ゴーレムが着地(?)した場所から離れた小高い山の上に、三つ編みエルフに連れられてティキ達が降り立つ。
「とりあえずここなら一旦安心だろう」
三つ編みエルフはそう言うと、他のエルフ達を一瞥する。
「一旦私は女王様にこの事態を報告しに行く。お前たちは、この者達とロック様の戦いの動向を確認し、適宜報告しろ。身の危険が及ぶようだったらここから離脱しても構わん」
「分かりました」
同意を確認した三つ編みエルフは、リーシェルトを睨む。
「おい貴様……くれぐれも余計なことはするなよ?」
「分かってる。それよりも事態は深刻。早く女王様に報告に行った方が良い」
そんな三つ編みエルフの態度もどこ吹く風といった感じでリーシェルトは受け流す。
「ぐぬぬ……」
三つ編みエルフは歯ぎしりをすると、移動魔法を使って再びどこかへと飛び去って行った。
「やれやれ……」
リーシェルトは小さくため息を漏らす。
「見て、あれっ!」
そんなリーシェルトの背後でティキが声を上げる。何事かと思い、リーシェルトが振り向くと、そこには巨人とヴァルクスが空中に舞う姿だった。
「あれは……」
リーシェルトが呟くと同時、ヴァルクスと巨人が目の前で合体し、地上に降り立つ。かつて、英雄の頂でも見せた姿だ。
「まあ、あの姿は……」
エミリアが初めて見るエクスブレイザーの形態に驚く。
「な、なんやあれは……」
「あれが噂に聞く巨人……。しかし、神の戦車と合体するとは……」
チコやアイザインも初めて見るエクスブレイザーに、同様に驚きを隠せないでいた。
(よしっ、やるぞ!)
ユウが戦いのために気合の入った声を上げる。
(ああ、行こう)
そんなユウにエクスが応じる。
「そうだな。それでは早速エクストリームバーストを……」
(駄目です)
そんな二人に続こうとしつつも、頬を赤らめつつ身をくねらせているどこか不審なアネッサの言葉をユウは即座に遮る。
「何故だっ!?」
そんなユウの態度にアネッサは切迫した様子で抗議の声を上げる。
(何故って……だってここ、森の中ですよ?そんなところであんな大爆発する大技なんて使ったら森が燃えちゃいます……。ここ、エルフも住んでるみたいだし、あんまり派手に森を破壊するのは良くないんじゃないですかね……)
「むむむ……。確かに……」
思ったよりも真っ当なユウの反論に、アネッサは渋々同意する。
(分かっていただけて何よりです……)
ユウはため息を漏らす。
「おーいお前ら!いつまでグダグダやってんだ!あっち見ろ、あっち!」
そんなユウ達にロックが遠くから声をかけてくる。
「ん?」
エクスブレイザーはロックの方に目線を向ける。どうやら、ロックは敵のいる方を指さしているらしい。
(あーはいはい、真面目にやりますよ真面目に。ここから)
ユウがそうぼやくとエクスブレイザーは敵の方へと向く。
(げっ……)
そんなエクスブレイザーの視界に最初に移ったのは、敵の攻撃の風の刃だった。
(いったあああああああっ!?)
エクスブレイザーはなすすべなく敵の攻撃を顔面で受け止める。そのままエクスブレイザーは盛大な苦悶の声を漏らしながら、勢いよく吹っ飛んでいった。エクスブレイザーはその勢いよく回転する視界の端で、こちらを見ながら額に手を当てつつ、ため息を漏らしているロックの姿を捉える。
(お、お前にだけはそういう態度取られたくねー!?)
その姿を見たユウが、思わず不満の叫びをあげる。しかしそんな抗議もむなしく、間抜けさと裏腹な、すさまじい地響き音が鳴り響き、エクスブレイザーが大地へと叩きつけられる。
(もう、何をやっているんですか!そういうタイプのボケは私主導の型が基本でしょう!)
(捨ててしまえそんな型!)
ルティシアからの文句にユウは思わず叫びつつ、エクスブレイザーの身体を立ち上がらせる。そして、改めて構えを取る。
(さて……バカやってないでそろそろ行きましょうか。これよりあの敵は『シルフィード・ドゥーマ』と呼称します。迅速に倒しましょう)
(了解です!)
(了解した)
ルティシアの言葉にユウとエクスが応じる。
(……)
そこで、ユウはアネッサからの返事がないことに気が付く。
(アネッサさん?)
ユウが改めてアネッサに呼びかける。
(……まさか)
ユウは恐る恐るヴァルクスの操縦席内を確認する。
「……」
そこには、先ほどの転倒の衝撃でHPが0になり、食いしばりが発動することなく死んでいるアネッサの姿があった。
(……)
予想通りの展開にユウは思わず無言になる。
(ユ、ユウさん……?)
そんなユウにルティシアが恐る恐る声をかける。
(この女戦士はよぉ!?)
ユウが怒りの叫び声をあげる。
(落ち着いてくださいユウさん!とりあえず私の方で蘇生、さくっと蘇生しておきますから!)
一度不意打ちで殴られた後でも騒がしいユウ達の様子を見て、ロックが後頭部を掻く。
「ユウはともかく、女神もエクスもどっちも思った以上にポンコツじゃねえか……。こいつらマジで大丈夫か?」
そんなことを言っていると、シルフィード・ドゥーマが再び風の刃の攻撃を放つ。しかし、今度はエクスブレイザーはその攻撃を手にした剣でかき消す。
「おっ!?」
その様子を見たロックが感嘆の声を上げる。
(流石に、そろそろ真面目にいきますか)
ユウはそう言うと、エクスブレイザーは改めて剣を構える。
「?最初から真面目に行くべきではないのか?」
ルティシアに蘇生されたアネッサが疑問の声を上げる。
(誰のせいでこんなことになったと思ってんだ……)
ユウは盛大にため息を漏らした。
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