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何故踊るんですか?と聞ける素直さは大事

 ユウはエクストラスターのトリガーを押す。その瞬間、けたたましい音楽が鳴り響き始める。

「!?」

 今まで無かった機能が突如として発現し、ユウは困惑する。その横で、アネッサも目を見開いてユウの手元を凝視する。

「ちょっとちょっとちょっと女神様!?エクスさん!?なんですかこれ!?」

 ユウは思わず声を上げる。

(いやー、英雄の頂の戦いの時にユウさんに『融合前の口上とか考えたら?』なんて話をしましたが……よくよく考えると変身アイテムの挙動自体地味かなと思いまして、ちょっと手を加えてみました。どうでしょうか?)

 一切悪気がなさそうなルティシアの言葉にユウはがっくりと項垂れる。

「ユ、ユウ……?大丈夫か?」

 ルティシアの言葉が聞こえていないアネッサは、一体どういったやりとりをしているのか分からないため、首を傾げながらユウの顔を覗き込む。

「だ、大丈夫です」

 ユウは改めてエクストラスターを構えると、再びトリガーを押す。すると、再びエクストラスターけたたましい音楽が鳴り響き始める。それを横目で見たアネッサは一人頷くと、改めてヴァルクスを呼び寄せようとする。


「……ユウ」


 しかし、ちらちらと視界に入るユウの挙動が気にかかり、アネッサはユウに声をかける。


「……なんです?」


 不意に呼び止められて困惑したユウが、アネッサの方をまじまじと見る。

「いや……。その道具を使ってあの巨大な姿になることは分かった。そして、それを使おうとする際、やたら賑やかな音楽が鳴ることもわかった」

「はあ」

 アネッサが何を言わんとしているのか分からず、ユウは間の抜けた声を上げる。

「……で、その音楽が始まった時、君はその音楽に合わせて踊り始めたが……それは意味があるのか?」

「……」

 アネッサの問いにユウは真顔になる。

(変身アイテムから音楽が鳴るなら、それに合わせて踊るのが最近のトレンドだと思ったんだけど……)

 ユウは転生の数日前、休日の朝にテレビをつけたらたまたまやっていたヒーロー番組で、主人公達が変身アイテムから出る音楽に合わせて踊りながら変身をするのを見た事があった。それを思い出しながら踊ってみたが、そういったネタが通じない異世界人にはいささかシュールに見えてしまったのだろうか……などとユウは考える。

(ユウさん、違います)

 そんなユウの考えをルティシアがきっぱりと否定する。

「え、違う……?」

 ユウは困惑しながら疑問の声を上げる。

(……はい。変身アイテムの音楽に合わせて踊る……これはごく一部の特殊な"戦隊"仕草です!我々には合いません!)

「え、そうなんです……?」

 ルティシアの指摘に、ユウは思わず間の抜けた声を上げる。

(……一体何のやり取りをしているんだ……)

 アネッサはユウを何とも言えない表情で観察する。

(とりあえず、音楽は場を盛り上げる程度の賑やかしなんで、気にせず!格好良く!それっぽい感じの口上でも述べて、テンション上がる感じでババーンと融合しちゃいましょう!)

「……分かりました」

 ユウはがっくりと項垂れながら、ルティシアの言葉に従う。

「話は終わったのか?」

 そんなユウの様子を見ていたアネッサが真顔で尋ねてくる。

「ああ、はい」

「……結局、踊る意味はあったのか?」

 アネッサに改めて尋ねられて、ユウは赤面する。

「な、無いです……」

 ユウの返答にアネッサは首を傾げる。

「無いのか?だとしたらなんでそんな無意味な踊りを踊ったんだ」

 あくまでいつも通りのテンションで問いかけてくるアネッサに、ユウは赤面しながらだばだばと涙を流す。

(めちゃくちゃメンタルにダメージ受けてますね、ユウさん)

(他意が全く無いからな。改めて自分が何をしていたか思い知らされているのだろう)

 そんなユウの様子にルティシアとエクスが淡々と思うところを述べる。

「も、もう勘弁して……」

 そんなやりとりをしていると、巨大な岩の塊が轟音を立てて飛来し、ユウとアネッサのすぐ近くに叩きつけられる。

「おわぁ!?」

「むっ……!」

 二人が驚いていると、ロックが青筋立ててユウ達に怒鳴る。

「お前ら!人が珍しくシリアスに戦ってて、しかも追い詰められてんのに何遊んでんだっ!」

「あ、ああ。悪い……」

 珍しくロックから真っ当に怒られた事実に衝撃を受けつつ、ユウはロックと風の精霊の戦いの趨勢を確認する。どうやら、ロックが精霊に対抗して風の魔法を放つが、悉く精霊の放つ風の魔法にかき消されている。ただ、ロックの放つ魔法が全く通じてはいないようで、風の精霊が放つ魔法は威力自体は減衰している。

「全く……精霊が俺の魔法を打ち破るほどの出力を出すなんてどう言うカラクリだ」

 ロックはぼやきながらも多重に魔法を起動し、手数で足りない威力を補う。

「こりゃ確かにふざけている暇は無さそうだ……」

 ユウはそういうと改めてエクストラスターのトリガーを押し、さらにクラスカプセルを挿入する。

「迷いを振り切る誓いの刃!」

 そういうと、ユウはエクストラスターを天に掲げる。その横で、自身の剣を大地に刺し、アネッサが叫ぶ。

「来いっ!ヴァルクス!」

 直後、エクストラスターから融合後の形態を示す音声が鳴り響く。

『エクスブレイザー!バトルマスター!』

 そして、エクストラスターが光り輝きトラックが、そしてその後ろからヴァルクスが現れる。

「さあ、ガンガン行こうか!」

 そう叫ぶと同時、ユウは変形したトラックに、そしてアネッサはヴァルクスに吸い込まれていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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