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やるなと言われたことをやらないのであれば何をしても良い

「さてさて、思いの外収穫はあったな……」

 ユウの部屋を出て自室のベッドの上に腰掛けたロックは一人呟く。

(俺に言うことは『出来ない』と、あの女神は言った。つまり、神々の間でルールがある……と、いうこと。そして、そのルールに則ると現地の住民には教えることができないような危機にこの世界が瀕している……ということか)

 そこまで考えたロックは、ベッドの上に上体を投げ出す。

(さらに、女神とエクスは『自分達の邪魔をするな』と言った。つまり『首を突っ込むな』とは言っていない)

 それからロックは目を閉じる。

(自分で言うのも何だが、俺みたいな奴に本当に事態について知られたくないのであれば『首を突っ込むな』と釘を刺すはずだ)

 それからロックは再びを目を開く。

(つまりあいつらは協力すること、そしてその過程で偶発的に事態を知ってしまうようなことを咎めるつもりは無い……と言うことか)

 実際、アネッサは何らかの事情を知っているようだがユウと行動を共にしている。つまり、彼女は事情を知っているが、そのことを他言しないから問題がないか、もしくは彼女だけは事情を知っても問題がない理由があるかのどちらかだ。そこまで考えてロックはニヤリと笑う。おそらくは前者だ。

 ――つまり、あの二人は『偶然知ってしまったなら仕方ないし、他言しなければ問題ない。知りたいならば、こちらに協力的、かつ積極的に行動しろ』という意図なのだろう。

「まあ向こうがそのつもりなら、俺も思う存分首を突っ込ませてもらうとするか」

 そう言うと、ロックは指を鳴らす。

 直後、何も無かったはずの空間に突如リーシェルトの姿が現れる。

「バレた」

 リーシェルトはそう呟くと肩を落とす。

「まだまだ甘いな。姿は完璧に隠せている。その上で、エーテルの挙動を感知されないように偽装をしているのも悪くない。だが、そのために微弱なマナが流出してるな。まあもっともこれを検知できるのはごく一握りだろうが」

 そんなロックの言葉にリーシェルトは頬を膨らませる。

「悔しい」

 そんな彼女を見てロックがケタケタと笑う。

「ぼやくなぼやくな。こちとら年季が違うんだ。追いつきたけりゃせいぜい精進することだ」

 ロックの言葉にリーシェルトが頷く。それを確認してロックは上体を起こす。

「さて、小娘。あのガキどもの準備が出来次第ナルヨーの森に行くぞ」

 そんなロックにリーシェルトは首を傾げる。

「なんだ、意外か?」

「意外。もうしばらく駄々をこねるかと思った」

 リーシェルトの言葉にロックは腕を組む。

「まあ、チコのためだけに仕方なく行くんだったら、俺のストレスを発散させるために思う存分駄々を捏ねようと思ったんだがな」

「そんなに帰りたくないの?」

 表情の動きが比較的少ないリーシェルトだが、今はその顔面に明らかな呆れの相が見て取れる。

「帰りたくねぇ〜。マジで面倒なのがいやがるからな……」

 ロックが珍しく盛大にため息を漏らす。そんなロックを見て、リーシェルトは肩をすくめた。


 ――翌日、ユウはアネッサに呼ばれて泊っている宿の酒場にいた。

「ふあぁぁぁ」

 ユウは盛大に欠伸をしながら周囲を見回す。酒場にいるのは、アイザインやエミリア等の見知った顔だ。

「アネッサさん、これどういう集まりです?なんか一部のメンツがいないようですが」

 ユウに問われてアネッサは首を振る。

「さあ?私もリーシェルトにユウやエミリアに声をかけてからくるように言われただけで要件は聞いていない。いざ来てみたら、アイザイン達も来ているとは思わなかったが」

 名前を出されたアイザインが会話に割って入る。

「俺達もチコにここに来るように言われた」

「で、呼び出した当の本人はまだ来ていないと……」

 ユウはそう言って再び周囲を見回す。やはり、食堂内にはリーシェルトやチコは居ない。

(……それにあの全裸もいない。どういうことだ?)

 一度暴れまわると話をとことんややこしくする暴走全裸がいないことに、ユウは嫌な予感を覚える。


「やあやあ皆の衆!よく集まってくれたな!」


 ユウが不安に襲われていると、ロックの声が酒場に響く。その場にいた者達が声のした方に視線を向けると、酒場の入り口から入ってくるロックの姿がその目に映る。さらにその後ろにはリーシェルトやチコがいる。

「ロック様、リーシェルト。これは一体どういった集まりで?」

 アネッサがロックに尋ねる。

「ああ、これからのナルヨー行きについてだ」

 ロックの回答にその場にいた一同が意外そうな顔をする。チコとの対決のためだとは言え、昨日のロックはエルフの国に戻ることをかなり嫌がっているように見えたからだ。

「……一体どういう風の吹き回しだ?」

 アイザインが訝しむと、ロックがうさんくさいさわやかな笑顔を浮かべる。

「ひたむきに頑張る若人のために一肌脱ごうと思ってな」

「嘘くさ過ぎるだろ」

 あまりの発言と笑顔の嘘くささにユウが思わず正直な感想を漏らす。しかし、それにもこりず引き続きロックはうさんくさい小芝居をする。

「魔道具の発展のタメェ、共に頑張ろうじゃアーリマセンカー!」

「うさんくさい上に何人だよ……」

 ユウは遠い目をしながらため息を漏らした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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