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鏡に向かって自分と自分でフュージョンって子供の頃一回はやるよね

「ふぅっ!今日もいい天気だな!荷物運びが捗るぜっ!」

 ――翌朝、いやにさわやかな雰囲気をばらまきながらユウは大量のゴミをチコの工房から運び出していた。そんな様子を不審なものを見るような目で眺めながらチコはティキに尋ねる。

「なあ、あいつ変なもんでも食うたんか?熱心に部屋片づけてくれんのはええんやが……どうにも気持ち悪いで?」

 チコに尋ねられるも、まったく原因が分からないティキは首を傾げる。

「うーん、わからないや。なんか様子は変なんだけどね。なんでだろ?」

「……」

 多少は事情を把握してはいるが、自身も原因の一端を担っている自覚があるため、アネッサはどう答えたものか分からずに黙々と部屋を片付ける。

「あの、ユウさん?……昨晩のことは大丈夫ですか?」

 そんなユウにエミリアは恐る恐る声をかける。

「昨日?」

 ユウは目からハイライトを消しながら笑顔で首を傾げる。

「……は、はい。昨晩、酒場で全裸の人達と踊り狂ってじゃんけんを……」

「昨晩は何もなかった」

「え?でも、あの、昨晩……」

「な に も な か っ た」

「は、はひ……」

 ユウの圧に気押されたエミリアは引き下がり、掃除に戻る。

「なんかあのニイチャンも怖いけど、ビビって引き下がってるのに掃除の手際が一向に落ちないあんたの姉ちゃんも怖いな……」

「あはは」

 チコの言葉にティキは呑気に笑う。

(あの子が一番の大物かもしれませんねえ)

 そんな人間達の様子を見てルティシアはしみじみとつぶやいた。


 ――そんなこんなで掃除に勤しむこと数日後……。

 チコの工房の中は見違えるほどに片付いていた。少なくとも、床の大半に足の踏み場が出来ている。

「うーん、なんという劇的ビフォーアフター」

 ユウはそう言いながら、工房の瓦礫の山を片付け続ける。

「あの腐海のような工房がここまで片付くなんて……」

「ああ、あのゴミの山が工房から飛び出して行ったら、街丸ごと飲み込むんじゃないかって気が気じゃなかったからな……」

 ユウの周囲で一緒にゴミの片付けに勤しんでいた魔族がぼやく。何でも街の後片付けが粗方済んだため、工房の手伝いに駆り出されたそうだ。

(うーん、匠の技ですねえ)

 ルティシアは言外にエミリアを褒める。

(匠どころか、今じゃ腐海を鎮めし聖女扱いですよ)

(展開の寒暖差が激しいですね)

(別に整いたいわけじゃないんですがねえ)

 ユウはボヤきながら瓦礫の山から得体の知れない巨大な釜のような魔道具を一つ持ち上げる。

「何なんだがなあ、これはって……お!?」

 大量に積み重ねられたゴミの山から、何かを見つけたユウが声を上げる。

「どうしたんや、にいちゃん!」

 ユウの反応が気に掛かったチコが声をかけてくる。

「なんかゴーレムの頭……っぽいのが出てきたぞ!」

 ユウが声を上げると周囲からも歓声が上がる。そんな周囲の様子を見たエミリアはハタキを掲げ、声高らかに叫ぶ。

「――皆さん、我らの勝利は目前です!今こそ、この悪しき闇を祓い、光ある未来を取り戻す時です!さあ、最後の力を振り絞りましょう!」

 そんなエミリアの演説に周囲の魔族たちが呼応する。

「我らに勝利を!」

「我らに勝利を!」

 周囲の士気が盛り上がっていくのを感じたエミリアは目を閉じて静かに息を吸う。そして、勢いよくハタキを振り下ろす。

「全軍突撃!敵を一兵残らず殲滅するのです!」

 エミリアの号令に呼応し、周囲の者たちはゴミの山に突撃して行った。


「おー、お前らー。俺様がゴーレムと戦うために頑張れー」


 ロックが寝そべりながらボリボリと菓子を食いつつ、魔族達に投げやりな応援を送る。それをみたユウは人智を超えた速度でロックに近づくと、得体の知れない魔道釜にロックを押し込めて蓋をするのだった。

「あ!?おいこら小僧!何をする!私を出せっ!!」

 突如として釜に押し込められたロックが抗議の声を上げるが、ユウはどこふく風といった顔で近くにあった縄で釜をぐるぐる巻きにする。

(この程度の縛りならしばらくしたら出てきますよ?どうせなら炊飯ジャーが良かったんじゃないですかね)

(どこの魔封波ですか。つーかそれ出来ても封印の札とかも持ってないんで……)

 そうルティシアに返しながらユウはそそくさと掃除に戻る。

(すっかりこの世界に順応したな)

 そんなユウにエクスはしみじみと感心する。

(なんかエクスさんも最近、この世界はトンチキなものがデフォだと思い始めてます、もしかして?)

 少し焦った様子でルティシアはエクスに問う。

(?)

 しかし、ルティシアが何を言わんとしているのか理解できていないエクスは、何も答えなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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引き続き、この作品をよろしくお願いします。

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