原作には無い原作再現って良いよね
実写グランブル見て書きました
それからしばらく後、エミリアとアネッサ、リーシェルトの三人はアイザインが手配した宿に入った。
「ふう、思ったよりも遅くなってしまいましたね」
「いかんせん、あれだけの魔窟だ。今後の作業の見通しを立てるだけでもどうしてもな……」
エミリアとアネッサは二人でため息を漏らす。
「とりあえず疲れた。ゆっくり休みたい」
リーシェルトもいつもと変わらない淡々としたテンションでしゃべっているように見えるが、心なしか声が付かれているように二人には感じられた。やはり長時間の移動と、その後の騒動、さらにそこから立て続けの掃除はそれなりに身体に堪えたもの思われた。
「そうだな……。とりあえず今日はもうすぐにでも寝て……」
そこまで言いかけたところで、ふとアネッサがふと足を止める。
「アネッサさん?」
アネッサの様子を不審に思い、エミリアが声をかける。
「……何か、酒場の方が騒がしくないか?」
「そう言われてみれば……。しかし何でしょう?」
言われてみると確かに、ジョッキがあしらわれた木製の看板が立てかけられたフロアの方から人の歓声のような者が聞こえてくる。
「ちょっとだけ見てみよう」
好奇心が刺激されたのか、リーシェルトがそのまま酒場の方へと歩みを進める。それを受けてアネッサは小さく鼻を鳴らし、エミリアの方を見る。エミリアはそれを受けて苦笑する。それから二人はリーシェルトの後を追いかける。
――そして、三人が酒場に入った時、信じられない光景を目にすることになった。
酒場の中は地獄のような有様だった。大量の魔族達が全裸で酔いつぶれて倒れている。
「これは……」
その様子を見てアネッサは顔をしかめる。
直後――
「飲もうぜっ!」
ロックの声が響き渡った。それに応じて、他の魔族達が続けて叫ぶ。
「飲めっ!」
「飲めっ!」
「飲めっ!」
「飲めっ!」
「飲めっ!」
「飲めっ!」
「飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲め飲めっ!」
そう叫びながら魔族とロック達は踊り狂う。よく見ると、その中に死んだ魚のような目をしながらユウも一緒に踊っている。
「……」
突然の理解の出来ない状況にアネッサ達は唖然とする。しかし、そんな彼女たちに構うことなく、魔族達のコールは最高潮に達する。そして――
「じゃんけんぽんっ!」
ユウとパンツだけを履いた魔族の一人がじゃんけんをする。
出された手は……ユウはグー、そして魔族はチョキだった。
「おらぁ!貴様の負けじゃ!脱いで!そして飲めぇっ!」
そういいながらロックは台所からとってきた酒がなみなみと注がれたジョッキを魔族に手渡す。
「ちくしょーっ!」
じゃんけんで負けた魔族は悔しがりながらパンツを脱ぎつつ酒を飲む。それをユウは虚無の表情で見つめている。
「ぶはーっ!」
ジョッキを飲み干した魔族は荒々しく息を吐く。
「……くそっ……俺達魔族は……こんなもんじゃないからな……」
悔しそうにそういうと、全裸になった魔族は、そのまま床に倒れている奴らの仲間入りをしていった。
「こ、これは……」
狂った騒動の一部始終を見せつけられてアネッサ達は困惑する。
困惑するアネッサ達に気づいていないようでロックはさらに周囲を煽る。
「さあ、次はどいつだっ!こいつをひん剥いて酔い潰す奴はおらんのかっ!?おらぁ、次の挑戦者はどいつだ!」
そう言ってロックは周囲を見回す。そして、一人の魔族と目線が合う。
「お前かっ!?」
そう言ってロックは指をさすが、さされた魔族は首を振る。
「お前かっ!?」
さらに別の魔族を流石、その魔族も首を左右に振る。
「お前かーっ!!」
そう言ってあらたに指を向ける。その先に居たのは……。
「ア、アネッサさん……」
エミリアに名を呼ばれてアネッサは頷く。
「ふむ、私が指されているのか。そして、私はユウとじゃんけんをしないといけないのか?そして負けると服を脱がされるということか?」
それを聞いてロックがテンション高くアネッサに絡む。
「そういうことだ小娘ェ!やるか!?脱ぐか!?脱がすか!?飲むか!?」
「ふむ……負けると衆人環視の中、脱がないといけなくなるのか……」
そう言いながらアネッサは考え込む。一方、他の魔族達はアネッサの言葉に興奮し、どよめきだす。それからアネッサは首を傾げる。
「いや、そういうのはなんか違うんだよな……」
それを聞いた直後、ユウはロックとアネッサの背後に音もなく回り込むと、両者の頭に手刀を叩き込む。叩き込まれた二人は、かつてのモヒカンよろしく勢いよく床を突き破り地面に埋まる。
「がはああああああっ!これ結構悪くないっ!」
そんな悲鳴をあげながらアネッサは盛大に吐血する。
「あ、おいこら小僧!人を地面に埋めるな!出せっ!」
ロックはユウに文句を言う。そんなロックをリーシェルトは棒でつんつんとつついている。
しかし、ユウはロックの言葉をスルーし、ふらふらと部屋を出ていく。魔族達はそんなユウを恐ろしいものを見るような目で見送った。
「おい、アネッサ。酒場にいると聞いたんだがいるか?明日の事で話があるんだが……なっ!?」
ユウと入れ替わるようにアイザインが入ってくる。しかし、直後に酒場の床に埋まっているアネッサをみてアイザインは驚きの声を上げた。
「これは……どういう状況だ?」
アイザインの疑問に皆黙り込む。この訳の分からない惨状になった経緯を伝える言葉は、その場にいる誰もが持ち合わせてはいなかった。
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