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言っちゃいけないことは大体言ってから気づく

「ああ、先代文明の古代遺跡に潜って次元魔術の探求したり、次元魔術で神様とやらの領分を探索しに行ったらあっという間にそれくらい時間が経っててなあ」

 ユウに問われてロックはあっけらかんと答える。

「うおお……エルフみたいなご長寿種族は時間感覚違い過ぎていけねえ……」

 ロックの回答にユウは絶句する。

「しかしまあ、たかだか500年くらいであれほどのゴーレムを製造してくるなんて、俺以外の矮小なパンピーにしては大したもんだ」

「うわー、尊大かつ素直にほめてる感じがタチ悪ーい……」

 ユウは相変わらずなロックの態度に呆れる。しかし、ロックに褒められても喜ぶどころかチコはブチ切れる。

「ああ!?あんなんただの中途半端な試作品や!今回の騒ぎには間に合わへんかったが、今エラいごっついゴーレム作っとるからな!完成したらお前なんかギッタンギタンにしてやるからな、見とれよ!?」

「ほほう!?」

 チコの言葉にロックは目を輝かせる。

「何だ小娘!お前そんな面白いものを作ってるのか?見せてみろ」

「おう、上等や!ついて来いや!」

 そう言うとチコはどこかへと向かって歩き出す。

「おう、上等だ!つまらないもん見せやがったらお前の顔面に俺のケツ当てるからな!」

 そんなチコを煽りながらロックはチコに続く。

「何をいうとるんやお前」

 ロックの煽りが理解できず、チコは真顔で返す。

「え?そのままいくの、あんた。で、俺も一緒に行くことになるの、この流れ?」

 一方、ロックの上で技を極め続けていたユウはユウで、そのまま歩くロックに揺られる形でチコについていってしまっており、思わず真顔になる。

 ロック達に置いていかれてしまったアネッサと魔族達は無言で顔を見合わせる。それからアネッサはリーシェルトに問う。

「お前の師匠、なんか新手の変な乗り物みたいになっているが良いのか?」

 リーシェルトは特に表情を変えることなく頷く。

「大丈夫、師匠は元から色々とおかしいから。乗り物になったくらいなら誤差」

「なるほど」

 アネッサはリーシェルトの回答に納得する。

「いや、それで納得するのもどうなんだ?」

 アイザインはアネッサの対応に困惑する。

「まあそれはそれとして……」

「……」

「……そうだな」

 ――三人は互いに顔を見合わせた後、一度頷く。

「とりあえず……追いかけるか」

 そう言うとリーシェルトはティキを抱え、アネッサはエミリアを背負い、そしてユウ達を追って歩き出す。そして、それに続くようにアイザインや魔族達が歩き出した。


「ここや」

 チコの案内の元、しばらくアンチルイーワの街を歩いた後に大きな倉庫のような建物の前に辿り着く。

「なんだここは?」

 ロックはチコに尋ねる。

「ウチの工房や!ここで色んな魔道具をウチは開発しとるんや!」

「魔道具?」

 ロックに相変わらず関節技をかけた体勢のまま、ユウは疑問を浮かべる。なんとなく名前からはどういった類の存在かは見当はつくのだが、この世界でも自分の認識は合っているのかが気にかかる。

「なんだお前、知らんのか?」

 そんなユウの内心を知ってか知らずか、彼の反応にロックが軽く驚く。

「え!?嘘やろ!?そんな奴おるんか!?ニイチャンどんなお上りさんや?」

 そんな反応と連鎖爆発したかのように、チコがさらに驚きの声を上げる。

「ねー、信じられないわよねー!ほんと遅れてるー!ど田舎モーン」

「ねー!」

 チコの反応に乗っかりロックがユウを煽り、さらにそれにチコが乗る。

「なんで人を煽る時だけ急に息ぴったりになってるんだあんたら……」

 無性に腹が立ったユウは今度はキャメルクラッチでロックを締め上げる。

「いだだだだだだっ!落ち着け小僧!落ち着け!ギブギブギブギブ!」

 そんなロックに構わずリーシェルトが説明を始める。

「魔道具っていうのは魔道回路を組み合わせて作った道具」

(魔道回路?)

 ユウはリーシェルトの言う専門用語の意味がわからず、脳内で疑問の声を上げる。

(さっき、この世界では術式を使ってエーテルに命令を出すと言いましたね?声に出した呪文などは元来、再利用することができないんです。だけど術式を魔法陣などの紋様に落とし込み、固形物にすることで再利用可能になるんです)

(そうして固形化した術式が魔道回路で、それを利用して作った道具が魔道具……ってことですか)

 ルティシアの解説でユウは納得する。

(そういうことです)

 ユウが人知れず理解も納得をしていると、その横でアネッサが工房の大きさに嘆息する。

「私がこの街を出た後にこんなものが出来ていたとはな……」

「お前が魔王軍に入ったの5年くらい前か……。その直後に出来たんだ。人間との戦争が激化しそうだったからな。戦力増強のために、使えそうな魔道具を作れそうな技師達を街に招き入れたんだ。チコはそのうちの一人だ」

「なるほど」

 アイザインの説明にアネッサは納得する。

「まあ、ウチはコイツ倒すために作った道具の中で適当なもんをアイザインのおっちゃんに卸してただけやがな」

 チコはロックを親指で指しながらつまらなさそうに呟きつつ、工房の格子タイプの横引きシャッターを開け始める。

「それでも普通の魔族達の強化には十二分の代物だったがな」

 アイザインの言葉に、後ろに控えていた魔族たちも一様に頷く。どうやら彼女の作る魔道具の性能、そしてそれを作る彼女の技量は折り紙付きということらしい。

「チコの技量は魔道具を作る技師達の中でも頭ひとつ抜けていた。今もチコがこの街にいるのは魔法関係のトラブルが起きた時に相談に乗ってもらうためだ」

「……なるほど」

 アネッサはアイザインの説明に納得する。そのやりとりを横で聞いていたユウは思ったことを口にする。

「はーっ。そんなに魔法に詳しいなら、やっぱゴーレムとかみたいな魔道具使わなくても普通に魔法使ってもめちゃくちゃ強いってことですか?」

 その言葉を聞いた瞬間、チコのシャッターを開けていた手がはたと止まり、下唇を噛み黙りこくる。そして、アイザインは目を伏せ、周辺の魔族達も気まずそうな顔をしながらユウを見る。その様子を見ていたアネッサも『やはりな……』と呟きながらため息を漏らす。

 そんな気まずい空気の中、ユウは呟く。

「あれ……もしかして俺……何かやっちゃいました?」

(ユウさん……本当にやらかしてます。正しい意味で使っちゃってます……)

(……マジか……?)

 ルティシアに指摘されてユウは内心で思わず漏らす。

(マジで……)

(マジだ)

 そんなユウの発言に乗るようにルティシアがボケる。そして、淡々と真面目に返した結果、エクスも帰せずしてルティシアのボケに重ねてしまう。

(そんなLife is Showtimeな指輪の魔法使いじゃないんだから……)

 ユウは自分のやらかしによる気まずさと、相変わらずなルティシアのボケに内心でため息を漏らした。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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