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外泊するときとかは家族にちゃんと連絡を入れなさい

「えーっと……この子がさっきのあの巨大ゴーレムを操作していた?」

 チコの姿を見たユウは思わずアイザインに問いかける。そんなユウにアイザインは無言で頷く。ユウが驚くのも無理はない。目の前にいるチコはオークだというが、背丈は小さくぱっと見子供のように見える。だが、異種族であるため自身の感覚が正しいかどうかも分からない。

(つーかこの世界のオーク、あんま豚よりじゃねえな。〇ま先生の作品に居そう)

 そもそも、チコはユウの知っている大体のファンタジーに出てくるオークらしからぬ見た目をしており、ぱっと見は普通の人間と肌の色が違う美少女にしか見えない。

(まあ、ユウさんのイメージするオーク、ああいうデザインのものはごく一部らしいですからね)

(そうなんですか)

 もはやこの女神、ユウよりもユウの世界のサブカル事情に詳しい。そんな話はさておき、目の前のオークの少女が見た目通りの年齢だとするならばゴーレムを作ったというには随分若い。実際問題、彼女は人間でいうところの何歳ぐらいなのであろうか……ユウはそんな感想をいただく。

「驚いたな……まだ子供じゃないか」

 さながらユウの疑問に答えるかのように、アネッサがチコの年齢について口にする。

(なるほど、アネッサさんは魔族領で暮らしてたからある程度オークの年齢なんかも見分けがつくのか)

「こないな立派なレディ捕まえて誰が子供や!」

 ユウがそんなことを考えていると、アネッサの言葉に反応したチコが激昂する。

(あー、そういうタイプ)

 そんなテンプレみたいなチコの反応にユウはチコの人となりを察する。

「む、済まない。気分を害したようだったら謝罪する」

 アネッサはチコに素直に謝罪する。

「分かればええんや」

 アネッサの謝罪を素直に受け入れたチコが胸を張る。


「なーにがレディだ。ちんちくりんの小娘風情が」


 そんな二人のやり取りにロックが余計な発言を投げ込む。その言葉を聞いてしまったチコは、怒りの導火線に再び火がともされようとしていた……が、その瞬間にはユウが素早く体勢を変え、今度はロックに卍固めをかける。

「あだだだだだだっ!小僧っ!手加減しろッ!手加減!」

 ユウの苛烈な関節技にロックは思わず悲鳴をあげる。しかし、そんなロックの発言を無視しながらユウは技をかけ続ける。その様子にチコは呆気にとられる。

「あ、どうぞ。この変態は相手してると話進まないんでお話続けて続けて~」

 ユウはチコに朗らかな笑顔で話しかけると、チコとアネッサに会話の続きをするよう促す。

「お、おう……」

「すまんな、ユウ」

 二人がユウに応じた後、チコは軽く咳ばらいをしてから語り始める。

「約1000年前、うちのご先祖様に魔法の大天才が現れたんや」

(いきなり随分昔が出てきたな……)

 遠すぎる過去の話が出てきてユウは、現在関節技をかけている相手が長寿の異種族であることを再認識する。

(ちなみにこの世界のオークは、魔法適性が低い者が多いんですよ)

 ルティシアがチコの説明を補足する。

「でだ、若気の至りっちゅーやつやったんやろなあ。当時最強と言われていた魔法使いに挑むんだっつってご先祖様がそこの全裸に魔法勝負を挑んだんや」

 そこからチコの表情が曇る。

「そしたらこいつ、派手な魔法を街の中でバカスカとぎょーさんぶちかましおったらしくな……。おかげで街が半壊する大惨事になってもうたんや」

「あんた……何やっとんじゃ……」

 ユウは思わずロックを何とも言えない顔で見る。

「いや~。久しぶりにそこそこできる奴が相手だったんでな。楽しくなっちゃって、こーついつい。ごめんネ☆」

 そういってロックはペロリと舌を出す。

「ぜってー1ミクロンも悪いと思ってねーだろ、あんた……。つーか何かに対して悪いって思う気持ちすらなさそうだもんな、あんた……」

「失敬だなお前は!俺はいつだって謝る気持ちはあるぞ!美しすぎてごめんなさいって!」

「ほんと何言ってるんだあんたは……」

 ユウはがっくりと項垂れる。そんな二人のやり取りの横でアネッサは納得する。

「なるほど。そんなことがあったのか。そして、現在に『全裸のエルフに気をつけろ』という警句がある……ということは、その頃からラドクリフ様は全裸だったということですか」

「まあな」

 ロックは頷く。


「で、ここからが本題なんやが……」

 さらにチコは話を続ける。

「そんときにそこの全裸が……」

「ただの全裸と呼ぶな。全裸の美の化身とよ……いだだだだだだっ!」

 再び余計な茶々を入れるロックに対し、ユウは彼の関節を極める手に力を込める。チコは再び咳ばらいをした後話を続ける。

「で、その全裸がご先祖様に別れ際に『勝てるまで相手してやるから懲りずに挑んで来い。なんならお前の子々孫々、生きてる限り相手してやるから全力で挑んで来い』なんてこというたらしくてな。で、うちの先祖たちはこいつを倒すために魔法の研鑽を積んできたっちゅーわけや」

 チコの説明を聞き、ユウとアネッサは納得する。

「なるほど……」

「それでか……」

 口々にそんな感想を述べているとチコはさらに話を続ける。

「いうてこいつ、ここ500年くらいは行方不明だったらしくてな……。そこから最近までウチの家系でこいつに挑んだやつはほとんどおらんのやが……」

「500年も!?どこで何してたんや、あんた……」

 ユウはチコの説明に少々面食らった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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