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本気で馬鹿をやるやつはだれにも止められない

「おいチコ!お前がゴーレムなんて持ち出すからこの全裸エルフまで変なデカいマッチョ持ち出しちまったじゃねえか!これじゃ俺達じゃ手が出せねえ!こっからどうしろってんだ」

「知らんがな、そんなこと」

 魔族達がゴーレムを持ち出したことをチコに抗議するが、当人はどこ吹く風といった態度で受け流す。

「なんだ、そんなことならそこに俺と一緒にここに来た人間がいる。そいつに相手にしてもらえばいいじゃないか」

 こともあろうにロックはユウを指さす。

「なあっ!?」

 あまりに予想外な指名にユウは思わず奇声を上げる。ロックの指名と思わず上げてしまった声を目印に、魔族達の視線が一斉にユウに向く。

「だからこの街に人間がいたらどんな目に合うか分からないと言っただろう……」

 頭はそう言ってため息を漏らす。ユウとしてはここに至る経緯全ての原因がロックにあるため不本意極まりないが、そのことについて抗議しても意味は無いと判断し、喉元まで出かかった言葉を飲み込む。そんなユウに周囲の魔族達がにじり寄る。

「なんだ……なんであんなトンチキ全裸エルフと人間が一緒に……?」

「まさかこいつ……あの全裸の仲間なのか?」

「いや、だが待て……こいつは服を着ているぞ……」

 魔族達は口々にユウについて述べる。その中のいくつかは聞き捨てならないものがあったような気もしないでもないが、下手なことを言うと場を刺激しかねないためユウは押し黙る。

「そいつ『俺様チョー強いから魔族くらい幼児退行してその場でハイハイしながらでも余裕でぼこせるっすわー!』とか言ってたぞ!」

「誰がそんな訳の分からんこと言うか!!」

 魔族達の態度にしびれを切らしたのかロックはユウの発言を捏造し、魔族達を煽る……が、あまりにもその内容のひどさにユウは思わず抗議の声を上げる。

「だーっはっはっはっは!どうだかなー!まあ、本当にそんなこと言ったかどうかはもうどうでもいいけどな!」

 ロックはそんなユウの発言に高笑いをする。

「それはどういう意味……」

 ユウはロックの発言の真意を探ろうと問いを投げ返そうとするが、ふと周囲からの視線の圧を感じてユウの言葉が止まる。

「人間の小僧風情が随分舐めた口きいてくれるじゃねぇか……」

「許せねぇ……」

 そして、改めて周りを見回すと周囲の魔族達がユウをすさまじい殺気を放ち、口から呪詛を垂れ流しながら睨みつけている。

「嘘だろっ!?あんなどう見てもでたらめな内容でマジでキレてんの!?」

 魔族達から敵意を向けられた予想外の展開に、ユウは素っ頓狂な声を上げる。

「ちょ、どうしましょう、リーシェルト……さん……?」

 それから現状を打開する方法について知恵を借りようとユウはリーシェルトに声をかけ、先ほどまでリーシェルトが立っていた位置へ視線を送る。しかし、その場所にリーシェルトの姿はない。

(彼女なら、ロックさんがこちらについて言及するちょい前から隠形の呪文を使って姿を消してましたよ)

(!?やばい空気察してさっさと逃げやがったってコト!?)

 リーシェルトの抜け目なさにユウは驚きながら絶望する。

 大量の魔族達はギラついた目でユウを睨んでくる。

「は……ははは……」

 そんな目線を浴びながら、この状況をどうしたら良いものかと途方に暮れながらユウは苦笑する。そんなユウに魔族達はにじり寄る。

 一方で巨大ゴーレムもマチ男君に歩み寄り、そしてメンチを切るような挙動を見せる。そんな相手の様子を見てロックはにやりと笑う。

「やるか?」

「応ともさ!」

 ロックの問いに威勢の良い返事が響く。

 ――直後、ゴーレムとマチ男君が互いに振りかぶり、そしてお互いに盛大に拳を繰り出す。

 そして轟音が街を震わせる。二体の巨人はクロスカウンターの形でお互いの顔面を殴り合っていた。

「おい人間……」

「魔族を……」

「なめんなやあ!!」

 そして、それをゴングと言わんばかりに多数の魔族が一斉にユウに飛び掛かる。

「ほわああぁぁぁぁぁ!?」

 驚いたユウは咄嗟に魔族達に背を向け、すさまじい速度で逃げ出す。

「あ、待ちやがれっ!」

「逃げたぞ!追え!」

 魔族達は逃げたユウを追いかけ始めた。

 マチ男君の肩から街を眺めていたロックは、ユウが真っ先に逃げ出したのを見て鼻を鳴らす。

「まったく。初手から逃げの一手とはな。興ざめもいいとこだ」

 そんなロックに気が付いたチコが声を上げる。

「うち相手によそ見とはいい度胸やな!」

 そのチコの叫びに連動しながらゴーレムが拳を繰り出す。しかし、その一撃はマチ男君の右の大胸筋に受け止められる。

「すまなかったな。遊ぶときは相手と全力でやらなきゃならんわな。……しかし、その程度の力じゃまだまだだな。マチ男君のアンディの防御を崩すことも出来んぞ」

「あんで……なんやて?」

 ロックの言ったことが理解できず、チコは思わず聞き返す。

「ああ、マチ男君は左右の大胸筋にそれぞれジョニーとロックと名前つけててな……」

「いや、あんたさっきアンディって言ってたやん!ジョニーとロックって誰や!つーか大胸筋に名前つけんなや!」

「まあ別につけてないんだけどな。今俺が適当言っただけで」

「ムキ―ッ!!」

 どこまでもふざけた態度のロックにチコはブチ切れる。

「はーっはっはっはっは!どうしたどうした!気に食わないなら全力でボコりに来いや!」

 そんなチコをさらにロックが煽る。馬鹿げた戦いはさらに激化しようとしていた。

 

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