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ちんちん大好きな男の心はいくつなっても持っておきたい

「な……なんていうか?みみみみみみ、身の危険を感じてからの火事場の場火事力?みたいな?」

 そう言ってユウは、盛大に脂汗を書きつつ、リーシェルトから目線をずらしながらしどろもどになりつつ答える。

「……」

 そんな挙動不審なユウをリーシェルトは無言でじっと見つめる。その視線の圧にさらされたユウは、さらに脂汗がどっと噴き出す。それからしばらくユウの様子を観察したリーシェルトは小さくため息を漏らす。

「もういいわ。これ以上聞いても”無駄”なんでしょう?」

「あ……あはははは……」

 何かを察したようなリーシェルトの物言いにユウは苦笑する。


「ほぎゃああああああっ!?」

 ――直後、新たにロックの魔術にやられたと思しき魔族が吹き飛ばされ、ユウとリーシェルトの眼前に落ちてくる。


「うわあ……」

 ユウはげんなりとした表情で呻った後、ロックの方へと目線を向ける。視線の先では、ロックを倒そうとする魔族は相も変わらず次々と襲い掛かっている。しかし、彼らは皆指一本満足に触れることも出来ずに次々とロックの魔法の餌食となっていた。

 ――ある者は風の魔法で全ての衣服を切り裂かれた。

 ――ある者は土の魔法で作られたカンチョーで尻穴を刺されて悶絶していた。

 ――ある者は水の魔法で作られた大量の触手にからめとられ、くすぐり地獄を受けていた。

「絵面はひどいけど力の差は圧倒的だな……」

 ユウは正直な感想を漏らす。そんなユウの言葉にリーシェルトは頷く。

「そうね。師匠は敵の位置と行動をすべて把握して、それに対処するために同時並行的に複数の魔術を使用している。しかもそれらは魔法の発動から実際の現象が起きるまでにタイムラグがほとんどないのに、あれだけの威力が出ている」

(?どういうことです?)

 ユウはいまいちリーシェルトの説明が理解しきれず、ルティシアに説明を求める。

(説明しよう!)

 待ってましたと言わんばかりにルティシアがノリノリで応じる。

(もしかして、そのセリフも一度は言いたくてうずうずしてたりしてました?)

(はい)

(そうですか……)

 ユウはなんとも言えない面持ちでルティシアの返事を聞いていたが、当の本人はそんなことを気にするそぶりもなく話を続ける。

(この世界の魔術では自然現象を操作するために、術式とエーテルと魔力というものを用います)

(どれもよく聞くワードですね)

(でしょうね。まあ、一応この世界での定義をざっくり説明しましょう。エーテルというのは、世界の自然現象を司る摂理にアクセスするための触媒のことを指します)

(はあ)

 いきなりお堅い感じで説明されたため、いまいちよく分からんと言った感じでユウは気の抜けた返事をする。

(簡単にいうと、魔法使用者が要求すると、その通りに世界を操作してくれる中身不明の機械みたいなものだと思ってください)

(うーん。例えば『火を起こせ』って命令したら、本当にその通りに火を起こしてくれる機械がある、みたいな感じですか?)

(そういうことです!)

 ルティシアから肯定され、初歩の理解ができたことにユウはホッとする。

(この機械は目で見たりは触れたりは出来ません。そして、この機械に命令するためには専用の言葉……つまり術式と、その機械を動かすためのエネルギー……いわゆる魔力が必要となります)

(なるほど。つまり、この世界の魔法で火を起こしたい場合は、エーテルに適切な術式と、必要な魔力を流し込めば良いと)

(ピンポンピンポン大正解!素晴らしいです、ユウさん!)

 ルティシアに褒められたが、喜びよりも何よりもまず正直な感想が口から飛び出る。

(リアクション古っ!?)


 そんなやり取りをしていると、魔族達はロックへの肉弾による攻撃は分が悪いと判断したらしい。魔法が得意と思われる魔族達が隊列を組み、術式を展開し始める。空中に魔法陣のようなものが現れたかと思うと、それが発光し始める。それを見たルティシアが丁度良いと言わんばかりに彼らを題材に魔法の説明を続ける。

(あれが術式の一つです。あの人たちは魔法陣で術式を展開する方式のようですね。他にも呪文を詠唱することで術式を展開するといったやり方もあります。彼らは魔法陣を用いてエーテルに働きかけることによって、意図した現象を引き起こすんです。そして、そのためには術式……この場合ですと魔法陣になりますが、それに魔力を送り込む必要があります。今、あの空中の魔法陣が光っているのはあの方によって注がれた魔力に魔法陣が反応しているからになります)

(なるほど……)

 ユウが納得していると、魔法陣を展開している魔族の眼前の地面から黒い塊が現れる。

(あれは……?)

(あれは鉄の塊ですね。魔法により大地に干渉し、地面から金属を抽出したものになります)

(へー、そんなこともできるんですね)

 ユウが感心していると別の魔族が新たに魔法陣を展開する。直後、大気に電撃のようなものが走る。直後、すさまじい速度で鉄の塊がロック目掛けてすっ飛んでいく。

(早っ!なんですかあれ!?)

(雷魔法の応用ですね。強力な電気の力を用いて磁力場を形成し、その磁力によって鉄の塊を射出したんです)

(要はレールガンってことですか)

(そういうことです。ああいった高度な魔法を発動させるには、複雑な術式や大量の魔力が必要となります。そのため、発動に時間がかかるし、使用できる回数はそんなに多くない……はずなんですよねえ)

 ユウがルティシアの説明に納得していると、眼前で信じられないことが起こる。すさまじい速度でロックに迫っていた鉄球は、まるで進行方向を見えない力で無理やり変えさせられたかのように勢いよく地面に落ちる。

(え?)

「は?」

「へ?」

 魔法による攻撃を放った魔族とユウは目の前の事態に、間の抜けた驚きの声をあげて目を見開く。その様子を見てロックは得意げ笑う。

(一瞬で強力な磁場を発生させて砲撃を叩き落した!?)

「この程度の攻撃で俺様を倒そうとは舐められたもんだな。そういった魔法はこうやってやるんだよ」

 そういってロックは指を鳴らす。直後、目の前に現出した光景にユウは思わず素っ頓狂な声を上げる。

「なんか小さいちんちんがいっぱい出たぁ!?」

 ――そう。ユウの言葉通り金色に光り輝くデフォルメされた表現のちんちんが空中に大量に現れる。

(土魔法の応用で金を抽出したんですね。しかもそれを自分の意図した形状に造形した上に、雷魔法で遠隔操作までしています。先ほどの魔族の方々はこれらを複数人で分担して協力して実行しています。しかし彼はどうでしょう)

 ルティシアに言われてユウは改めてロックを見る。彼は一人で複数の魔術を組み合わせた、ルティシア曰く高度な魔法をやってのけている。

(なるほど、これを一人でこなしていると考えると確かにすごいのか……)

(さらに注目すべきは彼の魔術ではほとんど魔法陣や詠唱、さらにそこに魔力を投入しているプロセスが一切見えないことです。本来踏むべき過程を簡略化したにも関わらず、これほどの精度……。これはとんでもない技量ですよ……)

(その結果が金のちんちん大量空中乱舞なのはどうなんですか……?)

 ルティシアのまじめな説明と目の前に繰り広げられる光景のアホさのギャップにユウはどう反応したものかと困惑する。

 しかし、ユウの内心など知ったことかと言わんばかりに大量の黄金ちんちんは自由に空中を飛び回ったかと思うと、直後に複雑な軌道を高速で描きながら、魔法を使った魔族達に襲い掛かる。

「ギャーッ!?」

 大量の小さな黄金ちんちんの突撃を食らった魔族達は悲鳴をあげてその場に倒れる。それからロックは再び指を鳴らす。すると空中をとんでいるちんちんの先端から水が飛び出し、他の魔族達を濡らしていく。

「なんだこれっ!?」

 大量に空を飛び回るちんちんから小便と見間違えるような水をかけられて、魔族達は混乱する。しかし、それも束の間、直後魔族達が悲鳴をあげる。

「があああああっ!?」

 よく見ると、黄金のちんちんから放出される水はわずかに電気を纏っていた。

(さらに水魔法により大気中の水分をかき集めて、あのちんちんから発射してます!それを全てあの人は一人でこなしています……!なんて技量でしょう……!)

「いや絵面汚ねぇな!?」

 ユウはルティシアの解説の緊迫感を通してロックの技量の高さを理解しつつも、同時に思ったことを思わずユウは口走ってしまう。

 それから思わず正直な感想を叫んだためか、若干の冷静さを取り戻したユウは一人ボソッと呟いた。

「しかしこういうの、ティキとか大好きだろうな……」

 そう、年頃の男の子は大体こういうネタは大好き……な、はずである。


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