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人にお願いするときはそれ相応の態度というものがある

「だーれが師匠だ。まあ、いいか。久しぶりだな、小娘」

 そう言って全裸エルフは片手をあげる。

「師匠って……」

 アネッサがもの言いたげな目線をリーシェルトに向けると、彼女は頷いて事情を説明しだす。

「あの人はロック・ラドクリフ……何千年も前から大魔導士として名を馳せている生きた伝説。私に魔法の稽古をつけてくれた人」

「あの人が……」

 エミリアはリーシェルトの説明に息を呑む。

「あんなのが……」

 そして、ユウは正直な感想を口から駄々漏らす。そんなユウの後頭部にルークがツッコミのチョップを入れた。そんな二人を他所にリーシェルトはロックに質問をする。

「別にその小娘が弟子にしろってうるさいから、適当にあしらってたら勝手に魔術を色々覚えてたってだけだ。俺は何もしてねーよ」

 ロックの説明にアネッサは苦笑する。照れ隠しなのだろうか?とも思えるが、今一つこの人物の真意を測りかねていた。そんな周囲の人間を他所にリーシェルトはロックに問う。

「師匠……ここ500年くらい姿を見なかったけど、どこへ行ってたの?それに急にここに現れたのはどうして?」

 リーシェルトの質問にロックは鼻を鳴らす。

「何、ちょっと次元魔法の探求をしていてな。気が付いたらこの世界を超えて、別の世界にちょっくら乗り込んでた」

「別の世界?」

 リーシェルトが首を傾げる。

「ああ。なんかへんな何もない空間の中に庭がきれいに整えられた屋敷みたいなのが浮かんでいるところでな。なんでも住んでるやつに話聞いてみたんだが、そこは神の世界らしい。他にも似たような感じで色んな屋敷みたいなのがそこでは無みたいな空間の中で浮かんでいて、変なとこだったよ全く」

 ロックの説明をいまいち理解できず、リーシェルトは首を傾げる。

(な……まさか……)

 しかし、一方でルティシアがロックの発言に声を震わせている。

(……どうしました?)

 様子がおかしいルティシアにユウが問いかける傍らでロックはさらに自身が体験したことを語る。

「まあ、俺がたまたまたどり着いた屋敷には妊娠して腹がでかくなってた女と、その護衛みたいな女剣士が一人いたんだが、産休で神の業務を先輩に引き継いでもらっているとか訳の分からんことを言っていた。まあ、最終的にはその女剣士に不審者扱いされて追っ払われたんだが」

「そりゃあ、その格好でうろうろしてりゃあな……」

 ロックの話に思わずユウが小さく漏らす。しかし、そんなユウの独り言が聞こえているのかいないのか、とりあえずロックは話を続ける。

「まあ、追っ払われてこの世界にもどってきてみれば、気が付いたら500年は経ってたってわけだ」

 そういってロックはがっはっはと笑う。


(……がった……。……やがった……)

 

 そんなロックとは対照的にルティシアは先ほどから声を震わせて何やらぶつぶつと呟いている。

(どうしたんです?さっきから様子が可笑しいですけど……)

 ユウはルティシアに問いかける。それがトリガーになったのか、先ほどとは打って変わって大きい音量でルティシアが叫ぶ。


(現生人類なのに独力で神の領域にたどり着きやがった!!??)

(……!?どういうことです?)

 ルティシアの言っていることが重大なことのように聞こえるが、詳細が理解できなかったユウは思わず説明を求める。そうやってユウに説明を求められたことで、ルティシアは若干落ち着きを取りもどす。

(……簡単に言えば、私達のような存在に管理されている世界で生まれた人類が、私達の存在や私達の世界を認識して、アクセスすることは基本的には不可能なんです。あのエルフはその常識を打ち破っているんです……とんでもない存在ですよ、彼は……。しかも話聞く限り、彼がたどり着いた先に住んでたの……私の前任者じゃないですか……)

 ルティシアの説明にユウは思わずエルフの方を見る。

(頭がおかしいからすごい奴になったのか、すごい奴になった結果頭がおかしくなったのかどちらだろう……)

 それから失礼なことを自覚しながらも考えるが、服も着てないし、訳の分からん奴だからまあ良いだろうなどとユウは考えた。そんなことを考えていると、ロックが唐突にユウとルティシアの間の会話に割って入るようなことを言い出す。

「なあに、俺様の手にかかればちょっと次元を超えるなんて朝飯前ってわけだ。もっとも、古代人類の魔術体系の遺産は利用させてもらったがね。まああれが神の領域だっていうなら存外容易かったがな」

(……!?この男、私達の会話も聞こえて……!)

 ロックの予想を上回る能力の高さにルティシアも流石に言葉を失う。一方で、アネッサやリーシェルト達はロックが何を言わんとしているのか理解できず首を傾げる。

「……で」

 しかし、そんな弟子たちの様子をさて置いときながらロックがユウへと目線を向ける。それを受けてユウは身体をびくりと震わせる。何やら猛烈に嫌な予感がする。

「で、この世界に戻ってきてみたら、何やら面白そーなデカい奴が派手に妙なアンデッドと戦ってたところに出くわしたもんだからな。何があったのか調べようと思ってあちこち回ってたら、手掛かりに行きついたってわけだ」

 そう言ってロックがユウの方へ目線を向ける。ユウは何やら寒気がしたため、目を逸らす。

「手がかり……?」

 一方で、エミリアやティキ達はロックが何を言っているのかいまいち理解できず首を傾げる。

「さて、まあそう言ったわけでそこの坊主……」

 そんな周囲の反応に構わず、ことのあらましを話終わったロックはユウに近づく。そして、満面の笑顔で命令をする。

「洗いざらい吐け♡知ってること全部♡」

 そんなロックの言葉にユウはスンッ……と急に真顔になる。

「カカワリアイニナリタクナイノデホカヲアタッテクダサイ」

(あぁ、とうとうユウさんが壊れた機械みたいに……)

 ルティシアがユウを憐れむ。それとは対照的にロックはユウにメンチを切る。

「あぁん!?この世界の至宝ともいうべき俺様がお願いしてるのになんだその態度!」

 ロックに言われた瞬間ユウは両耳を塞ぎながら喚きたてる。

「うるへー!周りに急に変態が増えすぎて許容量オーバーなんだよっ!これ以上俺の周りで増えないでくれ、変態!!あとお願いの意味辞書で百回引いてこいゴルァ!!」

「バカヤロー!こちとら世界に一つだけのナンバーワンの変態なんだよ!俺の変態性はまさに宝!崇めろ!奉れ!!」

「わけわかんねぇ!言葉は通じてるのに意思疎通がまるでできる気がしねえぞ!!」

 ロックとの理解不能な会話にユウは思わず頭を抱える。

「理解できなくていい……感じろ、受け入れろ……俺という美を……」

 ロックはナルシスト全開なポーズをとってから意味不明なことを言うと、ユウに尻を向ける。そしてユウの顔面に尻を叩きつけるかのように勢いよく飛び掛かる。

「ぎゃーっ!!」

 ユウは悲鳴をあげながらも飛んできた尻を咄嗟に回避した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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