作品として軸がズレている
「はああああああああああっ!」
ルークが指し示した方向から裂帛の気合を吐き出す声が聞こえる。直後、すさまじい衝撃を纏った巨大な斬撃が発生し、大量のスケルトン達を吹き飛ばしていく。
「あれは……」
聞き覚えのある声と見覚えのある技にアネッサは思わずルークの指さす方を凝視する。するとそこには、バルト―と英霊や戦士達の姿があった。どうやら、スケルトン相手ならば霊体でも攻撃は通用するらしい。
「バルト―将軍!」
アネッサが驚きの声を上げた直後、バルトーは周囲の戦士達に檄を飛ばす。
「聞けっ!ヅォーイの戦士達よ!帰還祭の最後に我々はその力を振るう機会を与えられたっ!天に還るその前に今こそ示すのだっ!我々の技を!力を!戦士としての誇りをっ!!」
そんなバルト―の演説に応じて、周囲の戦士達は歓声を上げてスケルトン達にとびかかっていく。
「父さん……!」
そんな父親をティキは誇らしげに見つめる。そして、バルトーはティキに告げる。
「息子よ……。これが、私がお前に見せてやれる最後の戦いだ。しかと心に焼き付けておいてくれ」
「……うん」
バルト―とティキは互いに言葉を交わす。そしてバルト―はティキに向け、スケルトンの群れへと飛び込んでいった。
それを見たアネッサは苦笑する。
「なるほど、確かにこれなら早く大掃除が済みそうだ」
「だろ」
アネッサにルークが同意したその直後、今度はけたたましく、唸るようなエンジン音があたりに鳴り響く。
「な、なんだっ!?」
「この音は一体……!?」
アネッサやルークが驚きの声を上げると、そのエンジン音はどんどん大きくなってくる。直後、爆音とともに全身青いスーツのようなものを纏った人物がバイクに乗って現れた。
「なんだ……!?」
「一体彼は……!?」
見慣れない乗り物に乗って現れた正体不明の人物に、アネッサとルークは混乱し、言葉を失っていた。正体不明の人物は腰に装着していたナイフを取り出すと、乗り物にのったまま駆け回り、スケルトンを切り裂いていく。
「どうやら……彼はスケルトンの味方ではないようだな」
ルークの言葉にアネッサは頷いた。
そんなアネッサとルークの会話を聞きながら、正体不明の人物ことスーツの中身であるユウはアネッサとエクスに文句を言う。
(ちょっと!こんな世界観ガン無視でReady to go count ZEROって感じのパワードスーツなんてまとってバイクに乗って登場とかしたもんだからめちゃくちゃ警戒されてるじゃないですか!正体隠せてるけどめちゃくちゃ目立っちゃってるんですけど!!)
(まあまあ、かっこよくて良いじゃないですか)
ルティシアの呑気な言葉にユウは盛大にため息を漏らす。
(そりゃ確かに格好良いんですけど……)
そう言いながらユウはナイフを一度しまうと、今度は脚部に取り付けられたハンドガンを取り出す。そして、バイクで走りながら次々とスケルトン達を撃ち抜いていく。そして、戦いながらもユウは脳裏に沸いた疑問をルティシア達にぶつける。
(しかし……こんなもんが積んであったって、あのエクスさんが選んだトラックっていったいどういう出自のトラックだったんですか……?)
(君が元居た世界では自衛隊という組織の特殊な部隊が保持していたトラックだそうだ)
(……)
エクスの淡々とした回答に思わずユウは考え込む。
(……自衛隊がこんなけったいな装備を、所属がぱっと見分からないようなトラックに積んでたって……あれ?もしかして俺の元居た世界って知らないうちに結構ヤベー危機迫ってました……?)
そんなユウの疑問にルティシアがわざとらしい下手な口部を吹く。そしてそれからわざとらしい感じで応える。
(い、いやあ……なにもないんじゃないですかねー!?仮に何かあったとしても知らぬが仏?みたいなー。なんか世界の危機に立ち向かうための重要な装備とか勝手に持ってきちゃったとかそんなことありませんよ、あははははは!)
(……)
ルティシアの回答に、ユウは神の言うこっちゃねーだろと思いもしたが、この件については、もはや転生をしている以上は話をしても意味が無いというところではルティシアと見解が一致した。そのためユウは、これ以上はトラックやパワードスーツについて詮索することはやめ、アクセルをふかしてスケルトン達を轢き殺し、そしてハンドガンで撃ち抜いていく。そしてその後、急ブレーキをかけ、バイクを停車させる。
(ちょっとユウさん!そこのバイクの止め方はもっとAKI〇Aっぽくしてくれないと……)
ユウはルティシアの不満を無視しつつ、バイクの左右に取り付けられた二本のチェーンソーを取り外す。それぞれチェーンソーを起動し、両手に装備したユウは、とても重量物を二本手にしているとは思えない軽やかな身のこなしで、スケルトン達を次々と切り裂いていく。
(アンデッド殺しと言えばやっぱりチェーンソーですよね!ゾンビじゃないけど!!)
それでも懲りないルティシアの発言にユウはとうとうため息を漏らした。
「すげぇぞ……!あいつは何者なんだ!」
「マジでつえぇ……!」
決して強くないスケルトン相手とは言え、すさまじい速度で次から次へと敵をなぎ倒していく姿に、村の戦士達や英霊達がユウの強さに驚愕する声を次々に上げていく。
(ユウさん!ユウさん!これぞまさに異世界転生の醍醐味……!チート無双ですよ!)
ルティシアは村人や英霊達の反応を受けて楽しそうなリアクションをする。
(……いや、分かってるとは思うけど……なーんか違いますよね、コレ?)
ユウはそんなルティシアのリアクションにため息を漏らす。
(えー?でもほら、無双してから俺最強!ぎもぢぃぃぃぃ!って感じでエッセンスの部分変わってないからよくないですか?)
(ノイズの主張が強いうえにデカすぎて、エッセンスの部分が感じ取れねぇよ!)
ユウは思わずツッコミを入れる。
アネッサは太刀筋や身のこなしを見て全身鎧のようなものを纏った人物がユウであることに気が付く。
(なるほど、正体を隠すためか……しかしあの乗り物や鎧、武器は一体どこから……?)
脳内に疑問が浮かぶか、一旦それをしまい込んでアネッサはスケルトンの掃討に注力することにした。
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