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ユウがアネッサのいらん覚醒にどうしたものかと途方に暮れていると、突如近くの草むらに何かが落ちるような音がした。
「――!?」
突然の事態にモンスターか何かが現れたのかとユウとアネッサは警戒する。しかし、その後は草むらの方からは特に動きはない。
「……ん?」
だが、ユウは上空から自身の頭上に何かが落ちてくるような気配を感じる。咄嗟に上を見て、落ちてくる何かをキャッチする。
「な、なんだ……?」
ユウは自身がキャッチした物体をまじまじと見る。
「――!?」
それは、人の頭蓋骨だった。
突然の事態にユウはフリーズする。しかし、そんなユウにアネッサは冷静に声をかける。
「ユウ、もしかしてそれ、スケルトンの頭部じゃないか?」
「……え?」
ユウがアネッサの言葉に我に返った瞬間、ユウの手に掴まれていた頭蓋骨が乾いた音を立てて動き出す。
「うおおおおおおおおっ!?」
驚いたユウは咄嗟に思わずスケルトンの頭を近くの木に投げつけてしまう。木に当たったスケルトンの頭が粉々に砕け散る。
「……ユウ。やはり、君はとんでもないパワーをしていたんだな……」
その様子を見てアネッサは感嘆する。
「まあうん……はい……」
今更隠すつもりもないユウはアネッサに頷く。
「――!?」
直後、頭上から大量に骨が降り注いでくる。どうやら全てばらばらになったスケルトンらしい。
「な、なんだぁ!?」
突然の事態にユウは驚きの声を上げる。
「……おそらくだが、あのアンデッドの化け物が使役していたスケルトン達だろう。どうやら我々の攻撃の影響で空中に吹き飛ばされていたのだろうな。そして、あの巨大スケルトン達はみな、魔術によって作られた人間大のスケルトンの集合体だったわけだ……。 それはあのヴェンフェルトという男の術によるもの……」
「なるほど……」
納得しつつ、ユウはヴェンフェルトのことを思い出していた。これだけのスケルトンを融合させ、巨大スケルトンの大群を生み出していた死霊術師……その能力が並外れた者であることは、この世界に転生してきたばかりで魔術事情に疎いユウでさえ容易に理解が出来た。そしてドゥーマ細胞をその身に宿し、超次元エージェントの存在についても何かしらの情報を持っていると思われる。そんな彼は果たして何者なのであろうか?しかし、そんなことを考える余裕は、目の前で繰り広げられる光景に奪われつつあった。
「なんにせよ、このスケルトン達を始末しなければ……それに墓守の村の方もこの様子だと危ないぞ!」
アネッサに言われて、ユウは脳内でルティシア達に尋ねる。
(これ、スケルトンを掃除しに村まで行くのは良いんですけど……正体は隠した方が良いし、極力目立たない方が良いんですよね?)
そんなユウの問いにルティシアもエクスも同意する。
(ええ。ここの村人達にはあなたの正体はまだバレていません)
(アネッサは仕方ないとして、極力他の者達にはばれない様に配慮して欲しい)
その答えを受けてユウは少し考え込む。
「うーん、覆面でも被るか……?」
そんなことを考えると、エクスがユウに提案をする。
(それだったらユウ、融合するときに素体となるトラックの中に良いものがある。それを使おう)
(……?分かりました)
ユウはエクスに同意すると、アネッサに声をかける。
「アネッサさん!一旦村の方に向かってください!俺は後から追いかけます!!」
「分かった!」
アネッサはユウの提案に応じると、そのまま墓守の村へと向かって駆け出した。ユウはそれを見届けると、トラックのコンテナの中へと駆け込む。
(……そう言えば何気にコンテナの中に入るの初めてだな……)
そんなことを考えた直後、コンテナ内に灯が付き内部の様子が明らかになる。
「……これは……!」
コンテナ内部にあるもの……それを見たユウは言葉を失った。
英雄の頂……その上部にある墓守の村は突如として空から大量に降り注いだ大量のスケルトンによって大混乱を起こしていた。
「はあああああああっ!」
裂帛の気合と共にルークが剣を振り下ろす。その一撃は盾の防御ごとスケルトンを切り裂く。
「すごい……ルークさん、本当にちゃんと強かったんだね!」
そんなルークの立ち回りにティキが素直な感想を述べ、そしてそれを聞いたルークはずっこける。
「あちゃー……俺の実力、全然信用無いでやんの。まあ、しゃーないか」
苦笑してからルークはティキに声を改めてかける。
「なんにせよティキ、一度神殿の地下に避難するんだ!」
「分かったよ!」
ティキは頷くと、神殿の方へ向かって走り出す。その途中で逃げ惑い泣いている幼女を見つけ、その子の手を取る。
「今は村の戦士の人達が戦ってくれている!みんなが安心して戦えるように、僕たちは安全な場所に早く逃げよう!」
そうやって他の子供を宥めるティキを見て、ルークは感心する。
「あらー、さすが将軍の息子……しっかりしてるわ」
そんなことをつぶやいていると、背後から大量のスケルトンが襲い掛かってくる。
「げっ」
幸いにもスケルトン一体一体は強くないが、それでも不意打ちで大量の相手に襲い掛かられるのは少々分が悪い。ルークは体勢を立て直そうと剣を構えようとした直後、幾重もの剣閃が瞬く間に走る。直後、大量のスケルトン達はばらばらに分割される。
「この技は……」
ルークは技を放った人物の方へ目線を向ける。
「まったく……何をやっている」
その先には少し呆れたように鼻を鳴らすアネッサの姿があった。
「アネッサ!」
ルークはアネッサに駆け寄る。その途中、新たなスケルトンの一団がアネッサに襲い掛かる。アネッサはその攻撃を全てかわし、反撃でスケルトンの一団を壊滅させる。しかし、どうやら敵の攻撃の一部が掠ってしまったらしく、アネッサは盛大に吐血する。
「がはぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「おいおい……大丈夫か?」
ルークは心配して声をかけるが、アネッサはなにやら首を傾げている。
「……どうした?」
なにやら様子が可笑しいアネッサが心配になり、ルークは声をかける。
「いや……なにか違うな……全然物足りんな……。やはり……あの大技でないとだめなのか?」
ぶつぶつと一人でつぶやくアネッサに、ルークは困惑する。しかし、そんな視線に気づき、我に返ったアネッサは軽く咳ばらいをした後にルークに尋ねる。
「状況は?」
一体、今のアネッサの態度は何だったのか、理由が分からないルークは困惑しつつも回答する。
「ま、まあ……数は多いが何とかなると思う。特にあそこに頼もしい一団がいるしな」
そう言ってルークが親指で村の一角を親指で指し示す。
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