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別に変態全員が己の性癖に命を懸けているわけではない

「お、おい……あの巨人……爆発しちまったぞ……」

 遠くで戦いを見届けていたルークは、その顛末に唖然とする。

「だ、大丈夫だよね……?」

 まさかの自爆展開にティキも不安そうな顔でエクスブレイザーが自爆した場所を見る。しかし、超威力の爆発の影響ですさまじい煙が発生しており、状況を把握しすることは出来ない。固唾を飲んで人々は煙を凝視する。

「お、おい……あれを見ろ!!」

 観衆の一人が声を上げる。煙の向こうから人型らしき影が浮かび上がっている。それを自分たちのために戦ってくれた巨人の者であると察した人々が喜色を浮かべる。直後、煙が晴れる。

「嘘だろ……」

「そんな……」

 しかし、その煙の向こうから現れたのは巨大アンデッド――アンデットドゥーマの方であった。それを見た人々は呆然とする。

「お、おい……あのアンデッド……」

 そして、アンデッドドゥーマが動き出そうとする。震える手で手にした杖を掲げようとする。それを察した人々の顔に焦りと恐怖が浮かび上がろうとしたその瞬間……。

 ――まるで砂で作った城のようにアンデッドドゥーマが崩れ落ちる。

 そしてその背後から、まるで肩で息をするような姿で立つエクスブレイザーの姿が現れる。その姿を見た人々は歓声を上げた。

「やったっ!あの巨人と神の戦車が勝ったんだ!」

 ティキが喜びの声を上げる。

「ああ、そうだな……」

 そんなティキの様子と巨人をバルト―は感慨深げに見つめる。

(……よくやったな、アネッサ……)

「あ、おい!アレ……」

 そんなことをバルトーが考えていると、ルークが声を上げる。その声につられてティキやバルトー達がエクスブレイザーの方へ目線を向ける。エクスブレイザーはよろめき、膝をつく。そしてそのまままるで砂漠に浮かんだ蜃気楼のように姿が消えていった。


 その直後、アンデッドドゥーマとの戦闘があった付近の森にトラックと、ヴァルクスが現れる。そして、トラックのドアが開くとユウが転がり落ちる。

「く、くそう……。あんな軽いノリで中身も聞かずに技を撃つんじゃなかった……」

 地面の上に寝転がり、荒い息と共にユウは呪詛を吐く。

(まあでも……あの技じゃないとさっきの状況は打破できなかったと思いますよ?)

「そうなんですよねぇ……とはいっても、二度と使いたくないですね、あの技……」

 そう言って大きくため息をつきながらユウは立ち上がる。全身を襲う虚脱感からよろけそうになるが、なんとか踏みとどまる。そして、近くに停止したヴァルクスの方を見る。

「しかし……アネッサさんは大丈夫なんですか?」

 現在の自分の状況から考えるに、アネッサの方もただでは済まないだろうと思ったユウはルティシアに尋ねる。

(ああ……ええと……大丈夫ではありますよ)

 ルティシアは言い淀む。その様子をユウは怪訝に思うが、問い詰めようとした直後にヴァルクスのハッチが開き、中からアネッサが現れる。

「アネッサさん!大丈夫ですか?」

 しかし、アネッサはそんなユウの声にこたえることなく、ふらふらと歩き出す。

「……アネッサさん?」

 なにやら様子がおかしいアネッサをユウは凝視する。アネッサは頬を赤く染め、瞳は潤ませ、荒い息を吐いている。そして、全身を小刻みに震わせながらよろめいている。その仕草がなにやら妙に艶っぽい。

「……どうしちゃったんです?」

 ユウは首を傾げる。

(……叩いたら直るんじゃないですかね……多分)

(……?そんな古いテレビじゃないんだから……)

 いつもとは様子が異なるルティシアの応答にもユウは戸惑いを覚える。しかし、とりあえずこのままでは話が進まないと思ったユウは、ルティシアの言うままにアネッサの頭部にチョップをかます。その一撃を受けた一瞬、アネッサの挙動が制止する。そして一拍置いてから……

「こんなもんじゃ足りなガハァぁあぁぁぁっ!?」

 盛大に吐血した。

「……またかよ」

 そんなアネッサの吐血を全身に受けながら、ユウはため息を漏らす。

「……はっ!?」

 しかし、ユウの一撃と吐血がスイッチになったのか、急にアネッサは正気に戻る。

「ユウ、大丈夫か!?全身血まみれだぞ!?」

「あんたの血だよっ!」

 アネッサの言葉にユウは思わずツッコミを入れる。

「そうなのか、すまない」

 アネッサの素直の謝罪にユウはやれやれとため息を漏らしつつ、質問を投げかける。

「んで……どうしちゃったんです?さっき様子が変でしたけど」

 ユウの問いかけにアネッサは赤面をしながら目線を逸らす。それからしどろもどろになりながらも説明を始める。

「いや……先ほどのあの……自爆技……あのすさまじいダメージを耐えてたんだが……あの……人間としての限界と常識を超えたようなダメージに翻弄されていた時に……こう……自分の中で何か……こう……目覚めたような感じがして……気が付いたら夢見心地というか……あの……その……」

 そう言いながらアネッサが身体をくねらせる。

 今までのアネッサからは想像もつかないようなその発言と仕草にユウは唖然とする。

「今度戦うときも……あの技……もう一度使いたい……なんてな……」

 そう言ってアネッサはうるんだ目でユウを見る。その目線を受けて、ユウは何故先ほどルティシアが言葉を濁したのか、その理由を全て理解した。

(この女、あの自爆のどさくさで変な扉開けやがったッ!!!!)

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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